芝居としてみたコロナ

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国際政治劇として見るべきコロナ危機

2020年10月11日   田中 宇

世界的なコロナ危機の特徴の一つは、米欧先進諸国と、発展途上諸国(非米諸国)のコロナ政策が大きく異なっていることだ。先進諸国の多くは、コロナ対策として厳しい都市閉鎖を行ってきた。人々は外出制限や社会距離を強要され、経済活動が大幅に減退して先進諸国はどこも大不況になっている。都市閉鎖は、コロナ対策として効率が非常に悪い。ほとんど効果がない。各国で新型コロナの陽性者や発症者が4月ごろに比べて減っているのは都市閉鎖の成果でなく、他の要因(状況が集団免疫に近づいているからとか、感染を繰り返すうちにコロナの重篤性が低下したとか)によるものだ。都市閉鎖がコロナ対策として効果がないと思える根拠の一つは、季節性インフルエンザの感染者が減っていないことだ。都市閉鎖が新型コロナ対策として有効なら、コロナだけでなく似たような感染のしかたをするインフルエンザの罹患者減るはずだ。だが、たとえば英国では年初来のインフルの累計患者数が前年比で減っていない。インフル患者数が減っていないことから、新型コロナの減少は都市閉鎖が原因でないことが読み取れる。 (Flu is killing more people than Covid19) (コロナのインチキが世界的にバレていく

新型コロナの陽性者が再増加している国もあるが、それらはコロナ危機を扇動する目的で検査数を増やし、見かけ上の陽性者を増やす恣意的な策の結果だ。都市閉鎖をやらなかったスウェーデンのコロナ対策を立案してきた感染症の専門家アンデシュ・テグネルはFTに対して「都市閉鎖策は、壁にとまったハエを大鎚で叩いて殺虫しようとするようなものだ」と言っている。都市閉鎖は、ハエ(新型コロナ)を潰すのでなく、壁や家(国家経済や国民生活)を壊してしまう愚策だ、という意味だ。言い得て妙である。都市閉鎖は、愚策というより完全に間違った策だ。(スウェーデンの政策をさんざん中傷報道してきた歪曲屋のFTは、テグネルの指摘を懐疑的にとらえているが) (The controversial epidemiologist believes lockdown is ‘using a hammer to kill a fly’.) ("It's Like Using A Hammer To Kill A Fly"

スウェーデンは8月から新たな陽性者が激減し、病院のICUへの新規のコロナの入院患者も減ったので、ICUのコロナとそれ以外の領域に分けることをやめる病院が相次いでいる。当初は、発熱や咳の症状がある患者を全員コロナ領域に入れていたが、ほとんど誰も感染していない事実が判明した。スウェーデンは集団免疫に達している可能性が高い(日本も。ほとんどの人は自然免疫でコロナが治癒するので獲得免疫を得ず、免疫保有率が12-43%という低さのまま集団免疫に達する)。前出のテグネルも集団免疫の可能性を指摘している。ストックホルムではほとんど誰もマスクをしていない。老人ホームへの訪問も解禁された。ベルギーやデンマークもマスク義務を解除した。北欧やベネルクスでは、マスクはコロナ感染防止の効果がない(薄い)という事実が定着している。 (COVID-19: Does Sweden Have Herd Immunity?) (Belgium to scrap face mask rules) (Denmark Nears Pre-COVID Normality: No Masks Or Distancing In Schools, Just Common Sense

英国では、数千台の呼吸器が使われないまま倉庫でほこりをかぶっている。3-4月には、呼吸器が足りないと世界的に大騒ぎしていたのに(モサドが敵国から呼吸器を盗んでくる英雄談まで出ていた)。 (Thousands of ventilators bought at the height of the Covid crisis are sitting in warehouses due to a lack of demand) (Ventilators By Cloak & Dagger: Israel's Mossad Boasts Of Stealing Medical Gear From Other Countries

北欧や日本など一部の例外を除き、先進諸国の多くは、都市閉鎖や社会距離、マスク義務化など厳しいコロナ対策を、見かけ上の陽性者数を恣意的に増やす歪曲策までやって続けている。対照的に、発展途上諸国の多くは、厳しいコロナ対策をやってこなかった。陽性者が多く出るとWHOに言われて対策をとるが、多くはそれほど厳しいものでない。しかし、手ぬるい対策しかやらない途上諸国はコロナが蔓延して大変なことになっているかというと、そうでもない。大変なことになっていると騒いでいるのは先進諸国だけで、しかもその騒ぎのほとんどは、陽性者や死者の数を捏造的に増やすなど自作自演の結果だ。 (Did The WHO Just (Accidentally) Confirm COVID Is No More Dangerous Than Flu?) (新型コロナ集団免疫再論

