枝廣淳子さんのメールから
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Enviro-News from Junko Edahiro
No. 2669 (2018.12.28)
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早くから環境問題に警鐘を鳴らし、科学者・
張ってこられている山本良一先生が、「最近広がっている『
』という運動を知っていますか?」と声を掛けてくださいました。
メールニュースで紹介したいとお願いしたところ、
わかりやすく書いたものを送ってくださったので、ご快諾を得て、
日本ではなぜか環境意識が低下しているのですが、
出されるほどの危機意識が高まっています。
に、世界の動きを見ていただけたらと思います。
願っています。
~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~
「気候非常事態を宣言し、動員計画を立案せよ」
東京大学名誉教授
山本良一
2018年は世界的に極端な気象に見舞われた年である。
7月には日本が豪雨に見舞われた一方、
になった。
マーンのマスカットの南部では6月28日に夜間になっても気温が
の最低気温としては記録的な42.6℃を観測した。米国西海岸、
のデスバレーでは7月8日に52℃を観測している。
はまず地球温暖化の影響が疑われる。
しかし人間活動が原因の地球温暖化は気候の変化であり、
の気候変化がどのように関与しているかは直ちには明らかでない。
ても極端な気象は発生するのである。
1. 極端気象の要因分析の基礎
ここでは極端な気象の要因分析(EA=Event Attribution)について基本的事項と
最近の研究成果について整理しておこう。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)
テムが温暖化していること、最近数十年の地球温暖化(
のほとんどすべてが人間活動、
ていると結論している。極端な気象にこの気候変動(
度寄与しているのかについて研究すること(極端気象の要因分析“
weather attribution”)は政策決定者にとって有用である。
も生活行動を変えるために役に立つ。
気象と気候は異なった概念なので、
て引き起こされていると言うことはできない。
な極端気象の発生確率が増加しているとか、
期間においてより激しくなっているということは要因分析によって
きる。
例えば、
(この場合は人間起源の地球温暖化)
ている。
2. 極端気象の要因分析の最近の成果
最初の要因分析の研究はP. A. Stottらによって2004年に発表された。アメリカ
気象学会は2012年以来EA研究を毎年BAMS(The Bulletin of the American
Meteorological Society)に掲載している。
2017年までに131のEA研究が公表されている。
その強度あるいは発生確率が増加しているが、残りの35%
寄与は認められなかったと結論している。すなわち35%
動で発生した極端気象ということである。
気候変動が寄与していると分析された米国の最近の極端な気象例に
なものがある。
a.ハリケーンハービー(2017年8月)
記録的な雨量、強度15%増大、発生確率3倍に増加
b.米国の冬期の熱波(2017年2月)
発生確率3倍に増加
c.ルイジアナの洪水(2016年8月)
発生確率40%増加
d.ハリケーンサンディ(2012年10月)
地球温暖化による平均海面水位8インチの上昇によって1880年
が27平方マイル増加
気候変動がなければ起こり得なかった極端な気象としては次の3例
いる。言い換えれば、100%
うことである。
■2016年のアジアの熱波
■2016年の世界的で記録的な熱波
■2016年の高緯度の海洋の高温とそのアラスカへの影響
また地球温暖化の影響がなければ、
ぼなかったとする想定実験の結果を、
がまとめている。(読売新聞、2018年11月9日)
3. 要因分析の信頼性
憂慮する科学者同盟(Union of Concerned Scientists)はEAの現状を次のよう
に整理している。
人間活動が原因の地球温暖化の影響についての証拠に対して次のよ
いる。
a. 弱い証拠―少雨あるいは干ばつ、竜巻、雷
b. 証拠が増加しつつある―米国西部の森林火災
c. 強い証拠―豪雨あるいは豪雪、大西洋のハリケーン増加、高潮、
水、乾ききった土壌
d. 最強の証拠―熱波、ハリケーンによる豪雨
現在WWA(World Weather Attribution)という民間のコンソーシアムが結成され
て世界の極端気象の要因分析が行われ公表されている。
はオックスフォード大学環境変化研究所、
十字赤新月気候センターである。
2018年については次のような分析がなされている。
a. ケープタウンの水危機の発生確率は気候変動によって3倍に高まっ
年7月13日)
b. 夏の北ヨーロッパの熱波(2018年7月28日)
程ではない。気候変動によって発生確率は2倍に高まった。
c. 日本における豪雨(2018年7月17日)
生しやすくなる
4. IPCCの1.5℃特別報告書の公表
10月8日にはIPCCの1.5℃特別報告書が公表された。
こう。
a. 世界の平均気温は産業化前と比較して1℃上昇(0.8~1.2℃
間で0.2℃の速さで温暖化。現在のCO2排出量の速さでは1.
突破は2040年(2030~2052年の範囲)。
b. 1.5℃ターゲットの方が2℃ターゲットより利益が大きい。1.
