枝廣淳子さんのメールから

                   Enviro-News from Junko Edahiro


                           No. 2677 (2019.02.24)

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幸せ経済社会研究所のサイトに、リチャード・ハインバーグさんにインタビュー
させていただいた記事がアップされました!
https://www.ishes.org/interview/itv17_01.html

地域社会のレジリエンスを高めておく必要があること、そのために大事なことは
何か。いろいろ教えていただいたことをしっかりと考えたいと思います。


~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~


リチャード・ハインバークさん
ポスト・カーボン研究所上級研究員

写真などはこちらをご覧ください。
https://www.ishes.org/interview/itv17_01.html

リチャード・ハインバークさんは、化石燃料に依存する生活からの移行を推進し
ていることで世界的によく知られています。今回のインタビューでは、なぜコミュ
ニティにレジリエンスが必要なのかについてお話を伺いました。

■衝撃はいつ起きてもおかしくない

枝廣:リチャードさんは長年コミュニティのレジリエンスに関する取り組みを続
けていらっしゃいます。なぜ、コミュニティはレジリエンスについて考えなくて
はならないのでしょうか。

リチャード:レジリエンスとは、基本的な構造や機能、独自性を維持するために、
衝撃に適応するためのシステムです。衝撃はいつ起こるかわかりません。どの地
域にも独自の問題があります。例えば、火山、地震などです。しかしそれ以外に、
私たちは、気候変動や不安定な経済、資源の減少といった地球規模の問題も抱え
ています。

今後こうした問題が激化して、適応が難しくなることは、ほぼ間違いないでしょ
う。レジリエンスについて考えることは、そうした問題への適応を容易にするた
めに、先取りして考えることなのです。

枝廣:いつ起きてもおかしくない衝撃の例として、気候変動や資源の減少をあげ
てくださいました。もっとも起こりそうなのは、どのような衝撃だとお考えです
か?

リチャード:経済システムと金融システムへの衝撃が起こるのではないかと思い
ます。2008年の世界金融危機は、非常に深刻なものでした。しかし、近い将来、
再び強烈な危機が起こりえます。前回の世界金融危機への対処方法では、根本的
な問題がそのまま残っているためです。

長い目で見れば、エネルギー供給について問題が生じることも明らかです。化石
燃料は世界の主要なエネルギー源ですが、有限なものです。石油を例に考えてみ
ましょう。世界にはまだ十分な量の原油があります。でも、人類は良質でコスト
がかからない原油から先に使っています。つまり、時間がたつにつれて、残って
いる原油は高価になり、取り出すのが難しく、環境的にも危険なものになるので
す。私達はこうした問題を、世界各地での石油流出と汚染という形ですでに目に
しています。

この原油供給についての問題は、米国でのフラッキング(注:水圧破砕法、タル
トオイルやシェールガスを採掘するときに使用される方法)やカナダのタルトサ
ンドといった非従来型原油の生産量増加によって、短期的には隠されています。
しかし、こうした原油は高価であるため、石油産業全体は、それほど利益を出せ
なくなります。ですから、持続可能な状況ではないのです。

石油の需要が減少する前に、供給量が減る可能性も大きいと思います。そうなれ
ば世界経済にとって大問題になるでしょう。私たちは石油を、乗用車だけではな
く、海運や航空、トラック輸送にも使っているからです。輸送は、グローバル経
済の活力源なのです。

■コミュニティのレジリエンスを高める

枝廣:この問題は日本では特に深刻です。日本ではほとんどのエネルギーを輸入
に依存しているからです。そして現在、様々な問題が起こりつつあります。だか
らこそ、レジリエンスが必要なのですが、どうすればコミュニティはレジリエン
スを高めることが出来るでしょうか。

リチャード:一つの方法はサプライチェーンを短くすることです。私たちが買う
ものはすべて、サプライチェーンの最後に位置しています。サプライチェーン
最初に来るのは農場や炭鉱などです。そして、そのあとに、製造や包装といった
たくさんの工程があります。

経済システムやエネルギーシステムが危機に瀕した場合、サプライチェーンが長
く脆弱であればあるほど、弱点が多くなります。サプライチェーンを短くするこ
と、それはつまり、製造と消費をもっと地元で行うことです。

枝廣:食料などの地産地消ですね。

リチャード:地産地消にはたくさんの可能性があります。地域経済の役に立とう
とするなかで、たくさんのプラスの副産物が生まれます。地元の文化も守られま
す。人は自分が食べるものを誰が育てたのかといったことを知りたいものです。

また、コミュニティのレジリエンスを構築することは、経済やエネルギーだけで
はなく、社会、つまり人々の結びつきにも関わります。人々がお互いに知り合い
で、配慮し合う社会は、本質的にレジリエンスの高い社会です。

それに対して、買ったり借りたりといった市場を通してしか人々がやりとりを行
わない社会は、壊れやすい。「お金があれば関係性はなくてもよい」となってし
まうからです。人々がもともとお互いに配慮しあい、やりとりを行っているので
あれば、物事が悪い方向に進んだときには、助け合うことができます。

枝廣:私は日本の地域コミュニティのレジリエンスを高める手助けをしています。
その一つの方法は、あなたがおっしゃったように、食料などのサプライチェーン
を短くすることです。

ただ、「安いから輸入製品を購入する」という人が多いことも事実です。長期的
にはレジリエンスが必要であることは理解していても、短期的には価格の安いも
のを購入する、という問題です。この問題を解決するための良いアイデアや実例
はないでしょうか?

リチャード:良い質問ですね。私も同じ問題を目撃してきました。旬ではないも
のを食べたり、遠くで育てられたものを食べたりするのが当たり前だったとした
ら、「なぜそうなのだろう?」と人々の嗜好や習慣に寄り添う必要があるのでは
ないでしょうか。

たとえば、みんなで、自分たちの食べ物がどこから来ているのか、どんなものを
食べたいのかを調べ、そして、地元で育てられている野菜やその旬について調べ
てみます。トマトが旬の季節なら、地元産のトマトは、海外産のトマトよりも安
いはずです。旬のものを食べることは、問題の手助けにもなるのです。

枝廣:なるほど。食は誰にとっても毎日の出来事ですものね。サプライチェーン
を短くすることが、コミュニティのレジリエンスを高める一つの方法ということ
ですが、そのために、なにかアドバイスはありますか?

リチャード:重複性、つまり「複数持っておくようにすること」も重要です。も
しコミュニティがエネルギーや経済をひとつの供給源に頼っているのであれば、
レジリエントな状態とは言えません。脆弱です。たくさんのエネルギー源がある
ならば、ずっとレジリエントな状況です。特に太陽光ならその地域にあるもので
すからね。食べ物や金銭的な経済についても同様です。

■電化社会の可能性

枝廣:そういう意味では、私たちは現在、電化社会へと移行しつつあります。こ
の状況をどのようにご覧になっていますか?