たとえばインドネシアは世界最低の人口あたりの検査率で、これではコロナ封じ込めが困難だと欧米マスコミで報じられている。途上国全体に、そのうち発症者があふれて大変なことになるぞ、やっぱり途上国は遅れてるなあ、みたいな印象がばらまかれてきた。しかし、そんなマスコミの妄想と裏腹に、人々は平然と生きている。インドネシアの人々が無策状態のコロナから受けている打撃よりも、米国やスペインの人々が都市閉鎖などの馬鹿げた強硬策から受けている打撃の方がはるかに大きい。先進国より途上国の方が、住みやすい場所になっている。今の先進国はコロナ対策で失業と行動制限の両方の打撃を受けているが、途上国の問題は失業だけだ。今や先進国の方が「かわいそうな人々」であふれている。これが世界の「新常態」になっている。 (Indonesia Has 270 Million People—and One of the World’s Lowest Covid-19 Testing Rates) (NY Times Admits WHO’s Decision Not to Close Borders at Start of Pandemic Was Based on “Politics,” Not Science

東南アジアのカンボジアは、コロナ危機初期の今年2月、船内に陽性者が出てどこも寄港させてくれなくなった米国のクルーズ船ウェスターダム号を受け入れて乗客全員を問題ないとして上陸させ、シアヌークビル港まで出迎えたフンセン首相は「わが国にコロナ患者はいない」と豪語した。そのとき米国の新聞は「無策なカンボジアはそのうち発症者が急増して大変なことになる」という印象を与える記事を流した。しかし現実は逆で、カンボジアでは大きな問題が何も起こらず、今では「なぜカンボジアはコロナ対策で成功したか」みたいな提灯記事まで出ている。ニカラグアも同様だ。カンボジア政府はコロナに対して無策だが、WHOに非難されない。その理由はたぶん、WHOが中国の支配下に移っており、カンボジアは親中国の国だからだ。ニカラグアも。中国と仲良くしていればコロナ政策を非難されない。 (世界に蔓延する武漢ウイルス <2>) (What lies behind Cambodia's surprise coronavirus success?) (Nicaragua – The Country That Didn’t Swallow the Covid Blue Pill

なぜ欧米諸国は、害悪ばかり多い間違ったコロナ対策を延々と厳しくやっているのか。それをやるために統計まで歪曲して。「どういう病気なのかまだわからないので大事を取ってやっている」という、軽信者がよく言う解釈は間違いだ。コロナがどういう病気なのか専門家が諸説を出しているが、それをまとめてどれが事実であるか整理して人々に説明する動きが、先進国の中に少ない。どういう病気かわからない感じを意図的に放置している。大事を取る姿勢は、事態を調査してそれが正しいかどうか確認する作業と並行する必要があるが、それが行われていない。都市閉鎖の恒久化が最初から運命づけられている。コロナの本質についてわかってきているのに、いつまでも、わかってないことになっている。そのくせ、コロナの本質がわからないと作れないはずなのに、ワクチンの完成まであと何か月、みたいな喧伝が出回る。馬鹿げている。 (都市閉鎖の愚策にはめられた人類) (ウイルス統計の国際歪曲

欧米諸国に都市閉鎖を命じている米覇権運営体やWHOは、厳しい都市閉鎖をやること自体が目的で、コロナはその口実として使われていると考えられる。コロナ危機を長引かせ、都市閉鎖を長期化しようとしている。なぜ、欧米経済に大打撃を与え、米覇権自体の衰退を早める長期的な都市閉鎖策がとられているのか。トランプの米国はWHOの支配権を中国に譲渡してしまい、中国がライバルの欧米を経済的に潰すためにWHOを通じて長期の都市閉鎖をやらせるシナリオにもなっている。これは、トランプら覇権構造の多極化を狙う勢力の戦略としてみると、まさにその戦略そのものになっている。都市閉鎖は、覇権体制を米単独から多極型に転換するための策として、覇権運営体(米諜報界)を乗っ取ったトランプや、多極化で得をする中国によって進められていると考えられる。 (コロナの歪曲とトランプvs軍産の関係) (ドル崩壊への準備を強める中国

「大鎚でハエを叩こうとして家を壊す」コロナの都市閉鎖と同様の構造を持つ「隠れ多極主義」的な戦略としてこれまで、「サダムフセインアルカイダを潰そうとして米国の中東覇権を自滅させる」イラク戦争やテロ戦争、「地球温暖化を防ぐ口実で欧米に石化燃料を禁止して経済を潰す」温暖化対策、「デフレ対策の口実でドル覇権をバブル膨張させて潰す」米欧日中央銀行群のQE(量的緩和策)、「中国を潰すためと言って米欧の経済覇権を解体し、中国を非米的に台頭させて世界を多極化するトランプの米中分離策」などがあった。いずれも軽信者には見えない構図になっている。 (911とコロナは似ている) (米欧日の儲けを中国に移転するトランプの米中分離

新型コロナ自体、最初は中国に疫病を広めて経済崩壊させる軍産の中国潰し策だった観がある(米留学中に米諜報界のスパイにされた中国人研究者が武漢のP4ラボでSARS関連の密閉研究中だったウイルスを意図的に漏洩したシナリオの場合)。しかし、軍産(諜報界)はトランプに乗っ取られているので、コロナ危機は中国よりも米欧をひどい目に遭わせる道筋へとねじ曲げられ、中国自身はさっさとコロナ危機を脱して世界最速で経済成長する状態に戻り、コロナは習近平の独裁を強化する道具になっている。中共はコロナにかこつけて欧米の記者やスパイを大陸から追い出し、軍産による中国の政権転覆・カラー革命は不可能になった。米英の退潮と相まって、香港や台湾の「回収」が進む。世界が気づかないうちに、中国がコロナに紛れてステルスに蘇生・台頭している。孫子の兵法ならぬコロナの兵法。非米諸国や国際機関が中国の傘下に群がる(菅の日本も)。長期的に、中国はコロナでとても得をする。 (米中逆転を意図的に早めるコロナ危機

