気候ネットワークから

 気候ネットワーク メ-ルマガジン
■■  ■ ■■  ■  ■ 「Hot Talk Now!?(ほっとくの)温暖化」
■ ■ ■ ■ ■ ■■■  第243号(2019年12月17日発行)
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         「市民のチカラで、気候変動を止める。」
           気候ネットワークより月2回
       地球温暖化問題を巡る最新情報をお届けします。


        /// 次号は2020年1月15日頃発行予定です ///


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■ 政府・国会・NGOの動向
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●RE100が年次報告書を公表、会員数対前年比33%増など成果をアピール
 12月2日、国際NGO THE CLIMATE GROUPが率いるイニシアティブ、RE100の年
次報告書を公表した。同報告では、会員企業数の増加に加え、会員企業がRE100
を達成する平均目標は2028年であり、3社に1社がすでに75%再生可能エネル
ギーとなっており、また30社は既に再エネ100%目標達成していること等を主
な成果として挙げている。
<http://media.virbcdn.com/files/5c/aa8193f038934840-Dec2019RE100ProgressandInsightsAnnualReport.pdf>

ベンチマーク制度の見直しと定期報告書WEBシステムの導入
 12月4日、省エネルギー小委員会 工場等判断基準WG(第2回)が開催された。
前回WGでの方針に則り、業種ごとのエネルギー消費効率(ベンチマーク)の
目標設定や評価方法を含む、産業部門のベンチマーク制度の見直しが進められ
ており、当日は、指標の見直しが「必要あり」とする高炉鉄鋼業とセメント製
造業の進捗状況が報告された。また、目標達成に向けて努力した事業者の評価
補助金等の支援策の運用に活用することや、評価ツールとなる中長期報告書
と定期報告書の見直し案について審議された。
 定期報告については電子申請率が17%にとどまっていることから、紙媒体の
データ化に係るコストが大きいため、環境省の温対法の報告と絡めて「定期報
告書WEB入力・申請システム」を導入して「作成支援、電子申請、DB化」を一
体化することで、事業者と国の双方の作業コストを大幅に削減する方針が示さ
れた。
<https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/kojo_handan/2019_002.html>

●電力各社が再エネ出力制御の低減に向け、運用の見直しへ
 12月5日、電力・ガス基本政策小委員会系統WG(第24回)が開催され、再エ
ネの出力制御を実施している各地域の電力会社(北海道、東北、北陸、中国、
四国、九州、沖縄)が、今後の再エネ出力制御の見通しを報告した。見通しの
算定に当たり、安定供給に必要なものを除く火力等の抑制、停止に加え、揚水
発電と地域間連系線の最大限活用が前提とされた。
 また九州電力からは、同社が実施した再エネ出力制御の運用見直しの結果、
1割程度の出力制御の低減効果があったことが報告された。具体的には、実需
給の2時間前に制御の要否を判断し、それをオンライン制御に反映することで
制御量が顕著に低減した。今後は、オフライン制御の太陽光発電所についても、
制御当日の日射量が前日の予測量より下振れした場合は出力制御を回避でき
る運用とすることで、制御量をさらに低減させる方針。
<https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/keito_wg/024.html>

太陽光発電事業に対する環境アセス省令案、電力安全小委員会で承認
 12月5日に開催された第21回 産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分
科会 電力安全小委員会において、アセス対象とすることとなった太陽光発電
事業に関する関係省令(電事方施行規則、発電所アセス省令)の案が議論され
た。設備の存在及び供用に関する環境影響評価項目として、パワーコンディシ
ョナーからの騒音や、斜面崩壊等土地の安定性への影響、太陽光パネルからの
反射光による影響などが挙げられ、委員からは特に異論なく、今後パブリック
コメントを実施し、来年4月1日の施行を目指すこととなった。
<https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/021.html>

●高度化法に基づく非化石電源比率の中間目標の設定へ
 12月6日、電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会(第36回)が開催
され、「高度化法」に基づく非化石電源比率の中間目標値(2030年目標は44%)
、小売電気事業者間の競争環境の在り方などについて審議された。
 高度化法の達成計画の提出義務がある、年間電気供給量が5億kWh以上の事業
者の2018年の非化石電源比率は平均で22.8%であり、非化石電源の新規調達が
困難な事業者は目標達成のために非化石価値証書を購入することが想定されて
いる。証書の流通が増大した場合、証書価格の電力料金への適切な転嫁、旧一
般電気事業者の発電部門から小売部門への不当な内部補助の抑制、証書の適切
な最低価格の設定が目標達成の成否を左右するとの指摘が目立ち、これらにつ
いては監視等委員会での議論も踏まえつつ対応する方針が示された
 また、容量市場における発電側基本料金を150円/kWh・月とする案が示され、
特段の異論は出なかったのでそのまま監視等委員会の制度設計専門会合に報
告される予定。
<https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/036.html> 