リチャード:そうですね。電力の供給源は地元にあることが多いので、特に日本
のように化石燃料がない国では、化石燃料よりは良いといえるのではないでしょ
うか? 日本は、地元産の電力をもっと供給するために、地熱と同様、太陽光や
風力を活用することができます。電力の供給源を、自分たちで所有することがで
きるのです。

枝廣:なるほど。重複性が重要なので、電化社会は、私たちが多様な電源を持っ
ている限り問題ないということですね。

リチャード:電化社会では、たくさんのバッテリーが必要です。ただし、エネル
ギーの原料は、もしかすると中央アジアやアフリカから供給されているかもしれ
ませんので、供給源については、常に心に留めておく必要があります。

心理的レジリエンス

枝廣:コミュニティのレジリエンスを高めるために2つのアドバイスをください
ました。一つは、サプライチェーンを短くすること、もう一つは、重複性を持つ
ことです。他にアドバイスはありますか?

リチャード:心理的レジリエンスです。人々は衝撃がいつ来てもおかしくない
と気がついたとき、恐れを感じるでしょう。恐れによって、私たちの心理的なレ
ジリエンスは損なわれます。ですから、コミュニティで一緒に計画を立てること
が重要です。そうすれば恐れは弱まり、津波地震などに耐えることができます。

PTSDが生じるかもしれませんし、将来さらなる衝撃が生じるかもしれないと考え
ることは、怖いことかも知れません。しかし、「何が難題なのか」、そして「ど
んな対策が可能か」について、お互いに語り合えば、恐れは軽減します。自信が
つき、難題に立ち向かう個人的・集団的な能力も高まります。

レジリエンスの評価・測定の持つ可能性

枝廣:素晴らしいアドバイスです。地域コミュニティのレジリエンスについて、
成功例をご存知ですか?

リチャード:そうですね。残念ながら、レジリエンスは、海岸沿いのコミュニティ
で用いられるように非常に狭義に捉えられることが多いです。こうしたコミュニ
ティは、海面上昇に対して脆弱であることを自覚していて、建物を海岸から遠い
場所や、高い場所に建築したいと望んでいます。それは良いことですし、重要で
す。しかし、レジリエンスの包括的な理解であるとは言えません。

ニューヨークシティなどでは、ハリケーンサンディによる洪水のあと、レジリ
エンスの評価を行いました。その結果、レジリエンスのうち海面上昇のような側
面だけを見ていた人々が、食料のシステムや電源といった側面を見るようになっ
たのです。

このレジリエンス評価は、教育的なプロセスになっていることがわかりました。
それはコミュニティにとって大切なはじめの一歩かもしれません。コミュニティ
レジリエンスの評価を行うことは、何が脆弱なのかを知るとともに、コミュニ
ティにある資産を活かす機会を知ることでもあります。

枝廣:利用できるコミュニティ評価のフォーマットなどはあるのでしょうか。

リチャード:私たちはresilience.orgというウェブサイトを運営しているのです
が、そこでは世界中で行われている心理的・社会的、そして実用的なレジリエン
スを構築するための取り組みについて日々情報をアップデートしています。その
中に、レジリエンス評価についての情報もあります。

オンライン講座「Think Resilience」のウェブサイト(英語)
https://education.resilience.org/

枝廣:情報だけではなく実例もあるのですね。ぜひ見てみます。本日は、たくさ
んの具体的なアイデアを紹介していただき、どうもありがとうございました。


<プロフィール>
リチャード・ハインバーク(Richard Heinberg)
米国のジャーナリスト・教育者。ポスト・カーボン研究所上級研究員。石油の枯
渇問題などエネルギー、経済、生態系について造詣が深い。The End of Growth:
Adapting to Our New Economic Reality(未邦訳、仮題『成長の終焉:新たな経
済実態への適応』など13冊の著作がある。また、オンライン連続講座「Think
resilience」の講師も務めている。

ポスト・カーボン研究所のウェブサイト(英語)
https://www.postcarbon.org/
オンライン講座「Think Resilience」のウェブサイト(英語)
https://education.resilience.org/


~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~


そして、しっかりした地元経済を作っておくこともコミュニティのレジリエンス
にとって不可欠です。そのための具体的な手法もプロセスもあります。

それらをできるだけ多くの地域やみなさんにお伝えしたいと思っています。

3月16日「地域経済循環フォーラム」にぜひどうぞ!
(当日その場にいらっしゃれない方のために、動画受講もあります)

お申し込みや詳細はこちらからご覧ください。
http://ptix.at/7oHQdJ






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http://www.ishes.org/

枝廣淳子さんのメールから

さて、毎年9月に世界各国で持続可能性に取り組んでいるメンバーが集まるバラ
トングループの合宿に参加しています。このグループの仲間でもある、ポストカー
ボン研究所のハインバーグさんのお書きになったものを紹介させていただきます。


~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~


サステナビリティに関して言えば、この世の中、気の散ったドライバーだらけ」

リチャード・ハインバーグ
2018年10月24日

原文URL
https://www.postcarbon.org/when-it-comes-to-sustainability-were-a-society-of-distracted-drivers/


車の運転は危険だ。いやそれどころか、私たちのほとんどが日常行う活動の中で
最も危険な活動といえるのではないか。運転には全神経を使う必要がある。そう
やってさえ、事態は時に恐ろしく誤った方向に行くこともある。ブレーキが効か
なくなるわ、天候のせいで道路がアイスバーンに変わるわ、対向車線のドライバー
は居眠りしているわ、そして悲劇が起こる。だが、居眠り運転しているのが自分
たちの方なら、悲惨な事故が起こる可能性が跳ね上がる。

だから法律で不注意運転を思いとどまらせている。携帯電話はダメ、新聞や本も
読んではならない。助手席の同乗者とのイチャイチャもダメ。捕まれば、多額の
罰金が待っている。

これは例え話だなと思ったのであれば、その通り! われわれ人類は皆、事実上
地球を「運転」しているのだ。

さらに数千年(あるいは数百万年)の間、地球がおおよそ今のままで続くのか、
あるいは、人間の命を支えられず、さらにおびただしい数の他の生き物の生存を
も許さないかもしれない状況へと急速に傾いていくのか。私たちはそのことに多
大な責任を負っている。

だが、私たちは目の前に伸びる道に注意を払っていない。それどころか、注意散
漫なのだ。

私たち個人が注意散漫になるのは、やむを得ずのことが多い。私たちは大抵、生
計を立てる必要があるし、家族や友人との時間を作りたいし、多種多様の娯楽は
楽しい。

私たちが集団として注意散漫になるのも、同じように重要な理由があるようだ。
経済は成長して、雇用が増え、投資利益率が高くなってほしいと思っている。自
国の指導者にはテロ行為を防いでもらいたい。そして、軍事衝突になれば、自分
たちの側に勝ってほしいと思っている。政治家の中にはヒーローと敵がいて、み
んな自分の「チーム」を応援しようと時間とお金を使っている。