 

 



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えだひろは、熱海で生きていく

 Enviro-News from Junko Edahiro


                      No. 2769 (2020.10.03)

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あっという間に10月ですね! 今年もあと3ヶ月、1年前には想像もしていなかったコロナ禍に対応しながら、だからこそ持続可能で幸せな未来に向けて、進められることをしっかり考え、進めていきたいと思っています。

しばらく間があいてしまいましたが、コロナをきっかけに本格移住した熱海で、新しい会社の立ち上げに忙殺されておりました。ようやく形になってきたので、紹介させてください。

これまで、外部のアドバイザーとして、いくつものまちづくりのお手伝いをしてきました。今回は、外部の専門家としてではなく、リアルの場のプレーヤーとしてやってみたいと新会社設立を決断したものです。

内外の最新情報や取り組みを熱海に伝えつつ、熱海でのまちづくりやさまざまな経験・知見を全国に、そして世界に伝えていきたいと考えています。

プレスリリースを紹介します。


~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~


2020年9月10日
有限会社イーズ
熱海マリンサービス株式会社


新会社「株式会社未来創造部」設立のお知らせ

有限会社イーズ(東京・台東/代表取締役枝廣淳子と熱海マリンサービス株式会社(静岡・熱海/代表取締役光村智弘)は、2020年9月10日、静岡県熱海市に「株式会社 未来創造部」を設立いたしました。

1.設立背景
2020年4月、熱海マリンサービス株式会社は会社創立30周年の節目に、これまで本業と並行して実施してきた海岸清掃や減災・防災・ECO・健康などのボランティア活動の一部を、より広く深く持続可能に事業として展開していくために、新事業部「未来創造部」を立ち上げました。

また、7年ほど前に執筆・翻訳用の仕事部屋を熱海市に設けた枝廣は、今回の新型コロナウイルスによる外出自粛に伴い、熱海に移住。地元のメンバーとつながって意気投合し、未来創造部を共同で設立し、地元食材の販売支援やキャンドルナイトの企画・運営、環境、エネルギー、SDGs等にかかわるプロジェクトを実施してきました。

そしてこの度、活動の広がりやさらなる多様な人や組織との共創をめざし、株式会社未来創造部を設立する運びとなりました。

地元で長年活動してきた熱海マリンサービス・光村智弘と、これまで島根県海士町、北海道下川町、熊本県南小国町徳島県上勝町などのまちづくりのお手伝いをしてきた経験、バックキャスティングによるビジョンづくり、システム思考、プロジェクト組成・マネジメント、コミュニケーション、変化の理論といった知見・経験を有する枝廣淳子が、お互いの強みを最大限に活かし、新たな学びを得ながら、持続可能な熱海のまちづくりを展開し、その経験や学びを全国・世界へ伝えていきたいと考えています。


2.株式会社未来創造部のミッション
未来の子どもたちに きれいで楽しい地球を残す

3.事業内容
■拠点であるマリン・スクエアを使った活動
―ワーケーション事業の受注・ワーケーション研究所の運営
―リモートワークの受入
―バケート・プログラムの企画・運営
―貸しスペース・教室の運営
―自主企画の運営
―地元の人が交流できるコミュニティスペースの運営 等

■地元経済の支援活動
―ウェブサイトを活用した販売支援
―「熱海の地元経済を創りなおす」勉強会の開催 等

■プラキャッチプロジェクトの実施
―熱海港に流れ込む糸川の河口に集ごみ網を設置し、川から流出するプラスチックごみをキャッチして陸揚げし、適正処理することで、海へ流出するごみを止めようというプロジェクト

■アニマルウェルフェアの取り組み支援
―勉強会の開催 等

■環境教育プログラムの企画・実施
―「川と海とプラごみ」プログラム 等

■社員研修の企画・受入
―プログラム設計・講師・ファシリテーション 等

コンサルティング・アドバイス事業
SDGs、気候変動、海洋プラスチック問題、レジリエンス地域経済循環等、企業や地域、組織が望ましい方向へ進むための支援

■代理店業務
―電動トライク、省エネ機器、節水機器 等


4.新会社概要
法人名:株式会社未来創造部
代表取締役社長:枝廣淳子
代表取締役副社長:光村智弘
所在地:〒413-0014 静岡県熱海市渚町7-5
電 話:0557-85-0330(現在は熱海マリンサービスにて対応)
E-mail:info@mirai-sozo.work
H  P:https://mirai-sozo.work/
設立日:2020年9月10日


【本リリースに関するお問い合わせ】
有限会社イーズ
〒111-0053 東京都台東区浅草橋1丁目19-10 PF浅草橋ビル5F
電 話:03-5846-9841
E-mail:info@es-inc.jp
https://www.es-inc.jp/