●気候ネットワーク、フロン回収よりも脱フロン化の対策強化を
 12月6日、気候ネットワークはポジションペーパー回収ではなく脱フロン
化がフロン対策の要~日本における”フロン回収に限界”の実態~」を公表し
た。本ペーパーは日本のフロン対策の現状と課題を考察し、その評価と今後の
対策のあり方についての議論を深めるためにまとめられたものである。本レポ
ートでは、日本においてフロン回収を20年近く法律付けながら、回収率は向上
できず、効果は上がっていないことを指摘、現状の対応では今後も回収率が向
上することは期待できないと分析している。日本がフロン対策でまずやるべき
ことは、HFC(代替フロン)への転換を推進する政策を止め、脱フロンへの早
期転換を促すが必要だとしている。
<https://www.kikonet.org/info/press-release/2019-12-05/F-gas-phase-out>

●新・国際資源戦略の検討で「高効率火力発電」の国際展開を明示
 12月11日、総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会(第28回)が開催さ
れ、資源外交のあり方や新興国の取り込みの方策、石油備蓄を核とした緊急時
の供給体制等にかかる新・国際資源戦略の検討状況が報告され、同戦略の策定
に向けた提言案について議論された。
 提言案においては気候変動問題への対応加速化も言及されている。しかし、
その方向性としては、CO2の有効活用のためのCCUSを含むカーボンリサイクル
等の国際ルール策定への参加や高効率火力発電の国際展開などが打ち出されて
おり、そのためにJOGMECの持つ人材や技術等を活用の上で、その機能のさらな
る強化が必要などとしている。新規石炭火力の新設は高効率であっても1.5℃
目標には整合せず、日本の新規石炭火力建設への批判に対応していない。
<https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shigen_nenryo/028.html>

●再エネ主力電源化制度改革に係る中間とりまとめ案が提示
 12月12日、総合資源エネルギー調査会 再エネ主力電源化制度改革小委員会
(第5回)が開催され、それまでの計4回の小委での議論を踏まえた中間とりま
とめ(案)が提示された。
 同案では、今後整備される再エネ電源を競争電源と地域活用電源とに大別し
た上で、各電源が中長期的に定着・自立するための支援制度(競争電源向けの
FIP、地域活用電源向けのFIT)の在り方や、再エネ電源が地域からの信頼を確
保するための方策(公表情報の拡大、廃棄費用の確保など)がまとめられてい
る。
 さらに、再エネ拡大を支える次世代電力ネットワークを系統運用者が主体的
かつ計画的に形成するための系統費用の分担の在り方や、災害時に復旧しやす
くかつ独立運用できる分散型グリッドを推進するための方策についてもまとめ
られている。同案は最終調整の上、今後パブコメにかけられる予定。
<https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/saiene_shuryoku/005/>

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■ 国際動向
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●ドイツ環境NGO、日本が最も気候変動被害を受けた国、と発表
 12月4日、ドイツ環境NGOのGerman watchはスペインのマドリードで開かれて
いたCOP25で「Global Climate Risk Index 2020(グロバール気候リスク指数)」
を発表した。リポートでは、世界の国に異常気象でどういう影響(死者数
や経済的な損失など)があるかを分析し、去年最悪の被害を受けたのは日本だ
ったと発表した。その理由として、2018年に日本で異常気象がいくつかあった
ことを挙げている。まず7月に西日本を中心とした豪雨、さらに7月中頃から8
月末までのひどい猛暑、埼玉県熊谷市で41.1度で観測史上に最も高い気温が記
録されている。そして、9月に25年ぶりの最強台風21号に見舞われたことなど、
立て続けに気候災害に見舞われていることが背景にある。
 このリポートでは、過去20年に世界全体で12,000以上の異常気象によりほぼ
50万人が亡くなり、約3540億ドールの経済的な損失があったとしている。気候
変動に脆弱な国をサポートするため、気候関連資金援助の拡大が不可決で、温
暖化対策全体の強化が必要だとしている。
<https://germanwatch.org/en/17307>