肝心なことは、私たちが集団で道から外れて、地球を粉々にしてしまうのであれ
ば、こういったことが何の意味も持たなくなるということだ。

車の運転中に受信するメールは本当に面白いものかもしれないが、死んだりケガ
をしたりする危険を冒して読む価値はない。同様に、経済や娯楽、雇用やスポー
ツ、政治はすべて結構なことだし、注意を向ける対象として適している――ただ
し、まず社会が進むスピードと向かっている方向が安全で正気なものであると保
証する限りは、である。

実際には、前方の道に注意を払っている人も少数存在する。生態学者や気候科学
者、システムダイナミクスの分析者たちは、これまで数十年間、社会の進んでい
る方向をモニターしており、彼らが発する警告は次第に不吉なものになってきて
いる(直近のものを二つ挙げれば、「世界の科学者からの人類への警告(the
Scientists Warning」と「IPCC1.5℃特別報告書である)

私たちが方向転換しなければ、前途に待ち受けているのは何か? 海水面の上昇。
嵐や干ばつ、洪水の激化といった常軌を逸した天候。大量の種の絶滅。農業への
脅威。経済の崩壊。要するに、スピードを出しすぎたがための衝突だ。

だが、専門家の「変えるべし」との緊急要請のほとんどは無視されつづけている。

仮に私たちが本当に注意を払っているとしたら、どのような違った行動をとるの
だろう? 

私たちはサステナビリティいかしたエコのふりをするだけではなく、本物のサ
ステナビリティ)を一番の優先事項としているだろう。再生不可能な資源は保全
し再利用する。再生可能資源は再生速度の範囲内でしか使わない。自然システム
を汚染から保護する。生物多様性保全する。そして、真のサーキュラー・エコ
ノミーや再生型の経済を目指すだろう。

こういった指針を守る形で営むにはあまりにも経済が大きすぎるということになっ
たら、経済を縮小させるだろう(少し時間をとって、もたらす害を最小限にして、
最大の便益を作りだす方法を見極める。そして、これまで数世紀にわたる成長の
大もうけから最小の恩恵しか受けてこなかった人々が、小さくなった全体のパイ
の中で公平な分け前を確実に受け取れるようにする)。そして人口があまりにも
多すぎるのであれば、それも縮小するだろう(ここでも、弊害を最小に、プラス
面を最大にするための時間をとる)。

そう、これらはすべて、個人に影響を及ぼすであろう。私たちは、子どもを産む
かどうかを決めるときに、人口水準について考えるだろう。将来世代が生き残る
可能性を損ねるようなキャリア選択は、それが何であれ拒むだろう。地球から取
り出す資源に依存する経済には投資しないようにするだろう。日々の選択すべて
――交通、食事、衣服、住居――を環境への影響という観点から考えるだろう。

こうするのがとても大変なのはなぜか。

そう、この移行の最も難しいところは、最初に「そうしよう」と決めることだ。
そして、いったんそう決めれば、払わなければならないどのような犠牲があろう
とも、日々の暮らしに多くの改善も同時に生まれる可能性が高いだろう。

例えば、想像してみてほしい。もっと心を行き届かせる経済であれば、人々は、
単に職を追うのではなく、天職を追い求めることができるだろう。または、これ
ほど忙しくない生活であったなら、自分の大事な人たちと過ごす時間をもっと取
ることができるだろうと考えてみてほしい。使い捨ての消費財を消費するのでは
なく、健康と幸福を向上していけるだろう。

いま他のドライバーの気を散らしているものに同じように気を散らしてしまうの
ではなく、私たちはそれぞれ、計器パネルと前方の道に注意を払うように、自ら
を鍛え直さなければならない。古い習慣を捨て新しい習慣を身につけるには、努
力が必要だ。だが、習慣の中にはあまりにも愚かで、それを変えるかどうかが生
きるか死ぬかに関わるものもある。

私たちの注意を散らしているものはそれほど重要なのだろうか? 本当に大事な
ものに目を向けるより、文字通りあらゆるものを危険にさらす方がいいと思うほ
ど重要なものなのだろうか?


~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~


リチャードの最後の問いに、みなさんはどのようにお答えになりますか?





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アールブリュットのメールから

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1.アール・ブリュットネットワーク情報
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アール・ブリュットネットワークフォーラム2019
日時:2019年2月10日(日)
   9:30~13:30
場所:びわ大津プリンスホテル コンベンションホール淡海
滋賀県大津市におの浜4-7-7)
参加費無料!
詳しくはこちら→
http://www.pref.shiga.lg.jp/c/kemmin-s/artbrut_/networkforum2019.html
入場は先着順ですので、お早めにお越しいただく事を
お勧めします。


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2.展覧会情報
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
■“癒し”としての自己表現展
―心の杖として鏡として―

1992年依頼、東京・八王子で続けられてきた「“癒し”としての自己表現展」は、閉鎖的なイメージの強い精神科病院での取り組みを広く一般の皆様にも知っていただきたいという思いから、“街の中で作品展を”という企画のもとに始められた展覧会活動です。

日時:2019年1月11日(金)~4月30日(火)
11:00~17:30 ※木曜休館
料金:入館無料
会場:にしぴりかの美術館
宮城県黒川郡大和町吉岡字館下47)

☆展覧会特別企画☆
劇場先行上映!
映画「お百姓さんになりたい」
日時:2019年4月7日(日)13:15上映開始
上映協力金:1,000円
メールによる事前申込優先、30名定員
メール:info@nisipirica.com
FAX:022-343-7077
※特別企画の4/7当日は、美術館内に特設会場を作りますので、一部の展示作品は観づらくなります。ご容赦ください。

お問い合わせ先:にしぴりかの美術館
TEL:070-5011-0028(小野田)
FAX:022-343-7077
メール:info@nisipirica.com
法人URL:http://m-kissa.com
アトリエURL:https://www.facebook.com/nisipirica/




■気の実 生のまま
アール・ブリュット◎高岡4

高岡から発信してきた展覧会「アール・ブリュット◎高岡」も今年で4回目。
今回は、富山、愛知、石川、新潟、長野、滋賀から、素敵な作品たちが高岡に集合!
ホットでカオスでポップでシャープな作品たちが、きっと、みなさんの「気の実」を育ててくれるでしょう。

日時:2019年3月9日(土)~17日(日)
9:30~17:00※入館は16:30まで
料金:観覧無料
会場:高岡市美術館 地下1階市民ギャラリー
富山県高岡市中川1-1-30)