コロナは、演出されている

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コロナの歪曲とトランプvs軍産の関係

2020年9月26日   田中 宇

新型コロナ拡大にともなう危機は、とても政治的な構造を持っている。マスコミや権威ある専門家たちは、コロナ危機を「裏」のない、政治色の全く入らない純粋な感染症の危機としてしか見ない。人々の多くも裏読みに慣れていないので、マスコミ権威筋の説明を鵜呑みにしている。だが事態を詳細に見ていくと、コロナ危機は国際政治的に歪曲された各国政府による陰謀・政治的演出だと考えた方が納得がいく話になる。たとえば「第2波」「第3波」として騒がれている陽性者の再増加は、日本でも米国でも、PCR検査数を増やしたことに伴うもので、コロナの感染拡大の速度が最増加した結果でない。なぜ各国政府が事態を歪曲して第2波、第3波を演出し、感染拡大が続いていると人々に思わせねばならないのか、の方が大きな問題だ。事態を深く掘り下げた時の構図の大転換は911テロ戦争と同じだ。 (The Jump In New US Covid Cases Is "Completely Explained" By A Surge In Testing: BofA) (新型コロナ「第2波」の誇張) (911とコロナは似ている

世界的に、市民外出禁止や店舗閉鎖命令などの都市閉鎖が、コロナ対策として効果があるという確証がないまま各国に強要され、その悪影響である経済停止の方がひどくなり、世界的な大恐慌になっている。都市閉鎖を必要ないと考え、むしろ都市閉鎖しないことで集団免疫を早めに獲得した方が良いという方針を続けたスウェーデンは国際マスコミから非難され、悪しざまな歪曲報道で誹謗中傷され続けた。今ごろになって、スウェーデンは全体的な感染が少ないまま経済成長を再開でき、正常な社会の維持もできて成功したと認められている。都市閉鎖が愚策であると公式にわかってきた今でも、欧米の多くの政府は、今後も断続的に都市閉鎖が必要だと言い続けている。こうした間違った策を長期化するために、間もなく第3波がくるという歪曲的な喧伝(実は検査数の増加)が続けられている。 (Does Sweden have herd immunity?) (New Lockdowns Could Lead Europe to Economic Depression

この国際政治的な歪曲を主導しているのは米国だ。経済を破壊するだけの都市閉鎖には、米国以外の国が扇動・強要しても、他の諸国が従わない。日本を含め同盟(=対米従属)諸国の多くは、今回のような国家運営の根本に関わる重要事項の場合、覇権国である米国の言うことしか聞かない。米国自身も、他の国の主導なら従わない。 (コロナのインチキが世界的にバレていく

今の歪曲的なコロナ対策の主導役(コロナ危機の扇動役)が米国であるとして、米国のどの勢力が主導しているのだろうか。トランプなのか、軍産なのか。米国では、覇権運営に関してトランプと軍産複合体(諜報界、外交界、マスコミ、学術界、民主党主流派など。深奥国家)が対立的に存在している。これまで米国の覇権運営は軍産が握ってきた。そこにトランプが大統領になって殴りこみをかけた。軍産は米国覇権の永続が目標で、トランプは米国覇権の破壊と多極化が目標だ。 (米英諜報界内部の暗闘としてのトランプのスキャンダル) (トランプと諜報機関の戦い

米国の中枢では、第2次大戦で英国から覇権を譲渡されて以来、英国が黒幕になって米国の単独覇権体制を維持する戦略を採りたい軍産と、覇権を多極化・機関化して世界の発展の均一化と安定を進めたい勢力(隠れ多極主義)が暗闘してきた。多極派の目標は、ロックフェラーが作った国連の安保理P5が象徴している。トランプは多極派の代理人だ。トランプは大統領になって軍産に戦いを挑み、ロシアゲートなどを舞台にした激しい暗闘の結果、トランプが軍産に勝っている。諜報界を取り仕切る司法長官にはトランプの忠臣であるウィリアム・バーが19年2月から就任し、トランプに楯突いてきたFBIなど諜報界を仕切ってきた幹部たちを次々と更迭ないし格下げ・抑止してきた。バーはトランプの軍産潰しの現場指揮官だ。 (スパイゲートで軍産を潰すトランプ) (軍産の世界支配を壊すトランプ

トランプは軍産と対立してきたが、トランプはすでに軍産との戦いに勝っている。トランプは、すでに軍産の中枢である米諜報界を乗っ取っており、乗っ取った後も、まだ戦いが続いていて軍産と対立しているかのような演技を続けることで、軍産が過激にやって失敗して米国覇権を自滅させ結果として多極化が起きているという展開に誘導していると考えられる(マスコミや学術界は軍産の一部だが独立的な機関なので、トランプが諜報界を乗っ取っただけでは言うことをきかせられない)。この手法は、ブッシュ政権の時に政策立案集団である「ネオコン」が採った策略だ。ネオコンは、軍産の一部としてイラク侵攻を起こしたが、そのやり方は過激かつ稚拙で、イラクの占領が失敗して米国は覇権を低下させた。ネオコンはトランプと同根の隠れ多極主義者と考えられるが、表向きネオコンは「ネバートランプ」の派閥を結成したりしてトランプを敵視している。ネオコンは、イラク侵攻後も「悪名高い軍産」として演技し続け、トランプと軍産が戦ってトランプが勝つという演技に参加している。 (ロシアゲートとともに終わる軍産複合体