●日本の金融機関・投資家が石炭投融資リストのトップを独占
 12月6日、COP25にて石炭産業に投融資する世界の金融期間に関する最新調査
報告書がドイツの環境NGOウルゲワルド(Urgewald)およびオランダのバンク
トラック(Banktrack)により発表された。報告書によると、日本の民間銀行
の、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)、三菱UFJフィナンシャルグル
ープ(MUFG)、そして三井住友フィナンシャルグループSMBCグループ)が石
発電所開発企業への融資者として融資額ランクの世界第1位から3位までを占
めていることが明らかになった。これら日本の三大メガバンクは気候変動関連
財務開示タスクフォース(TCFD)の気候リスク報告に関する提言に賛同してい
るにも関わらず、国内外で新規石炭火力発電事業への融資を続けており、国際
的なブランドに対する大きな評判リスクになりかねない、としている。
<https://www.kikonet.org/info/press-release/2019-12-06/urgewald_cop25>

●気候変動政策指数、日本は51位に下落
 ドイツ環境NGOのGerman Watchは12月10日、気候変動の「気候変動パフォーマ
ンス指数(The Climate Change Performance Index)2020」(以下CCPI)を発
表。2005年から開始し毎年発表されるCCPIでは、EUと57ヵ国による気候対策の
動向をモニタリングし、国際的な気候に関する政策への透明性を目的とする。
気候変動パフォーマンスのランキングにおいて日本は去年から2順位も下がっ
た51位に転落し、気候変動対策への乏しさが目立つ。一人あたりの温室効果
スの排出量は削減しているものの、国としての政策が甘く、削減は長くは続か
ないだろうと試算している。また、2050年までの80%削減目標設定は低すぎる
とし、2030年の2℃の気温上昇に抑制する目標達成は難しいと発表。G20議長国
としてリーダー性に欠けており、海外への石炭融資がこの順位に下がった理由
として挙げられる。
<https://www.germanwatch.org/en/17281>

●IRENA、パリ協定に整合するには「再エネ倍増」が必要と報告。
 12月11日、国際再生可能エネルギー機関 (IRENA)はスペインのCOP25で「N
DCs in 2020: Advancing Renewables in the Power Sector and Beyond」とい
う報告書を発表した。それによると、パリ協定の目標を達成するためには、現
在の3.2テラワット(TW)を占めている再エネルギーに関する各国が決めた貢
献(NDC)を2030年までに7.7TW、つまり2倍以上にする必要があるとしている。I
RENAのフランチェスコ・ラ・カメラ代表は「脱炭素の経済は技術的に可能で、
社会的にも経済的にもメリットがある」と述べ、再生可能エネルギーの増強は、
経済発展や職業開発や福祉などに有益で、エネルギーへのアクセス向上や貧
困削減にもつながるとしている。
<https://www.irena.org/newsroom/pressreleases/2019/Dec/COP-25-RE-Ambition-in-NDCs-Must-Double-by-2030>

●国際環境NGO・CAT、日本の政策は「かなり不十分」
  国際環境NGO「クライメート・アクション・トラッカー(CAT)」は11日、各
国の気候変動に対する取り組みや目標の調査・分析を行った評価レポートを更
新し、WEBサイトで公表した。レポートでは、現在行なわれている各国の取り
組みではパリ協定の目標を達成することは難しく、今世紀末には2.8~3度気温
が上昇する可能性があるとしている。
 また、各国政府がそれぞれのNDC(削減目標)を達成するために十分な政策を
実行しているかを評価するリストでは、日本は最下位から11番目で「かなり不
十分」と評価された。この背景には、石炭火力に投資を行ない、新しい石炭火
発電所の建設計画を行なっているなど、再生可能エネルギーへの転換が遅れ
、石炭火力をやめない姿勢がある。また、日本は2020年にNDCを更新するつも
りが無いと公表しており、更新をしなければパリ協定を初めとする日本が従前
において結んできた協定に違反する可能性があるとしている。日本が「パリ協
定に適合」する国として評価されるには今後更なる努力が必要だと評価されて
いる。
<https://climateactiontracker.org/press/global-update-governments-showing-little-sign-of-acting-on-climate-crisis/>

