枝廣淳子さんのメールから
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Enviro-News from Junko Edahiro
No. 2654 (2018.10.01)
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大型で強い台風第24号が日本を縦断していきました。
超える暴風が吹き荒れるなど、
「これは温暖化の影響なのですか?」と聞かれます。
「
が進行すれば台風が強大になり、猛暑が増えると予測されていて、
おりになりつつあるのではないかと思います」。
温暖化科学者の江守正多さんがしっかり答えてくれていますので、
スに7月に投稿された記事を、ご本人の快諾を得てご紹介します。
(写真やグラフなどは、URLからウェブサイトをご覧ください)
~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~
豪雨も猛暑も、
https://news.yahoo.co.jp/
江守正多 | 国立環境研究所 地球環境研究センター 副センター長
7/24(火)
西日本を中心に広い地域を襲った平成30年7月豪雨は、
した。
症による死亡者も各地で続出している。
げるとともに、被災地の一日も早い復旧をお祈り申し上げる。
この頻発する異常気象に対して、SNSを眺めると、一方では「
起きているのに、なぜ日本のメディアは地球温暖化(気候変動)
言わないのか」という声が、他方では「
地球温暖化と結び付けて煽る人が出てきて困る」
もの構図だ。
筆者自身は、
基本的には、「今回生じた気圧パターンを前提とするならば、
水蒸気の増加が豪雨を強化させたことは明らかである」こと、「
む限り、
てきた。
被災の傷跡が生々しいうちは、
かられるのだが、
続いているこのタイミングで、
○なぜ「地球温暖化は人間のせいである」といえるのか
「地球温暖化が人間活動(特にCO2排出)のせいである」
の大部分の人がそう聞かされているが、
となく疑わしいと思っている人も案外多いようだ。
にしっかりと知りたい方のために、
(この説明は以前に岩波「科学」
まず、「地球温暖化が人間のせいである」
必要かを考えてみよう。この問題では、
の不完全さ、
いため、必然的に、統計学的な考え方を用いることになる。
第一に、観測された気候変化が、
ことを示す必要がある。これを気候変化の「検出」(
的な自然変動とは、エルニーニョ現象に代表されるような、大気、
あるいはその結合系の中で勝手に生じるランダムな揺らぎのことで
観測された気候変化が、ランダムな偶然によっては起こりえない「
であるかどうかを統計的に検定する。
次に、検出された変化が、
制力」とよぶ)のうち何によって説明でき、
る必要がある。これを気候変化の「原因特定」(
は気候モデルによるシミュレーションの助けを借りることになる。
然起源の(人間のせいではない)
として与えて気候モデルによる20 世紀以降の気候再現シミュレーションを行っ
た場合、観測された変化傾向と整合的な結果が得られるか、一方、
(人間のせいである)
場合はどうか、といったことを、
統計的に検定するのである。
すなわち、ある観測された気候変化が「人間のせいである」とは、
ある強制力を与えたシミュレーション結果と観測データが整合的で
人間のせいでない強制力のみを与えたシミュレーション結果と観測
的でない、ということだ。
このロジックに基づいて、
価された世界平均気温変化のdetection and attributionの結果は次の図のよう
になる。観測された世界平均気温変化(黒線)は、
り、これは人為起源の強制力を与えたシミュレーション結果(赤)
り、かつ、自然起源のみの強制力を与えたシミュレーション結果(
的でない。
図
過去100年の世界平均気温変化の原因特定(IPCC 第一作業部会 第5次評価報告書
に基づく)
これを元に、IPCC AR5は「人間による影響が20世紀半ば以降に観測された温暖化
の支配的な原因であった可能性が極めて高い」と結論している。