「トランプvs軍産」の構図の中で、コロナの歪曲を積極的にやってきたのは、軍産の一部であるマスコミだ。また米政界では、共和党より民主党の方が都市閉鎖の恒久化に積極的だ。米マスコミの多くは民主党寄りである。学術界や大学も、コロナ危機を積極的に扇動してきた。コロナの歪曲は、マスコミや民主党など、軍産によって行われている。軍産の目標は米国覇権の永続なのだから、米経済を破綻させ米覇権を自滅させ、中国をこっそり台頭させるコロナ危機の歪曲は、軍産の目標と正反対だ。この矛盾をどう説明するか、という時に出てくるのが「軍産はすでにトランプに乗っ取られている」という状況だ。トランプは、乗っ取った軍産の一部であるマスコミや学術界が、コロナ危機を歪曲的に扇動するように仕向けている。かつてイラク戦争の前後にも、マスコミはネオコンが流す稚拙なウソを「事実」として報道し続けていた。 (好戦策のふりした覇権放棄戦略) (ネオコンと多極化の本質

トランプは、都市閉鎖に反対するかのような印象を流している。都市閉鎖を続ける民主党州知事や市長を批判するツイートや発言を連発する。しかし、トランプが本当に都市閉鎖に反対なら、連邦政府として都市閉鎖に反対だときっちり表明すれば良い。州知事や市長が勝手にやる都市閉鎖策は無効だと宣言して政治的・法的に争えば良い。トランプはそれをせず、逆に、自分が任命したCDCなど米政府のコロナ担当部署が、各種の厳しい都市閉鎖的な諸策を進めることを許している。米政府がPCR検査を増やして第2波を演出するのも看過ないし推進している。トランプは、表向き都市閉鎖など厳しいコロナ策に反対する印象を流しつつ、実のところ部下に厳しいコロナ政策をやらせ、米国の多くの地域が延々と都市閉鎖を続け、大恐慌を悪化させるのを容認している。トランプは、表でコロナの愚策に反対しつつ裏で推進している。トランプと軍産の両方がコロナの愚策を推進している。欧州や日本などの同盟諸国に厳しいコロナ対策をやらせているのも、トランプと軍産の協調体制だろう。 (Dr. Fauci Warns "We Need To Hunker Down To Get Through This Fall And Winter Because It's Not Going To Be Easy") (新型コロナ集団免疫再論

コロナ危機は「危険な感染症が世界で流行し、米国が感染症対策と称する覇権行使の強化・世界的な有事体制の確立をやるべきだという話になる」という、軍産の覇権強化策としての「パンデミック」のシナリオに沿っている。コロナ危機はパンデミックのシナリオに沿っているが、やっている策は、米国と同盟諸国の経済を破綻させる都市閉鎖や、軍産のエージェントが世界各国に行けなくなる国際旅客航空便の停止など、米国覇権を自滅させている。なぜこうなっているかという疑問も、トランプらが軍産を乗っ取り、軍産の策であるパンデミックのシナリオを発動し、それを自滅的な具体策でやらせることで、トランプらがやりたい覇権崩壊や多極化につなげていると考えれば納得できる。 (12 Steps to Create Your Own Pandemic Or How to Turn a Harmless Virus into Boundless Profits for You and Your Friends) (コロナ危機による国際ネットワークの解体

裏の覇権自滅シナリオを書いているのはトランプ自身でなく、側近や知恵袋の誰かだ。ビルゲイツら、もともとのパンデミック推進派は、目くらまし用のピエロにされている。イラク戦争の時も、軍産のふりをした多極派のネオコンが立案し、軍産本流(中道派)のパウエル国務長官らはピエロにされ、ネオコンが埋め込んだ「イラク大量破壊兵器保有」の稚拙な捏造を国際社会に説明するのに苦戦させられていた。 (Bill Gates Slams FDA, Doubts Agency Can Be Trusted With COVID-19 Vaccine) (イラク戦争を乗っ取ったパウエル

コロナ危機の歪曲は、米欧を自滅させるだけでなく、中国を台頭させている。世界の主要な諸国の中で今年、プラスの経済成長になるのは中国だけだ。米日独など、あとの諸国は全部マイナス成長だ。米国のマイナスが特に大きくなりそうだ。米国が自国と同盟諸国に愚策をやらせて自滅させている。対照的に中国は、さっさと都市閉鎖をやめて経済を平常に戻し、経済成長を好転させプラスにした。これも、トランプの米覇権破壊・多極化戦略の「成果」だ。 (米中逆転を意図的に早めるコロナ危機) (中国が内需型に転換し世界経済を主導する?