●COP25閉幕 市場メカなどの合意を持ち越し
 12月15日(マドリード時間)、スペイン・マドリードで開催されていた国連
気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)は、パリ協定の実施指針の積み
残し課題を中心に交渉が行われたが、2日延長して続けられた交渉の末、市場
カニズムについては各国の立場の溝を埋めることができず、COP26グラスゴ
ー会議に持ち越す形で閉幕した。

▼プレスリリース:COP25、市場メカなどの合意を持ち越して閉幕 日本は自
らの削減目標の引き上げと脱石炭の宿題へとりかかるべき(12月15日)
<https://www.kikonet.org/info/press-release/2019-12-15/cop25-statement>

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■ 地域動向
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岩手県北部9市町村がが2050年の温室効果ガス排出量ゼロを共同で宣言
 12月2日、岩手県に続き、同県北部の9市町村(久慈市二戸市洋野町、一
戸町、軽米町、葛巻町九戸村、野田村、普代村も合同記者会見にて、再エ
ネを軸とする横浜市との広域連携等の取組により、2050年までにCO2排出量を
実質ゼロにすると宣言した。
 環境省によると、12月6日時点で27の自治体(9都府県、11市、4町、3村)が
2050年CO2排出実質ゼロを表明しており、それら自治体を合計すると人口は
約4,300万人(日本総人口の約34%)、GDPは約225兆円となる。
<https://www.city.ninohe.lg.jp/forms/info/info.aspx?info_id=12147>
<http://www.env.go.jp/policy/zerocarbon.html>

●長野県北安曇郡白馬村、気候非常事態宣言
 12月4日、長野県北安曇郡白馬村において長野県内初となる「気候非常事態
宣言」を表明した。同日開会の村議会12月定例会の冒頭あいさつで、下川正
剛村長が宣言文を読み上げた。住民とともに気候変動の危機に向き合い、温室
効果ガスの抑制、再生可能エネルギーへの転換、白馬の四季と良質な雪を守る
ことなど5項目を掲げる。地元の白馬高校2年生3人が主体となり、9月にJR
白馬駅前で行ったデモ行進で宣言を要望。3日も下川村長に宣言を求める住
民ら153人分の署名を手渡していた。
<https://www.vill.hakuba.lg.jp/material/files/group/2/hakuba_climate_emergency_declaration.pdf>

●長野県、都道府県で初の「気候非常事態宣言」
 12月6日、令和元年11月県議会定例会における「気候非常事態に関する決議」
を受けて、阿部知事が「気候非常事態」を宣言し、この中で「2050年二酸化
炭素排出量実質ゼロ」とすることを表明した。
<https://www.pref.nagano.lg.jp/ontai/documents/kikohijyojitaisengen.pdf>

兵庫県明石市 来年3月議会で「気候非常事態宣言」を表明へ
 12月11日、市議会生活文化常任委員会で市が、気候非常事態宣言をする方針を明
らかにした。同宣言に関する決議を求める請願も市民から提出され、採択され
た。明石市は、宣言案を作成後、内容について市民意見を公募する方針。関西
で、気候非常事態宣言をする方針を明らかにした初めての自治体となった。
<http://www2.city.akashi.lg.jp/gikai/c-2/tuukoku_01_12.pdf>

●福岡県大木町が「気候非常事態宣言」を表明
 12月12日、大木町は議会の同意を得て、気候非常事態宣言を表明しました。
 「世界中の地域や自治体と連携し、子ども達の未来のために、町民の皆さん
と連携して取組を進めていく」と町長はコメントした。
<https://www.town.ooki.lg.jp/material/files/group/1/kikouhijyoujitaisenngen.pdf>

●東京都、「みんなでいっしょに自然の電気」キャンペーン開始
 東京都は、このほど、国内初の再生可能エネルギーグループ購入促進モデル
事業参加登録「『みんなでいっしょに自然の電気』キャンペーン」を開始した。
このモデル事業では「みんなでいっしょに自然の電気」という多くの消費者
が集まることで、電気代を節約するキャンペーンで一般家庭の標準的な価格以
下になることを想定している。太陽光や風力などの自然からの電気(再生可能
エネルギーの割合が30%以上の電気)の購入を首都圏在住の一般家庭や個人事
業者を対象として募っている(登録期間は2020年1月21日(火)まで)。多くの
人が参加することでエネルギーを安価にし、クリーンな環境を維持することに
繋がるとしている。
■ 参加登録開始プレス
<http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/11/22/08.html>
■「みんなでいっしょに自然の電気」キャンペーン特設ホームページ
<https://group-buy.jp/energy/tokyo/ho