☆ギャラリートーク
2019年3月9日(土)、10日(日)14:00~

お問い合わせ先:NPO法人障害者アート支援工房ココペリ
富山県高岡市伏木古府元町2-5
メール:npococopelli@gmail.com

☆併催事業として、作品も出品している滋賀県のやまなみ工房のドキュメンタリー映画「地蔵とリビドー」上映会とトークショーが開かれます。
3月13日(水)18:15会場 18:45上映 (入場料1000円)
会場:高岡文化ホール小ホール
高岡市中川園町13-1 高岡市美術館より歩いて3分)
上映後には、やまなみ工房施設長の山下完和さんと、監督である笠谷圭見さんのトークショーもあります。(進行は、ばーと◎とやま代表 米田昌功)




■描くこと|平田猛 展

日時:2019年2月12日(火)~3月31日(日)
10:00-18:00(月曜定休)

会場:art space co-jin
〒602-0853 京都市上京区河原町通荒神口上ル宮垣町83 レ・フレール 1階

料金:無料

企画:きょうと障害者文化芸術推進機構 / art space co-jin

出展作家:平田猛

日々、病院のベッドの上でスケッチブックに絵を描き続ける平田猛。絵の中にはさまざまなモチーフが断続的に登場し、それらから平田が身体や身の周りの出来事に興味を寄せて絵を描いていることが窺えます。例えば、それは内蔵と思わしき円形が配された人体や、ヒモやブタ、トラックなどで、最近の作品ではテレビに映る映像や部屋の窓などがモチーフとなることもあります。また、彼の作品の中には多くの文字が書かれており、彼が何の絵を描いているのかを読み解く手がかりになる一方、判別できない文字も多く存在しています。そのような絵が描かれ続け、山積みになっていく状況に、「なぜ描くのか」、「何を描いているのか」と疑問を抱かずにはいられません。しかし、その問いに明確な答えなどあるのでしょうか。ただ確かなことは、今このときも、彼は絵を描き続けているという事実です。本展覧会では、平田の作品にさまざまな角度から迫り、読み解く試みとして、各分野の専門家やアーティスト、関係者など約10名にテキストの執筆を依頼し、平田の作品と共
に展示します。彼は何を、そしてなぜ描き続けるのか。本展が平田の作品について理解するきっかけのひとつとなれば幸いです。
本展企画者 寺岡海(art space co-jin)

詳細情報HPアドレス:http://co-jin.jp/exhibition/930/



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枝廣淳子さんのメールから

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                       Enviro-News from Junko Edahiro


                           No. 2671 (2019.01.14)

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昨年は4冊の本を出版することができました。それぞれ数年かけて進めていたも
のがたまたま近いタイミングで刊行されたのです。そのうちの1冊がこちらです。

『アニマルウェルフェアとは何か――倫理的消費と食の安全』(626円)
(枝廣 淳子/岩波ブックレット)
https://amzn.to/2mWrWqg


本ブックレットでは、私たちにお肉や卵、牛乳を提供してくれている鶏、豚、牛
たちがどのように飼われているのか、日本と世界の現状と動向をレポートしてい
ます。ブックレットでも強調していますが、来年の東京五輪パラリンピック
向けて、日本のアニマルウェルフェアの水準をもっと高めていく必要があります。

このブックレットから、豚の飼育についての箇所を少し紹介しましょう。


~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~


二〇一七年二月一日現在の畜産統計によると、日本で飼養されている豚は約九三
四万六〇〇〇頭で、そのうち、肉豚として販売することを目的として飼育してい
る肥育豚が約七七九万七〇〇〇頭、子豚を生産することを目的として飼育してい
るメス豚が約八三万九〇〇〇頭である。

これらの母豚たちの多くは、「方向転換も横を向くこともできない」環境で、一
生のほとんどの期間を過ごす。六〇~七〇cm×二~二・一mという、自分の体
とほぼ同じ大きさの鉄の檻(「妊娠ストール」とよばれる)に入れられている。

目の前に餌槽と飲水器が備えられ、後ろ半分の床はスノコ構造で、排泄をそこで
行わせるために、体の向きが変えられないように幅が狭められている。

妊娠ストールは、母豚の管理(受胎・流産の確認・給餌制限、糞尿処理など)が
容易であるという、人間にとっての利便性と効率性から使用されているが、母豚
にとっては、方向転換どころか首も左右に四五度程度しか向けられず、食事もト
イレも就寝も同じ場所で、ひたすら立っているか座っているしかない最悪の環境
である。

畜産技術協会が全国の豚飼養農家(一〇〇〇軒)を対象に行った「豚の飼養実態
アンケート調査報告書」(二〇一五年三月)によると、回答した農家の八八・六
%がストールを使用している。


~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~


そういう現実を知らなかった!という方も多いのではないでしょうか? 
では世界では?

「食用豚の飼養に関する世界の動向を見てみよう。豚の妊娠ストールに関しては、
EUやスイス、米国の一〇州、ニュージーランドやオーストラリア、カナダなど
で禁止されている」(同ブックレットより)。

日本でもそういう方向に向かってほしいと強く願っています。

そして、まだ少数ですが、日本でも妊娠ストールなど使わず、豚本来の生き方が
できるような環境で豚を育てているところもあります。このブックレットを一緒
に作ってくれた幸せ経済社会研究所の新津研究員が実際に見学・取材して書いて
くれた素敵な取り組みを紹介します。


~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~


耕作放棄地で豚を放牧する」取り組みを紹介しましょう。豚には鼻で土を掘り
起こす習性があります。雑食なので、土の中の昆虫はもちろん、草や根も食べま
す。つまり、耕作放棄地で豚を放牧すると、除草剤やトラクターを使わなくても、
草むしりをして、開墾までしてくれるのです!

現場を是非拝見したいと、9月の上旬、福島県喜多方市山都町で、有機農業に取
り組む長谷川浩さんのところへ、見学に伺いました。長谷川さんが豚の放牧を始
めたのは昨年から。昨年は、ご自宅の敷地での放牧だったそうですが、今年は2
アールの耕作放棄地に、時期をずらして計4頭の豚を放牧しています(私が訪れ
たときには3頭いました)。

豚たちは好奇心旺盛、鼻で地面を掘りながらも、丸いしっぽをくるくると振って、
こちらへ近づいてきます。そして、しばらくすると、元気に追いかけっこをはじ
め、草むらの中に姿を消していきました。普段は、寝たり、食べたりしている時
間が長く、遊ぶ光景を見ることはあまりないそうですが、この日は久しぶりのお
天気だったので、特別だったのかもしれません。

草むらに走り去る豚たちを眺めながら、結構な面積にまだ草がはえているなあと
思っていると、「いやあ、2アールだったら大丈夫だと思ったんだけど、ちょっ
と広すぎちゃって」と長谷川さん。この土地が畑に戻るのは、残念ながら、来年
までお預けです。耕作地に戻った後は、ヒマワリ、大麦・小麦、水稲、ソバ、大
豆などを輪作し、牧歌的な景観をつくっていく予定だそうです。