性が極めて高い」はIPCCの用語法で「95%以上の可能性」
ちなみに、ここで「
は」などの反論が考えられるが、
め、その効果をどのような大きさで評価したとしても、
明することはできないことを付け加えておきたい。
○異常気象の増加は地球温暖化のせいか
次に、異常気象の変化について同様なロジックによるIPCC AR5のdetection and
attributionと将来予測の評価をみてみよう。
ているので、そちらもご覧いただきたい。
傾向に絞ってポイントだけ述べる。
日本ではよく「異常気象」というが、
な現象のことである。IPCCでは稀さを限定せずに「極端現象」
という用語をよく用いる。いずれも、
ランダムに揺らいでいるうちに、
解しておけばよいだろう。したがって、温暖化しようがしまいが、
豪雨や30年に一度の猛暑はある意味で必ずやってくる。
問題は、温暖化によって、
えば近年は10年に一度といった具合に、
る。
IPCC AR5の評価は、極端な高温日(猛暑)については、
が「非常に高く」(IPCCの用語法で「90%以上の可能性」
その原因に人間活動の寄与がある可能性が非常に高く(90%
にさらに増える可能性が高く(66%以上)、
ほぼ確実(99%以上)としている。
平均気温が上昇しているのだから、
然だ。
なお、都市においては都市化(ヒートアイランド)
えておく。たとえば、東京の気温上昇傾向は過去100年で約3℃
かにいってそのうちの1℃が地球温暖化、2℃
ヒートアイランドの原因は、緑地の減少、アスファルト・
人工排熱、風通しの悪化といったものの複合である。
次に、大雨についてのIPCCの評価は、
雨が増えている地域が減っている地域よりも多い可能性が高い(
その原因に人間活動の寄与があることについて「確信度が中程度」
たは一致度が不十分で、定量的な可能性まではいえない)、
可能性が高く(66%以上)、今世紀末までに増える可能性は「
とんどと、湿潤な熱帯域で、非常に高い」(90%以上)
降水量は、気温に比べて内部変動が大きく、
IPCCの評価もより不確かなものとなっている。ただし、
が地球温暖化と関係ない」
現時点のデータでは、
は、気温が上がれば大気中の水蒸気が増えることにより、
然と考えられる。
○地球温暖化が続く限り、豪雨も猛暑も増え続ける
ある年のある日に異常気象をもたらす直接的な原因は、
ンだ。
あり、
(ところによりフェーン現象)が原因だ、
地球温暖化により、
た問題はたいへん難しく、
が得られるかわからない。
しかし、それよりもずっと単純明快であり、かつ重要な点は、(
よる地球温暖化が無かった場合と比較して)地球温暖化により、
℃程度、豪雨の降水量は少なくとも7%程度、「かさ上げ」
わずかな変化だと思うかもしれないが、
たまたま生じたときに、この地球温暖化によるかさ上げが、「
を「記録的な異常気象」に押し上げる、とみることができる。
そして、地球温暖化を止めない限り、このかさ上げの大きさが1℃
らに放っておけば、今世紀末にかけて3℃、4℃
れに伴って、
さらに降水量や最高気温の記録を更新し続けることが予想される。
今回の豪雨や猛暑の報道で、「これまでの常識が通用しない」
か聞いた。これはそのとおりだが、それで終わりではない。
地球温暖化が続く限り、これからも「
ということだ。つまり、
に、いまの統計は30年後には通用しなくなる。
豪雨も猛暑も、地球温暖化が続く限り、これからも増え続ける。
今回の豪雨と猛暑を象徴的なできごととして、この機会に、
実にしっかりと目を向けるべきだと考える。
これを社会がどう受け止め、どう対応したらよいのかについては、
べたい
~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~
「単純明快であり、かつ重要な点は、(
た場合と比較して)地球温暖化により、猛暑の気温は1℃程度、
少なくとも7%程度、「かさ上げ」されたといえることだ」
りやすいですね! 次に温暖化と異常気象との関連を聞かれたら、ぜひ使わせて
もらおうと思います。