新型コロナは中国の武漢で発祥した。この部分も、トランプが乗っ取った軍産にやらせた、もしくは軍産が中国潰しの策としてコロナを武漢で発祥させるのをトランプが黙認し、中国から世界に感染が広がるところで策を乗っ取った可能性がある。それらでなく、単に中国側の研究所員の過失だった可能性もある。コロナの発生経路は、武漢の野生動物市場で売られていた中型哺乳類からヒトに感染したという純粋な自然発生の経路ではないだろう。自然発生なら中国政府の責任がないので、そのように発表するはずだ。中国政府は一時、自然発生説を流布したが、その後止めている。世界から詳しく尋ねられると辻褄が合わなくなるからだろう。中国政府は、コロナの発生経路を不明にしたままだ。中国政府が認めたくない、責任重大な経路なのだろう。となれば、武漢のウイルス研究所からの漏洩が最も疑われる。 (武漢コロナウイルスの周辺

研究所からの漏洩の場合、純粋に研究所員の操作ミスだったのか、それとも米諜報界が武漢ウイルス研の要員を自分たちのスパイに仕立て、そのスパイに意図的なウイルス漏洩を引き起こさせたか、という2つの場合が考えられる。どちらにしても中国政府にとって不名誉なことなので発表されない。純粋な操作ミスの場合、SARS研究として実験室でコウモリから中型哺乳類に感染させたコロナウイルスを実験終了後に殺菌処理したのが不十分だった可能性がある。この例はSARSウイルス漏洩事件として、過去に北京の研究所で起きている。CIAやFBIなど米諜報界・軍産が黒幕の場合、中国のウイルス研究者のほとんどが米国の大学や研究所に留学した経験を持つので、米諜報界が米国に留学中の研究者をたぶらかしたり脅したりして陥れ、スパイに仕立てることが可能だ。 (新型ウイルスとトランプ

新型コロナが武漢ウイルス研から漏洩したとして、それが純粋な操作ミスの結果であるなら、コロナの発祥時には米国のトランプや軍産と関係ないことになる。トランプや軍産は、中国側の過失で発祥した新型コロナが中国から世界に広がる際に、わざと稚拙な都市閉鎖などを展開し、コロナが中国でなく米欧を自滅させるよう設定したことになる。そうではなくて、米諜報界が武漢ウイルス研究所の中に仕込んだスパイがウイルスを漏洩させてコロナ危機を起こしたのなら、最初から軍産やトランプの謀略だったことになる。どちらだったのかは、多分永久にわからない。どちらであっても、コロナ危機の全体構図としては大した違いでない。 (ただの風邪が覇権を転換するコロナ危機

コロナの有事は、中国の習近平主席が自分の独裁を大幅に強化する好機を与えた。習近平はコロナ危機を使い、中国での独裁を強化しただけでなく、米国などのマスコミ記者や外交官らの中国駐留を制限することで、中国の状況に関する情報が世界に漏れにくい状態を作り、世界から監視・邪魔されずに、中国と一帯一路の強化をやれるようにした。天安門事件など、米欧が中国をへこます局面は、米欧が中国を監視していることで可能になった。コロナは米欧から中国への監視を外し、中国の台頭を見えにくいものにしている。世界が監視していない中で、これから中国がさらに台頭していく。実態が見えにくいので、米欧は中国への抑止策がとりにくい。 (米欧日の儲けを中国に移転するトランプの米中分離) (China Backslides on Economic Reform

しかもトランプはコロナ以外の経済の部分で、稚拙で過激な中国敵視策を加速している。これもネオコン的だ。中国を敵視して弱体化することはマスコミなど軍産の目標だが、トランプは中国敵視をやっているのでマスコミが批判しにくい。トランプの中国敵視は中国を強化する。その点をマスコミが批判しても、難しい政策論になるので効果がない。トランプは、軍産の策であるパンデミックや中国敵視を稚拙にやり、これを恒久化することで、米国覇権の自滅と中国の台頭、覇権の多極化を推進していく。世界的なコロナ危機はまだまだ続く。

 

 



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菅は、米国べったりではなくなる

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安倍から菅への交代の意味

2020年9月19日   田中 宇

9月16日、安倍政権が終わり、菅政権が組閣された。安倍から菅への交代はなぜ起きたのか。「安倍の持病が悪化」が今回の交代の本当の最大要因であるとは、どうも私には思えない。国際政治的に辞任のタイミングが絶妙だからだ。安倍はこれまで、トランプの米国が中国敵視を強める中で、対米従属を続けながら中国にも擦り寄って日中関係を強化するという微妙なバランスの戦略をやってきた。これからトランプが再選されて中国敵視をさらに強めそうな中で、安倍はもう米中へのバランス戦略が続けられなくなったので辞めることにしたとか、そういう話でないかとこれまで考えてきた。 (安倍辞任の背景にトランプの日米安保破棄?