に比べて海面水位の上昇は0.1m低く、
ンゴ礁は1.5℃で7~9割減少するが、2℃
北極海氷については1.5℃の場合、
合は10年に1度の割合で消滅する可能性がある。
c. 1.5℃
を45%削減(40~60%の範囲)し、2050年頃(
る必要がある。
d. 1.5℃
66%の確率の場合は420GtCO2で50%
これは1.5℃
必要であるということである。
5. 2018年はNETs元年か
パリ協定の2℃ターゲットと1.5℃ターゲットを達成するには、
ネルギーへの転換、エネルギー効率の向上等だけでは足りず、
を捕集貯留技術などのNETs(Negative Emission Technologies、カーボンマイナ
ス技術)が必要とされる。
にNETsへの関心が高まっている。
以下の表はNETsの国際動向である。
※水谷広のジオエンジニアリング・プラットフォームより筆者作成
2月6日 アメリカ地球物理学連合(AGU)、
表明、“気候介入は更なる研究を必要とする、
発展”
2月 EASAC(European Academies Science Advisory Council)報告書公表、
NETsはパリ協定の目標達成にどんな役割を果たすか
2月14日 BECCSは地球の限界と両立しない(淡水、土地利用、
物地球化学循環)、
2月18日 トランプ大統領が署名、連邦政府予算、CO2捕集貯留に税額控除
CO21トンの貯留に対して50ドル
2月20日 米国でBECCS推進団体、“
気候変動から地球を救える”
3月1日 NETsの課題はその規模の大きさが政策決定者に全く理解されて
とである、例として「農地に玄武岩を鋤き込んで風化を促進させる
3月4日 オランダ、
た報告書を公表、アイルランドも同様に報告書を公表
3月14日 シリコンバレーのベンチャー企業を支援してきたY Combinatorが捕集貯
留ビジネスに興味津々、
3月25日 欧州連合理事会、
ト版を1年以内に作成するよう命じる
3月30日 MITテクノロジーレビュー“炭素捕集の時代がやって来た”
3月31日 中国がチベット高原で大規模人工降雨計画、
焼塔を建設、実験段階だが結果は上々
5月1日 憂慮する科学者同盟(Union of Concerned Scientists)が放射管理ジ
オエンジニアリングの研究者を募集、
and Public Engagement
〃 気候回復センター(Center for Climate Restoration)設立される、会
長はPeter Fiekowsky
5月25日 スウェーデンでNETsの初めての国際会議が開催される、
チャルマース工科大学に250名の研究者が集まる、
てかわれない
6月30日 野鳥の保護を初めとして広く自然を守る、
捕集連合(Carbon Capture Coalition)に参加を表明
8月20日 ミシガン大学、総額450万ドルプロジェクト
炭素変換産業用のLCA、技術経済評価のツールキット公開など
8月30日 人為によるCO2排出の1%
Climateworksが3080万ドルの資金を得た
9月23日 英国王立協会、王立アカデミーGreenhouse Gas Removal報告書を公表
〃 NETsの倫理的検討を要求、Dominic Lenzi他 Leeds大学、NETsへの過信
は問題
9月29日 アップル コロンビアのマングローブ林回復に資金提供、CCS付
10月25日 全米科学アカデミー、NETs報告書を公表
10月30日 オーストラリア、NETs国際会議、キャンベラ
Negative Emissions Conference; The big picture of negative emissions
11月8日 LCA日本フォーラム、日本LCA学会共催 『NETsシンポジウム』、“ゼロ
エミッションからネガティブエミッションへ”
6. 気候非常事態を宣言し、動員計画を立案せよ
気候非常事態宣言(CED=Climate Emergency Declaration)という運動が広がっ
ている。CEDのホームページを見ると、
化石燃料プロジェクトを禁止し、
沿った政策、計画、キャンペーンの立案実施を求めるもので、
の請願やキャンペーンを要請している。
ペーンを支援している。
CEDAMIA(Climate Emergency Declaration and Mobilisation in Action、気候
非常事態宣言と動員)によれば、
州ダーバン市が初めて気候非常事態宣言を発表し、
計画をまとめている。
CEDは2017年にはヤラ、ホボーケン、
の自治体に広まったものの限られた運動に留まっていた。
ると、運動は急拡大し12月末の段階で20の都市・
この背景には様々な理由があると思われる。
に極端な気象の要因分析の進歩によりその大半が人間起源の温室効
中への放出による地球温暖化の影響であることが解明されつつある
10月8日に公表されたIPCCの1.5℃
1.5℃
となどが挙げられるであろう。
12月にロンドンが気候非常事態宣言を発表したことを受けてニュ
クーバーなどでも同様な運動が始まっている。
パリ協定のルールブックが議論され、
トより1.5℃
らにこの運動を拡大させていると考えられる。
気候非常事態宣言をしている自治体、CEDAMIAによる
2016年
12月5日 Darebin, Victoria, Australia
2017年
2月7日 Yarra, Victoria, Australia
11月1日 Hoboken, New Jersey, Australia
12月5日 Montgomery, Mary land, USA
2018年
4月4日 Vincent, Western Australia
4月27日 Los Angeles, California, USA
6月12日 Berkeley, California, USA
7月24日 Richmond, California, USA
8月14日 Victoria Park, Western Australia
9月12日 Moreland, Victoria, Australia
10月18日 Byron Shire, NSW, Australia
10月30日 Oakland, California, USA
11月13日 Bristol, UK
11月21日 Ballarat, Victoria, Australia
11月27日 Santa Cruz, California, USA
11月28日 Trafford, UK
12月3日 Totnes, UK
12月5日 Frome, UK
12月6日 Forest of Dean District, UK
12月12日 Greater London Authority, UK
12月13日 Stroud District, UK
12月13日 Brighton and Hove, UK
12月17日 Oswestry, UK
12月17日 Machynlleth, Wales, UK
12月13日の段階で気候非常事態宣言を行った自治体の住民の総
超えている。内訳はオーストラリア49万人、英国886万人、
オーストラリアでは55のNGOによるキャンペーン“
Declaration(気候非常事態宣言)”
Climate Mobilisation(気候動員)”
に100名の科学者・宗教者などによって設立された“
滅に対する反乱)”が気候非常事態宣言運動を支持している。
この直面する気候危機に対して沈黙することは科学的には非理性的
的には不道徳的であろう。
の市民は起ち上がらなければならない。
(以上)
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「幸せ経済社会研究所」~幸せと経済と社会との関係を見つめ直す
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