豚の餌としては、土中のミミズや草の他に、くず米、古糠、くず豆を与えている
そうです。敷地には電柵(電源はソーラー発電)がはられていて、敷地外には脱
走できない仕組みです。豚を飼うこと自体は、餌をあげればよいだけなので難し
くなく、子豚の入手そして、と畜場と販路の確保ができれば、誰でも飼育可能だ
ろうとのことでした。この点で、Iターンや、高齢の方にも向いています。また、
この地域は雪深いため、豚を放牧できるのは、春から年末までです。

アニマルウェルフェアという点では、鶏も放牧することもできますが、鶏は天敵
が多く、殺されてしまう事があるのに対して、豚には天敵が少ないので安心です。
また、農家さんにとっては、豚の場合、最終的に精肉を売ることが出来るので、
採算性を考えても鶏卵よりもよいのだそうです。

長谷川さんたちの取り組みがユニークなのは、販路として「豚主オーナー制度」
をとっていることです。長谷川さんの場合、一口1万円で豚主オーナーになると、
オーナーには2kgの精肉が届く仕組みです(この地域で有機農業を営み、「庭先
養豚」を行っている浅見彰宏さんが、オーナー制度を開拓したそうです)。

米国では数人で一頭の牛のオーナーになり、精肉後に、大量の冷凍肉が届く仕組
みがあると聞いたことがあります。その時は「米国では家に大きな冷凍庫がある
から、可能なのだろうな」と思ったのですが、豚主オーナー制度であれば、小さ
な冷蔵庫しかない日本の家庭でも、参加することが可能です。自然の中で、のび
のびと育った豚の肉は、食の安全という視点からも、安心です。また、肉も、スー
パーで売られているものとは比べ物にならないほどおいしいとのことでした。

耕作放棄地を耕作地に戻し、農家には収入、消費者には安全で美味しい肉をもた
らし、そしてなにより、豚が幸せに暮らせるこの取り組み、他の地域にもさらに
広がりそうです。

(新津尚子)

~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~


新津さんはそのあと、実際にここの豚主オーナーになり、届いた精肉を調理して、
会社のスタッフが集まる会に持ってきてくれました。みんなで放牧豚の話を聞き
ながらおいしくいただきました。

ちなみに、豚主オーナー制度にご興味のある方がいらしたら、直接ご連絡くださ
い、とのことです。

長谷川浩さん
yuki_gakkai@me.com


このような人間も豚さんも顔の見える関係でのつながりが増えていくと同時に、
大量に豚肉を生産している農場の従来型の飼育方法が変わっていくことを願って
います。

よろしければ、日本の現状と世界の動向をぜひご覧ください。

『アニマルウェルフェアとは何か――倫理的消費と食の安全』(626円)
(枝廣 淳子/岩波ブックレット)
https://amzn.to/2mWrWqg





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「幸せ経済社会研究所」~幸せと経済と社会との関係を見つめ直す
http://www.ishes.org/

枝廣淳子さんのメールから

国内的には、昨日FBにも書いたのですが、「今年は何が動いていくのか」を考え
たとき、1つはそろりそろりと原発の位置づけかなと思っています。

経団連の中西宏明会長が年頭の会見で、原発について「国民が反対するものをエ
ネルギー業者やベンダーが無理やりつくることは民主国家ではない」「どうする
か一般公開の議論をすべき」と発言され、さまざまな波紋が広がっています。

中西さんはエネルギー情勢懇談会でいろいろ議論をさせていただき、現在進行中
の長期戦略懇談会でもご一緒させていただいている方なのですが、経団連会長と
いう大変なお役目を担って、日本を正しい方向に進めていってくださることを応
援したいと思っています。





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枝廣淳子さんのメールから

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                       Enviro-News from Junko Edahiro


                           No. 2669 (2018.12.28)

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早くから環境問題に警鐘を鳴らし、科学者・教育者として日本の環境運動を引っ
張ってこられている山本良一先生が、「最近広がっている『気候非常事態宣言
』という運動を知っていますか?」と声を掛けてくださいました。

メールニュースで紹介したいとお願いしたところ、背景となる状況や情報も含め、
わかりやすく書いたものを送ってくださったので、ご快諾を得て、ご紹介します。

日本ではなぜか環境意識が低下しているのですが、世界では非常事態宣言が次々
出されるほどの危機意識が高まっています。その背景となる科学的な知見ととも
に、世界の動きを見ていただけたらと思います。日本での動きにつながれば、と
願っています。


~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~


「気候非常事態を宣言し、動員計画を立案せよ」

東京大学名誉教授
山本良一


2018年は世界的に極端な気象に見舞われた年である。

7月には日本が豪雨に見舞われた一方、北アフリカや米国西海岸で記録的な高温
になった。アルジェリアのワルグラで7月5日に過去最高気温51℃を記録した。オ
マーンのマスカットの南部では6月28日に夜間になっても気温が下がらず、一日
の最低気温としては記録的な42.6℃を観測した。米国西海岸、カリフォルニア州
のデスバレーでは7月8日に52℃を観測している。このような極端な気象の頻発に
はまず地球温暖化の影響が疑われる。

しかし人間活動が原因の地球温暖化は気候の変化であり、個々の極端な気象にこ
の気候変化がどのように関与しているかは直ちには明らかでない。自然変動によっ
ても極端な気象は発生するのである。

1.      極端気象の要因分析の基礎

ここでは極端な気象の要因分析(EA=Event Attribution)について基本的事項と
最近の研究成果について整理しておこう。

IPCC気候変動に関する政府間パネルを含め多くの研究により地球の気候シス
テムが温暖化していること、最近数十年の地球温暖化世界の平均気温の上昇)
のほとんどすべてが人間活動、主として化石燃料の燃焼によるCO2排出に起因し
ていると結論している。極端な気象にこの気候変動(Climate Change)がどの程
度寄与しているのかについて研究すること(極端気象の要因分析“extreme
weather attribution”)は政策決定者にとって有用である。また市民にとって
も生活行動を変えるために役に立つ。

気象と気候は異なった概念なので、ある特定場所の個々の気象が地球温暖化によっ
て引き起こされていると言うことはできない。しかし地球温暖化によりそのよう
な極端気象の発生確率が増加しているとか、それが起きた時に強度あるいはその
期間においてより激しくなっているということは要因分析によって言うことがで
きる。

例えば、2003年に7万人の死者を出したヨーロッパの熱波の発生確率は気候変動
(この場合は人間起源の地球温暖化によって2倍に増加していたことが示され
ている。


2.      極端気象の要因分析の最近の成果

最初の要因分析の研究はP. A. Stottらによって2004年に発表された。アメリ
気象学会は2012年以来EA研究を毎年BAMS(The Bulletin of the American
Meteorological Society)に掲載している。

2017年までに131のEA研究が公表されている。そのうちの65%が気候変動によって
その強度あるいは発生確率が増加しているが、残りの35%については気候変動の
寄与は認められなかったと結論している。すなわち35%については通常の自然変
動で発生した極端気象ということである。