では、つづきの「ではどうすればよいのか」をご紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~
豪雨も猛暑も、
編:ではどうすればよいか)
https://news.yahoo.co.jp/
江守正多 | 国立環境研究所 地球環境研究センター 副センター長
8/6(月)
前回の記事で、
れによって猛暑の暑さや豪雨の雨量はかさ上げされていること、
化が進む限り、そのような異常気象の頻度が増える、
象の記録が塗り替えられていくと予想されることを説明した。
では、この現実に目を向けたとき、
重要と思う点をいくつか述べたい。今回は、
解を解説するものではなく、
いことをお断りしておく。
述べたいことは大きく2点ある。一つは、
慮に入れた防災・減災のあり方、
てである。もう一つは、地球温暖化を止めるために必要な「
を、日本人がより切実さを持って共有することについてだ。
○大規模水害への防災にともなう社会的難問
筆者は防災の専門家ではないが、2年前に、
ような趣旨の有識者委員会(「防災4.0」
会を得て、その際に多くを学んだ。
したい。
もしも、利根川、荒川の流域に200年に一度の大雨が降ると、
濫し、東京の東部・
ゆる「首都圏水没」リスクである。利根川、荒川の治水計画は、
大雨に耐えることを目標にしているが、
つまり、予算が限られているので少しずつしか進まないのだ。
ここで注意してほしいのは、「200年に一度」の大雨とは、
起きうるということである。「
とはもちろんないし、仮にある年に起きたとして、
いうことではなく、翌年にだって起きてもおかしくはない。
そして、前回の話を踏まえると、従来の「200年に一度」
確率は、地球温暖化が進むにつれて、150年に一度、
ていくということを理解してほしい。
が、もちろん東日本も他人事ではないのだ。
国土交通省が治水計画の見直しに地球温暖化の予測を加味すると報
これは歓迎すべきことだが、先に述べたように、
に対してもインフラが整備途上であることを考えると、
化し続ける気象災害に治水施設が追いついていくことを期待するの
では、利根川、荒川が氾濫すると、どれほどの被害が出るのか。
中央防災会議の専門家委員会から2010年に詳細に報告されてい
ゼロなど)の場合、
地氾濫で約2000人とされる。
内閣府 中央防災会議 資料より
(http://www.bousai.go.jp/
もちろん、気象災害の場合は、地震と異なり、
避難指示を出すことができ、
ろが、この大規模水害の想定では、百万人規模の人々が、
域避難」する必要があるのだ。
果たして、首都圏に住む人々が、数日前の避難指示に従い、
然と避難することが可能だろうか。様々な日常生活、
かに休止できるだろうか。高齢や重病の方々は大丈夫だろうか。
十分な受け入れ態勢がとれるだろうか。そして、
が少なく、結果的に避難が「空振り」に終わった場合、
た時にも人々は避難するだろうか。こういった難しい問題が、
ている。
これらの問題は、専門家と行政によってよく認識され、
これはもちろん適切なことだが、一方で、
考える機会が今までのところなかっただろう。
地球温暖化に伴う水害確率の増加によって、こういった難問を、
社会全体で話し合わなければならない時期が来ているのではないか
筆者の実感である。
○気候変動適応法の下で自治体レベルの議論を
関連して、先月まで行われていた国会で成立した「
れておきたい。気象災害への防災はもちろんのこと、健康、農業、
々な分野への気候変動(地球温暖化)
いくということが法律化されたのだ。
国はおおむね5年ごとに気候変動影響評価を行い、
地方自治体も、努力義務としてではあるが、
を促される。気候変動の影響のうち何が深刻であり、
地域の地理的特性や社会的特性によって大きく異なるため、
だ。
特に激化する気象災害への対応については、
防災・減災計画ともうまく連結させ、
論が活発に行われることを切に願う。
○日本人は「脱炭素」の必要性を実感できるか
次に、今年の豪雨と猛暑を、「地球温暖化を止める」
れるかを考えたい。
生命や生活基盤を脅かす気象災害が地球温暖化により増え始めてお
なる拡大を治水によっては防ぎきれないのであるから、必然的に、
