枝廣淳子さんのメールから

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                       Enviro-News from Junko Edahiro


                           No. 2667 (2018.12.22)

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最初にちょっとCMです。今日の午後、私も登壇させてもらった再エネシンポジウ
ムが放映されます。よろしければどうぞ!
NHK Eテレ 12月22日(土)14:00~ 15:00
TVシンポジウム「どう進める?再生可能エネルギー
http://www4.nhk.or.jp/P1699/x/2018-12-22/31/24302/1419391/


さて、
昨日第4回パリ協定長期成長戦略懇談会が開催されました。昨日は官房長官・外
務大臣・経産大臣・環境大臣も出席され、とりまとめに向けての各委員が意見を
表明。論点がはっきりしてきました。

これまでの資料はすべて、こちらにあります。第1~3回の議事要旨(ほぼ発言そ
のまま)もあります。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/parikyoutei/index.html

今回は、委員全員が資料を提出し、それに基づいて意見表明をしました。今回の
資料はこちらにあります。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/parikyoutei/dai4/gijisidai.html

発表は「1人3分」でしたので、自分の発表内容について、資料から補いながら、
紹介したいと思います。

私の資料はこちらです。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/parikyoutei/dai4/siryou2-2.pdf


~~~~~~~~~~~~ここから引用(追記含む)~~~~~~~~~~~~~~~


ありがとうございます。資料2-2をご覧ください。G20で議長国としてしっかり機
能できるものに、この提言書をするために、今回入れるべきだと思っている7点、
そして提言の作り方についてお話をさせていただきたいと思います

========スライド============

G20で議長国としてしっかり機能できるものに

今回の長期戦略で大事なこと
1.ぶれない長期目標の明示
2.海外貢献分の位置づけ
3.石炭の位置づけを明示
4.行動変容のための方策
5.地域も長期的に成長できる戦略に
6.人々の幸せと安心につながる道筋を明示
7.戦略策定後の進捗管理・軌道修正のメカニズムを明記

<提案>今回の懇談会提言のつくりかた

(参考資料)日本企業・自治体の声

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まず、これは繰り返し皆さんからも出ていますが、しっかりと長期目標を出して
いくこと。

そのときにまず、前提として2℃というよりも「1.5℃目標」に取り組むという
姿勢が国際的にも必要だと思います。

========スライド============

COP24でも注目、次はG20

日本政府の打ち出す「長期戦略」への注目度が高かった

G20で議長国として機能するために、必要なこと
1.5度目標に取り組む姿勢を明示する
積み上げでなく「あるべき姿」を提示する

※プラスチック資源戦略小委員会でも、G20に向けて、現在できることの積み上
げでなく、「海洋プラスチック憲章」を上回る「あるべき姿」を打ち出している


今回の長期戦略で最も大事なこと:ぶれない長期目標の明示

長期目標
  +
それが今後もぶれないという保証

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また、長期目標を出すだけではなくて、それが今後もぶれないという保証をしっ
かり出すことです。たとえばスウェーデンは、政党が代わってもこの目標を変え
ないということを決めており、長期的な投資ができるという状況になっています。

========スライド============

「政権が代わっても目標は変わらない」スウェーデンのように

スウェーデンの長期目標
2045年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロ」

・議会を構成する8党のうち、極右の1党をのぞく7党が2017年春に気候変動目標
に合意
・これによって、政権が代わっても議会の構成が変わっても、目標は変わらない
ことに
・「投資家も企業も安心して投資できるようになった」

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2つ目は海外貢献分についてです。「日本の海外での貢献を数えるべきだ」とい
うお話はその通りだと思いますが、逆に「日本で海外が貢献しているところも差
し引くのか」という議論が今出てきております。国内でしっかり実現するという
ことを出していただきたいと思います。

========スライド============

今回の長期戦略で大事なこと:海外貢献分の位置づけ

自国内の削減責任をしっかり打ち出す

・海外貢献も大事
・しかし、それを自国の目標にカウントするなら、国内の海外企業による貢献分
(多くの再エネ装置など)を差し引くべき

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3点目は石炭です。この間のCOP24でも、日本の石炭はかなり批判されておりま
した。長期的にゼロに向かっていくという姿勢は必須だと思います。

========スライド============

今回の長期戦略で大事なこと:石炭の位置づけを明示

・海外でも批判:「新規石炭建設計画を支援している銀行と機関投資家の第1,2,