気候変動が寄与していると分析された米国の最近の極端な気象例には以下のよう
なものがある。

a.ハリケーンハービー(2017年8月)
記録的な雨量、強度15%増大、発生確率3倍に増加

b.米国の冬期の熱波(2017年2月)
発生確率3倍に増加

c.ルイジアナの洪水(2016年8月)
発生確率40%増加

d.ハリケーンサンディ(2012年10月)
地球温暖化による平均海面水位8インチの上昇によって1880年に比べて氾濫面積
が27平方マイル増加

気候変動がなければ起こり得なかった極端な気象としては次の3例が挙げられて
いる。言い換えれば、100%人間活動が原因の地球温暖化によって発生したとい
うことである。

■2016年のアジアの熱波
■2016年の世界的で記録的な熱波
■2016年の高緯度の海洋の高温とそのアラスカへの影響

また地球温暖化の影響がなければ、今年7月のような猛暑が発生する可能性はほ
ぼなかったとする想定実験の結果を、気象庁気象研究所の今田由紀子主任研究官
がまとめている。(読売新聞、2018年11月9日)


3.      要因分析の信頼性

憂慮する科学者同盟(Union of Concerned Scientists)はEAの現状を次のよう
に整理している。

人間活動が原因の地球温暖化の影響についての証拠に対して次のように総括して
いる。

a. 弱い証拠―少雨あるいは干ばつ、竜巻、雷
b. 証拠が増加しつつある―米国西部の森林火災
c. 強い証拠―豪雨あるいは豪雪、大西洋のハリケーン増加、高潮、嵐による洪
水、乾ききった土壌
d. 最強の証拠―熱波、ハリケーンによる豪雨

現在WWA(World Weather Attribution)という民間のコンソーシアムが結成され
て世界の極端気象の要因分析が行われ公表されている。WWAに参加している機関
はオックスフォード大学環境変化研究所、オランダ王立気象研究所(KNMI)、赤
十字赤新月気候センターである。

2018年については次のような分析がなされている。

a. ケープタウンの水危機の発生確率は気候変動によって3倍に高まった(2018
年7月13日)

b. 夏の北ヨーロッパの熱波(2018年7月28日)北極圏で極端だが南方ではそれ
程ではない。気候変動によって発生確率は2倍に高まった。

c. 日本における豪雨(2018年7月17日)気候変動によってこのような豪雨は発
生しやすくなる


4.      IPCCの1.5℃特別報告書の公表

10月8日にはIPCCの1.5℃特別報告書が公表された。その概要を以下に整理してお
こう。

a. 世界の平均気温は産業化前と比較して1℃上昇(0.8~1.2℃の範囲)。10年
間で0.2℃の速さで温暖化。現在のCO2排出量の速さでは1.5℃気候ターゲットの
突破は2040年(2030~2052年の範囲)。

b. 1.5℃ターゲットの方が2℃ターゲットより利益が大きい。1.5℃の場合、2℃
に比べて海面水位の上昇は0.1m低く、これは1千万人の人々が利益を受ける。サ
ンゴ礁は1.5℃で7~9割減少するが、2℃の場合にはほとんど消失する。夏の
北極海氷については1.5℃の場合、1世紀に1回消滅する可能性があるが、2℃の場
合は10年に1度の割合で消滅する可能性がある。

c. 1.5℃ターゲットを守るためには2030年までに2010年水準の正味のCO2排出量
を45%削減(40~60%の範囲)し、2050年頃(2045~2055年の範囲)にゼロにす
る必要がある。

d. 1.5℃以下に世界の平均気温の上昇を抑制するためのカーボンバジェット
66%の確率の場合は420GtCO2で50%の確率では580GtCO2である。

これは1.5℃ターゲットを守ることはまだ不可能ではないが古今未曽有の努力が
必要であるということである。


5.      2018年はNETs元年か

パリ協定の2℃ターゲットと1.5℃ターゲットを達成するには、もはや再生可能エ
ネルギーへの転換、エネルギー効率の向上等だけでは足りず、大気中からのCO2
を捕集貯留技術などのNETs(Negative Emission Technologies、カーボンマイナ
ス技術)が必要とされる。2018年に入って気候変動が深刻化するに伴い、世界的
にNETsへの関心が高まっている。

以下の表はNETsの国際動向である。
※水谷広のジオエンジニアリング・プラットフォームより筆者作成

2月6日    アメリカ地球物理学連合(AGU)、ジオエンジニアリングに対して立場
表明、“気候介入は更なる研究を必要とする、社会や環境に及ぼす影響と政策の
発展”

2月      EASAC(European Academies Science Advisory Council)報告書公表、
NETsはパリ協定の目標達成にどんな役割を果たすか

2月14日   BECCSは地球の限界と両立しない(淡水、土地利用、生物圏一体性、生
物地球化学循環)、パリ協定の目標を達成するのにNETsでは不足

2月18日   トランプ大統領が署名、連邦政府予算、CO2捕集貯留に税額控除
CO21トンの貯留に対して50ドル

2月20日   米国でBECCS推進団体、“巨大なバイオエネルギープランテーション
気候変動から地球を救える”

3月1日    NETsの課題はその規模の大きさが政策決定者に全く理解されていないこ
とである、例として「農地に玄武岩を鋤き込んで風化を促進させる

3月4日    オランダ、NETsの技術的及び現実的なポテンシャルとそのコストを調べ
た報告書を公表、アイルランドも同様に報告書を公表

3月14日   シリコンバレーベンチャー企業を支援してきたY Combinatorが捕集貯
留ビジネスに興味津々、1トンあたり50ドルの税額控除に刺激されてか

3月25日   欧州連合理事会2050年までの低炭素経済へのロードマップのアップデー
ト版を1年以内に作成するよう命じる

3月30日   MITテクノロジーレビュー“炭素捕集の時代がやって来た”

3月31日   中国がチベット高原で大規模人工降雨計画、高度5000mの地に数万の燃
焼塔を建設、実験段階だが結果は上々

5月1日    憂慮する科学者同盟(Union of Concerned Scientists)が放射管理ジ
オエンジニアリングの研究者を募集、研究テーマはGeoengineering Governance
and Public Engagement

〃       気候回復センター(Center for Climate Restoration)設立される、会
長はPeter Fiekowsky

5月25日   スウェーデンでNETsの初めての国際会議が開催される、イェーテボリ
チャルマース工科大学に250名の研究者が集まる、NETsは急速な排出削減に取っ
てかわれない