抑制するために地球温暖化を止めることが、
きたといえるのではないか。
かねてより、
いる。2015年に行われた「世界市民会議」(World Wide Views)という社会調査に
よれば、「あなたは、
問に対して、「とても心配している」
では44%であった。
(グラフ)
World Wide Views on Climate and Energy (2015)より
防災インフラが整備された近年の日本では、
われても、
く理解できる(正直にいって、筆者もそうだ)。これはもちろん、
ても幸せなことだ。しかし、そのために多くの日本人は、
規模の課題に、(少なくとも他国の人に比べて相対的に)
まねばならないという状況に置かれてきたのかもしれない。
2015年に合意された「パリ協定」で、
的には、人類が化石燃料の使用から脱却すること)
でする必要性」を理解し、
される。
これまで、その必要性を説明するためには、「
かわらず深刻な被害を受ける途上国の人々や将来世代の人々の人権
た話をして倫理観や共感に期待するか、「
い地球規模の異変」
これらを理解することはもちろん重要だが、「自分事」
実感を持った理解は難しいだろう。
たとえば、「
字を聞かされても、「たいへんなんだなあ」
もしれない。しかし、
識したうえであれば、このような数字も、
ないか。
○「脱炭素」を前向きに志すとき
しかし、こういう話をすると、「
そのためには我慢や負担がたいへんなんじゃないか」
本には多い。
「世界市民会議」の結果をもう一つ引用すると、「
策は、どのようなものですか」という問に対して、「多くの場合、
めるものである」と答えた人が世界平均の66%
合、生活の質を脅かすものである」と答えた人が世界平均の27%
60%であった。つまり、
対して、世界ではもっと前向きらしい。
(グラフ)
World Wide Views on Climate and Energy (2015) より
もう一ついえば、京都議定書の時代からパリ協定の時代になり、
わったと解説している専門家がいる。京都議定書のころは、
国の経済の負担になるという認識で、
し付けようとした。一方、現在のパリ協定下の状況では、
どんどん減るという認識で、
始めたというのだ。
世界では「脱炭素」に前向きに取り組むどころか、「脱炭素」
めているのに対し、日本社会の大部分における認識は、
パラダイムに取り残されているのかもしれない。
8月3日に開かれた、
頭で、安倍首相が「
源泉だ」と述べたそうだ。
この発言のとおりに、
今年の豪雨と猛暑をきっかけに、日本の多くの人々が「脱炭素」
し、
ている。それは、人々の実感や理解の欠如が、日本が「脱炭素」
世界と戦う上での大きなハンデになってしまうことを懸念するから
~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~
以下、特に大事なメッセージだと思います。
「200年に一度」の大雨とは、毎年、1/
「自分は200年も生きないから関係ない」
る年に起きたとして、
て起きてもおかしくはない。
そして、前回の話を踏まえると、従来の「200年に一度」
確率は、地球温暖化が進むにつれて、150年に一度、
ていくということを理解してほしい。
昨夜の暴風雨の記憶が新しいうちに、
また、「あなたにとって、気候変動対策は、
対して、「多くの場合、生活の質を高めるものである」
66%に対して日本では17%、「多くの場合、
た人が世界平均の27%に対して日本は60%であった、
での肌感覚にも合致します。
日本ではまだ、産業界も一般の人々にも、「
を損なうことになるから、できたら避けたいものだ」
5月に取材してきたスウェーデンでも、
対策はチャンスだ。企業の競争力につながり、
ものだ」という意識が強くありました。
この違いはどこから生まれているのか? どうすれば変えていけるのでしょうか?
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「幸せ経済社会研究所」~幸せと経済と社会との関係を見つめ直す
http://www.ishes.org/