4位は日本の金融機関だ」
・すぐにゼロにできないとしても、長期的にゼロに向かっていくという姿勢は明

・世界にも企業にも方向性を示すべき

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その次は行動変容のためです。意識や価値観を変えるのも大切ですが、すぐに行
動が変わるわけではないので、値札を変える、カーボンに価格をつけるというこ
とは、必ず必要と思われます。

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今回の長期戦略で大事なこと:行動変容のための方策

人や企業の行動を変容する方法
△意識や価値観を変える:時間がかかる
○値札を替える:意識がなくてもすぐに行動が変わる

・パリ協定の実現に資する行動(再エネ利用・省エネなど)のほうが「安い」な
ら、すぐに行動は変わる
・移行プランや必要な手当は運営方法の問題

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その次は、繰り返しお話ししていることですが、地域も長期的に成長できる戦略
にしていただきたい。ここは、特にエネルギーに関しては大事なところかと思い
ます。

========スライド============

今回の長期戦略で大事なこと:地域も長期的に成長できる戦略に

・エネルギー・温暖化政策と地方創生を別々に進める余裕は日本にはない
・現状:エネルギーは地域経済から大量のお金が流出する「最大の漏れ穴」
・地域を「支援を受ける側」でなく、「稼げるプレーヤー」にしていく


FIT後の地域エネルギーの設計

移行を支援する技術開発、制度設計を

○うまく移行できれば
・ソーラーパークなどは地元エネルギー生産拠点に
・ゆくゆく数百万戸の家庭がオフグリッド化!?
・自家発電の住宅をつないで地域で融通!

○さもなくば、FIT後、悪夢の状況も……
・日本の再エネ率は下落、CO2増加
・各地に大規模ソーラーやバイオマス発電所の廃墟

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その次、経済成長にしても、究極の目標は幸せだと思うんですね。人々が幸せで
安心して暮らせること、今回の長期戦略がそこにつながっているということを出
す必要があると思っています。

========スライド============

今回の長期戦略で大事なこと:人々の幸せと安心につながる道筋を明示

スウェーデン政府局セバンテ・アクセルソン氏:「スウェーデンでは1990年か
温室効果ガス排出量を25%減らしているが、この削減と福祉(GDPや雇用、都
市部の健康状態など)の向上が相関している」
・パリ協定も経済成長も“手段”であり、究極の目的である“人々の幸せ”を支
え、向上させるため、という位置づけを打ち出す(世界をリードできる打ち出し
方)

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ところが、12ページのグラフを見ていただくとわかるように、日本の人々にとっ
ての温暖化対策は今、幸せにつながるというよりも、負担でありマイナスである
というイメージになっております。これは、他国と比べてかなり違う様相になっ
ているんですね。

なので、これに取り組むことが自分たちの幸せになるという、そこの位置づけや
価値観もしっかり伝えていかないといけない。負担感ばかりが積み上がっていく
と、なかなか取り組みも進まないと思っております。

13ページに書いてあるのは、今回決めて「おしまい」ではないわけなので、どの
ように進捗管理・軌道修正していくか。このメカニズムをきちんと入れ込む必要
があると思っています。たとえばイギリスの気候変動委員会のように、客観的に
進捗を見ながら科学的レビューができるような形が必要と思います

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今回の長期戦略で大事なこと:戦略策定後の進捗管理軌道修正のメカニズムを
明記


・科学的レビューメカニズム(エネルギー情勢懇談会、エネルギー基本計画)
・英国気候変動委員会


(参考)英国の気候変動委員会

2008年に設立された独立機関
<目的>
①排出目標について政府・非政府機関への助言
②気候変動対策の進捗の議会への報告

<主な活動内容>
・自国のカーボンバジェットに関する独立した助言
・進捗状況の監視
・気候変動の科学・経済・政策に関する独立した分析
・広範な組織や個人と連携したエビデンス・分析の共有など

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15ページに書いているのは、今回の提言の作り方についてです。事務局に任せて
作っていただくというよりも、私たちの委員としての気持ちと思いを乗せた提言
を作りたいと思っております。

========スライド============

<提案>今回の懇談会提言のつくりかた

事務局の省庁に任せるのではなく、委員の気持ちと思いを込めてつくりたい
地球温暖化問題に関する懇談会提言のように)

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10年前になりますが、洞爺湖サミットに向けて福田内閣時代に、地球温暖化問題
に関する懇談会提言を作りました。この時は、委員の中から有志ということで、
私と末吉竹二郎さんが、国民に呼び掛ける文言のたたき台を作らせていただきま
した。こういった形で、委員みんなで作れればと思っております。

あとは、日本の企業、自治体の声ということで、いろいろな声を寄せていただい
ていますので、こういった人々の気持ちに応える提言を作っていきたいと思って
おります。以上です。



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「幸せ経済社会研究所」~幸せと経済と社会との関係を見つめ直す
http://www.ishes.org/