6月30日   野鳥の保護を初めとして広く自然を守る、全米オーデュポン協会が炭素
捕集連合(Carbon Capture Coalition)に参加を表明

8月20日   ミシガン大学、総額450万ドルプロジェクト
炭素変換産業用のLCA、技術経済評価のツールキット公開など

8月30日   人為によるCO2排出の1%捕集を2025年までに達成する目標を掲げる
Climateworksが3080万ドルの資金を得た

9月23日   英国王立協会、王立アカデミーGreenhouse Gas Removal報告書を公表

〃       NETsの倫理的検討を要求、Dominic Lenzi他 Leeds大学、NETsへの過信
は問題

9月29日   アップル コロンビアのマングローブ林回復に資金提供、CCS付

10月25日  全米科学アカデミー、NETs報告書を公表

10月30日  オーストラリア、NETs国際会議、キャンベラ
Negative Emissions Conference; The big picture of negative emissions

11月8日   LCA日本フォーラム、日本LCA学会共催 『NETsシンポジウム』、“ゼロ
エミッションからネガティブエミッションへ”


6.      気候非常事態を宣言し、動員計画を立案せよ

気候非常事態宣言(CED=Climate Emergency Declaration)という運動が広がっ
ている。CEDのホームページを見ると、これはオーストラリアで始まり、新たな
化石燃料プロジェクトを禁止し、地方自治体に気候非常事態宣言をして、それに
沿った政策、計画、キャンペーンの立案実施を求めるもので、市民にはそのため
の請願やキャンペーンを要請している。オーストラリアの55のNGOがこのキャン
ペーンを支援している。

CEDAMIA(Climate Emergency Declaration and Mobilisation in Action、気候
非常事態宣言と動員)によれば、2016年12月5日にオーストラリア、ビクトリア
州ダーバン市が初めて気候非常事態宣言を発表し、2017年8月には気候非常事態
計画をまとめている。

CEDは2017年にはヤラ、ホボーケン、モンゴメリーとオーストラリア、米国の3つ
自治体に広まったものの限られた運動に留まっていた。ところが、2018年に入
ると、運動は急拡大し12月末の段階で20の都市・地域に達している。

この背景には様々な理由があると思われる。第1に世界の極端な気象の頻発、第2
に極端な気象の要因分析の進歩によりその大半が人間起源の温室効果ガスの大気
中への放出による地球温暖化の影響であることが解明されつつあること、第3に
10月8日に公表されたIPCCの1.5℃特別報告書の公表により早ければ2030年にも
1.5℃目標が突破され壊滅的な気候崩壊に直面しかねないとの恐れが強まったこ
となどが挙げられるであろう。

12月にロンドンが気候非常事態宣言を発表したことを受けてニューヨークやバン
クーバーなどでも同様な運動が始まっている。ポーランドで開催されたCOP24で
パリ協定のルールブックが議論され、一定の合意がなされたものの、2℃ターゲッ
トより1.5℃ターゲットへより厳しい目標への合意はなされなかったことも、さ
らにこの運動を拡大させていると考えられる。


気候非常事態宣言をしている自治体、CEDAMIAによる

2016年
12月5日 Darebin, Victoria, Australia

2017年
2月7日 Yarra, Victoria, Australia
11月1日 Hoboken, New Jersey, Australia
12月5日 Montgomery, Mary land, USA

2018年
4月4日 Vincent, Western Australia
4月27日 Los Angeles, California, USA
6月12日 Berkeley, California, USA
7月24日 Richmond, California, USA
8月14日 Victoria Park, Western Australia
9月12日 Moreland, Victoria, Australia
10月18日 Byron Shire, NSW, Australia
10月30日 Oakland, California, USA
11月13日 Bristol, UK
11月21日 Ballarat, Victoria, Australia
11月27日 Santa Cruz, California, USA
11月28日 Trafford, UK
12月3日 Totnes, UK
12月5日 Frome, UK
12月6日 Forest of Dean District, UK
12月12日 Greater London Authority, UK
12月13日 Stroud District, UK
12月13日 Brighton and Hove, UK
12月17日 Oswestry, UK
12月17日 Machynlleth, Wales, UK


12月13日の段階で気候非常事態宣言を行った自治体の住民の総数は1,500万人を
超えている。内訳はオーストラリア49万人、英国886万人、米国569万人である。

オーストラリアでは55のNGOによるキャンペーン“Climate Emergency
Declaration(気候非常事態宣言)”が指導しているのに対して米国では“The
Climate Mobilisation(気候動員)”がこの運動を支援している。英国では11月
に100名の科学者・宗教者などによって設立された“Extinction Rebellion(絶
滅に対する反乱)”が気候非常事態宣言運動を支持している。

この直面する気候危機に対して沈黙することは科学的には非理性的であり、宗教
的には不道徳的であろう。早ければ2030年の壊滅的な気候崩壊を前にしてすべて
の市民は起ち上がらなければならない。


(以上)









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枝廣淳子さんのメールから

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                           No. 2667 (2018.12.22)

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最初にちょっとCMです。今日の午後、私も登壇させてもらった再エネシンポジウ
ムが放映されます。よろしければどうぞ!
NHK Eテレ 12月22日(土)14:00~ 15:00
TVシンポジウム「どう進める?再生可能エネルギー
http://www4.nhk.or.jp/P1699/x/2018-12-22/31/24302/1419391/


さて、
昨日第4回パリ協定長期成長戦略懇談会が開催されました。昨日は官房長官・外
務大臣・経産大臣・環境大臣も出席され、とりまとめに向けての各委員が意見を
表明。論点がはっきりしてきました。

これまでの資料はすべて、こちらにあります。第1~3回の議事要旨(ほぼ発言そ
のまま)もあります。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/parikyoutei/index.html

今回は、委員全員が資料を提出し、それに基づいて意見表明をしました。今回の
資料はこちらにあります。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/parikyoutei/dai4/gijisidai.html