今回の分析は、それと似ているが少し違う。安倍は8月28日、辞任していくことを表明するとともに、新型コロナウイルスに関する感染症法の扱いを、これまでの1-2類相当から、5類への格下げ、もしくは法指定自体から外すことを検討すると発表した。感染症法の扱いは、新型コロナが「大変な病気」であることの法的根拠だ。分類的には、1類(エボラ出血熱、ペストなど)が最も重篤で、5類(季節性インフルエンザなど)が最も軽い。 (新政権はまず新型コロナ「指定感染症」の解除を

安倍政権は今年2月1日、中国が1月23日に武漢市を都市閉鎖してコロナ危機が始まった直後に、コロナを感染症法の1-2類相当に指定した。日本政府はコロナに関して、従来は1類にもなかった「外出自粛要請」などの新規制を盛り込んでおり、見方によってはコロナは「超1類」だ。コロナを感染症法1-2類に指定したことで、日本政府はPCR検査の陽性者を全員、入院させねばならなくなった。陽性者の多くはウイルスが咽頭に付着しているだけで感染しておらず、実のところ入院の必要がないが、付着しているだけの人と感染した人を見分ける方法がない。感染しても、その多くは生来の自然免疫によって治癒する軽症者だ。ごく一部は重症化や死亡するが、その比率は季節性インフルエンザより低い。要するに新型コロナは「インフル以下・ふつうの風邪相当」の病気である。感染症の指定など必要ない。 (コロナのインチキが世界的にバレていく) (ただの風邪が覇権を転換するコロナ危機

しかし、そうした実態がかなり確定的にわかってきたのは6-8月ぐらいになってからだ。初期の2-4月ごろは、米国や中国、WHOや国際マスコミなど(要するに軍産エスタブ??。国際筋)が新型コロナについて大騒ぎし、重症者がどんどん出ている感じも喧伝されていた。日本政府は、米国やWHOなど国際筋からの圧力で、新型コロナを感染症法の1-2類相当に指定した。だが、PCR検査を広範に実施すると、陽性者の大半に当たる何の危険性もない「付着者」や、付着すらしていない「コンタミネーションによる擬陽性者」などを強制入院させねばならず、無意味に医療体制がパンクする。(PCR検査は、検査室内で検体の試験管の開閉時にウイルスが空気中に漂い出し、その後の他の人の検体に入って擬陽性の反応を出す「コンタミネーション」が起きやすい。検査を増やすほどコンタミが頻発する) (Why the CDC botched its coronavirus testing) (愛知県 11日に感染確認と発表の24人 実際には感染なし) (6 Ways to Minimize Contamination during PCR

PCR検査に依存するのは危険な愚策なのに、WHOや米政府などの国際筋は、日本を含む世界中に大量のPCR検査をやらせようとし続けた。日本政府は2-3月に、国際筋からの圧力を受けつつも、できるだけ国民にPCR検査を受けさせないやり方でのり切ろうとした。だが3月中旬以降、国際筋は、店舗や企業の強制閉鎖、市民の外出禁止など強烈な都市閉鎖をコロナ対策として世界に強要し、米欧など多くの国が強烈な都市閉鎖を開始し、世界を大恐慌に陥らせた。日本政府は、国民にPCR検査を受けさせず、都市閉鎖もやらずにこっそり繁栄し続ける意図的な無策をやろうとしたが、国際筋から見とがめられ、都市閉鎖をやれと3月末に強烈に加圧された。日本政府は結局4月初めに、都市閉鎖より一段軽い「非常事態宣言」を発令し、禁止でなく自粛要請を出した。 (日本のコロナ統計の作り方) (集団免疫を遅らせる今のコロナ対策

日本政府は当初から、経済を大恐慌に陥らせる都市閉鎖や非常事態宣言を出したくなかったはずだ。当初の意図的な無策から、非常事態宣言へと急転換した3月後半の日本政府の動きを見ていて、これは米国からの圧力だろう、トランプが安倍に電話してきて「ロックダウンをやれ」と声高に命じたのだろうと当時の私は感じた。トランプから安倍への電話ぐらいしか、日本政府がわざわざ経済を自滅させる非常事態宣言の政策をやらざるを得ない状態にさせられる理由として考えられない。 (ウイルス統計の国際歪曲

3月下旬に「ロックダウン」という、日本で初耳の、しかし米国で数日前から言及され出した言葉を記者会見で初めて頻発し始めたのは、安倍でなく、都知事の小池だった。安倍は、トランプから強要されたロックダウン的な非常事態宣言を出すにあたり、愚策とわかっていたので、自分でやらず、現場の東京都の知事だった小池にやらせたのだった。トランプは安倍に「ロックダウンをやれ」と言ってきたので、安倍は誰かに「ロックダウン」という言葉を頻発させる必要があった。そうしないと「非常事態宣言=準ロックダウン」という図式を米国にわかってもらえず、トランプの命令に従ったことにならない。安倍周辺は「小池が言うことを聞かずコロナ対策で独走している(愚策は小池が勝手にやっていることで安倍の責任でない)」とマスコミに漏らして書かせる茶番劇までやっていた。マスコミは当時「小池が安倍を追い出して次の首相になる」とまで書いていたが、小池は今回の首相交代劇で全く出てこない。

などなど、当時を思い出すと、安倍はトランプに加圧され、愚策なのでやりたくないロックダウンを薄めた非常事態宣言の策をやらされていた。その安倍が8月28日、辞任表明の同日に、コロナが大変な病気であるという法的根拠の根幹にある1-2類相当の感染症指定を、自分が辞めた後の日本政府が見直していくと発表した。新型コロナを、インフルエンザ並みの5類の指定に格下げするか、もしくは新型コロナの感染症指定そのものを解除する。これは、米国から加圧されていやいやながらやっていた「コロナが大変な病気なので大恐慌になっても都市閉鎖をやる」というインチキコロナ危機の愚策を、安倍が辞めた後に日本がやめていくということだ。