発表は「1人3分」でしたので、自分の発表内容について、資料から補いながら、
紹介したいと思います。

私の資料はこちらです。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/parikyoutei/dai4/siryou2-2.pdf


~~~~~~~~~~~~ここから引用(追記含む)~~~~~~~~~~~~~~~


ありがとうございます。資料2-2をご覧ください。G20で議長国としてしっかり機
能できるものに、この提言書をするために、今回入れるべきだと思っている7点、
そして提言の作り方についてお話をさせていただきたいと思います

========スライド============

G20で議長国としてしっかり機能できるものに

今回の長期戦略で大事なこと
1.ぶれない長期目標の明示
2.海外貢献分の位置づけ
3.石炭の位置づけを明示
4.行動変容のための方策
5.地域も長期的に成長できる戦略に
6.人々の幸せと安心につながる道筋を明示
7.戦略策定後の進捗管理・軌道修正のメカニズムを明記

<提案>今回の懇談会提言のつくりかた

(参考資料)日本企業・自治体の声

=======================

まず、これは繰り返し皆さんからも出ていますが、しっかりと長期目標を出して
いくこと。

そのときにまず、前提として2℃というよりも「1.5℃目標」に取り組むという
姿勢が国際的にも必要だと思います。

========スライド============

COP24でも注目、次はG20

日本政府の打ち出す「長期戦略」への注目度が高かった

G20で議長国として機能するために、必要なこと
1.5度目標に取り組む姿勢を明示する
積み上げでなく「あるべき姿」を提示する

※プラスチック資源戦略小委員会でも、G20に向けて、現在できることの積み上
げでなく、「海洋プラスチック憲章」を上回る「あるべき姿」を打ち出している


今回の長期戦略で最も大事なこと:ぶれない長期目標の明示

長期目標
  +
それが今後もぶれないという保証

=======================

また、長期目標を出すだけではなくて、それが今後もぶれないという保証をしっ
かり出すことです。たとえばスウェーデンは、政党が代わってもこの目標を変え
ないということを決めており、長期的な投資ができるという状況になっています。

========スライド============

「政権が代わっても目標は変わらない」スウェーデンのように

スウェーデンの長期目標
2045年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロ」

・議会を構成する8党のうち、極右の1党をのぞく7党が2017年春に気候変動目標
に合意
・これによって、政権が代わっても議会の構成が変わっても、目標は変わらない
ことに
・「投資家も企業も安心して投資できるようになった」

=======================

2つ目は海外貢献分についてです。「日本の海外での貢献を数えるべきだ」とい
うお話はその通りだと思いますが、逆に「日本で海外が貢献しているところも差
し引くのか」という議論が今出てきております。国内でしっかり実現するという
ことを出していただきたいと思います。

========スライド============

今回の長期戦略で大事なこと:海外貢献分の位置づけ

自国内の削減責任をしっかり打ち出す

・海外貢献も大事
・しかし、それを自国の目標にカウントするなら、国内の海外企業による貢献分
(多くの再エネ装置など)を差し引くべき

=======================

3点目は石炭です。この間のCOP24でも、日本の石炭はかなり批判されておりま
した。長期的にゼロに向かっていくという姿勢は必須だと思います。

========スライド============

今回の長期戦略で大事なこと:石炭の位置づけを明示

・海外でも批判:「新規石炭建設計画を支援している銀行と機関投資家の第1,2,
4位は日本の金融機関だ」
・すぐにゼロにできないとしても、長期的にゼロに向かっていくという姿勢は明

・世界にも企業にも方向性を示すべき

=======================

その次は行動変容のためです。意識や価値観を変えるのも大切ですが、すぐに行
動が変わるわけではないので、値札を変える、カーボンに価格をつけるというこ
とは、必ず必要と思われます。

========スライド============

今回の長期戦略で大事なこと:行動変容のための方策

人や企業の行動を変容する方法
△意識や価値観を変える:時間がかかる
○値札を替える:意識がなくてもすぐに行動が変わる

・パリ協定の実現に資する行動(再エネ利用・省エネなど)のほうが「安い」な
ら、すぐに行動は変わる
・移行プランや必要な手当は運営方法の問題

=======================

その次は、繰り返しお話ししていることですが、地域も長期的に成長できる戦略
にしていただきたい。ここは、特にエネルギーに関しては大事なところかと思い
ます。

========スライド============

今回の長期戦略で大事なこと:地域も長期的に成長できる戦略に

・エネルギー・温暖化政策と地方創生を別々に進める余裕は日本にはない
・現状:エネルギーは地域経済から大量のお金が流出する「最大の漏れ穴」
・地域を「支援を受ける側」でなく、「稼げるプレーヤー」にしていく


FIT後の地域エネルギーの設計

移行を支援する技術開発、制度設計を

○うまく移行できれば
・ソーラーパークなどは地元エネルギー生産拠点に
・ゆくゆく数百万戸の家庭がオフグリッド化!?
・自家発電の住宅をつないで地域で融通!

○さもなくば、FIT後、悪夢の状況も……
・日本の再エネ率は下落、CO2増加
・各地に大規模ソーラーやバイオマス発電所の廃墟

=======================

その次、経済成長にしても、究極の目標は幸せだと思うんですね。人々が幸せで
安心して暮らせること、今回の長期戦略がそこにつながっているということを出
す必要があると思っています。

========スライド============

今回の長期戦略で大事なこと:人々の幸せと安心につながる道筋を明示

スウェーデン政府局セバンテ・アクセルソン氏:「スウェーデンでは1990年か
温室効果ガス排出量を25%減らしているが、この削減と福祉(GDPや雇用、都
市部の健康状態など)の向上が相関している」
・パリ協定も経済成長も“手段”であり、究極の目的である“人々の幸せ”を支
え、向上させるため、という位置づけを打ち出す(世界をリードできる打ち出し
方)

=======================

ところが、12ページのグラフを見ていただくとわかるように、日本の人々にとっ
ての温暖化対策は今、幸せにつながるというよりも、負担でありマイナスである
というイメージになっております。これは、他国と比べてかなり違う様相になっ
ているんですね。

なので、これに取り組むことが自分たちの幸せになるという、そこの位置づけや
価値観もしっかり伝えていかないといけない。負担感ばかりが積み上がっていく
と、なかなか取り組みも進まないと思っております。

13ページに書いてあるのは、今回決めて「おしまい」ではないわけなので、どの
ように進捗管理・軌道修正していくか。このメカニズムをきちんと入れ込む必要
があると思っています。たとえばイギリスの気候変動委員会のように、客観的に
進捗を見ながら科学的レビューができるような形が必要と思います

========スライド============

今回の長期戦略で大事なこと:戦略策定後の進捗管理軌道修正のメカニズムを
明記


・科学的レビューメカニズム(エネルギー情勢懇談会、エネルギー基本計画)
・英国気候変動委員会


(参考)英国の気候変動委員会

2008年に設立された独立機関
<目的>
①排出目標について政府・非政府機関への助言
②気候変動対策の進捗の議会への報告

<主な活動内容>
・自国のカーボンバジェットに関する独立した助言
・進捗状況の監視
・気候変動の科学・経済・政策に関する独立した分析
・広範な組織や個人と連携したエビデンス・分析の共有など

=======================

15ページに書いているのは、今回の提言の作り方についてです。事務局に任せて
作っていただくというよりも、私たちの委員としての気持ちと思いを乗せた提言
を作りたいと思っております。

========スライド============

<提案>今回の懇談会提言のつくりかた

事務局の省庁に任せるのではなく、委員の気持ちと思いを込めてつくりたい
地球温暖化問題に関する懇談会提言のように)

=======================

10年前になりますが、洞爺湖サミットに向けて福田内閣時代に、地球温暖化問題
に関する懇談会提言を作りました。この時は、委員の中から有志ということで、
私と末吉竹二郎さんが、国民に呼び掛ける文言のたたき台を作らせていただきま
した。こういった形で、委員みんなで作れればと思っております。

あとは、日本の企業、自治体の声ということで、いろいろな声を寄せていただい
ていますので、こういった人々の気持ちに応える提言を作っていきたいと思って
おります。以上です。



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