日本政府が感染症指定の格下げや解除を実施する表向きの理由は「軽症者や無発症者で病院がパンクするのを防ぐためであり、新型コロナがインフルや風邪並みの大したことない病気だということではない」となっている。しかし、新型コロナが大変な病気なら、大半の人が軽症や無発症でも、感染症指定の格下げや解除を検討するはずがない。世界的に、新型コロナで重症化・死亡する人の多く(ほとんど)は他の持病などによって免疫力が低下した状態で、コロナを「大変な病気」と思わせるために、持病で死んだ人がコロナで死んだと診断されている。コロナの「大変さ」は、世界的に誇張されている。軍産エスタブがコロナの重篤性を誇張し、トランプも(覇権放棄や多極化策に転用できるので)それに便乗して、安倍の日本にも圧力をかけて愚策な経済閉鎖をやらせてきた。 (Flu is killing more people than Covid19

日本は、安倍の辞任とともに、米国主導のコロナ危機の誇張に同調するのをやめていく。日本の権威筋やマスコミは、今後しだいにコロナの重篤性を誇張しなくなっていくだろう。日本が米国主導のコロナの誇張に乗らざるを得なかったのは、トランプが安倍にガンガン電話してきて、ロックダウンをやれ、国内旅行の奨励などまかりならん、などと命令し続けたからだろう。トランプ就任後、日本の対米関係は安倍とトランプの親しさに全面依存してきた。トランプの登場で、それ以前の米国と日本など同盟諸国との親密さの経路だった国務省・外務省系の軍産ルートは消滅した。安倍が辞めたら、日本は米国の権力中枢との親しい連絡ルートがなくなる。 (従属先を軍産からトランプに替えた日本

安倍が長期政権を維持できたのはトランプとの親密さのおかげだ。だが、コロナや中国敵視、軍事費負担増など、安倍の日本に対するトランプの要求が激しくなり、安倍は、自分とトランプの親密さが日本の国益になっておらず、トランプ再選後はそれがさらに強まると考え、日本とトランプの間のパイプを消失させるために首相を辞めることにしたのでないか。

日本政府は、11月の米選挙でトランプが再選される前の10月中に、新型コロナの感染症指定の格下げないし解除を決めてしまう。トランプが再選されて(もしくは可能性が低いがバイデン政権ができて)日本に「コロナでの再度の大騒ぎ」を強要してきても、そのころ日本では、新型コロナがインフル並みかそれ以下の病気と正しく見なされる新体制になっている。日本人はまだ大半がマスクをしているだろうが、店舗などは今より繁盛に戻る。トランプは、日本に文句を言ってくるかもしれないが、日本側は敏感に反応しなくなり、馬耳東風な感じが強まる。マスコミは、日米関係が悪化したと菅を批判するかもしれないが、同時に選挙後の米国は、トランプ敵視の極左による暴動激化など混乱の拡大が予測され、覇権国としての当事者能力が低下し、対米従属だけが最良策と見なされなくなる可能性も高い。

コロナ危機に関しては欧米で唯一、都市閉鎖をやらず、軍産傀儡のマスコミから誹謗中傷されていたスウェーデンが、最近、自国のコロナ政策が正しかったと主張できるようになっている。マスコミや権威筋によるコロナ危機の誇張の方がウソだったのだと、世界的に言いやすくなっている。欧米各地で、コロナ危機の扇動をウソだと見破って主張する市民運動が起きている。日本がコロナ危機の誇張をやめていくことは、世界的な風向きの変化に合わせたものだ。

安倍は、軍産と戦うトランプからの入れ知恵で、国務省など軍産とのつながりが強い外務省を政権中枢から外し、代わりに経産省を外交面でも重用していた。菅は、経産省を外し、財務省を重用しそうだと言われている。菅は、財務省が強くやりたがっている消費増税をやるとも言っている。菅は、財務省に引きずられる演技をすることで、日本は税収を増やしたい財務省に握られているので国内経済を成長させねばならず、そのために経済閉鎖などコロナ危機の誇張に乗れないのだと言えるようにしているのかもしれない。

また菅は、日銀との連携を強めるとも言っている。これは、米国の株価を下げたくないトランプのために、菅が日銀に以前のような積極的なQEをやらせて米国の株や債券を買い支えるという意味だろう。すでに日本は、中国が売り払った分の米国債を買い支え、再び中国を抜いて世界最大の米国債保有国になっている。日本がコロナの誇張策に乗るのをやめても、米国の株や債券を買い支えれば、トランプは日本を批判しないというのが菅の策略かもしれない。米日欧の中銀群によるQEは、米国中心の金融バブルを延命させるだけで、最終的にはドルの崩壊、基軸性の喪失になる。米国債もいずれ金利上昇してしまう。QE米国債の買い増しは悪い策だ。しかし短期的には、どうせ破綻するなら延命できる限り延命させ続けるというのもありだ。

日本のトランプとの唯一のパイプだった安倍の辞任により、日本は自分から米国と疎遠にする道を歩み出している。菅は、米国と疎遠になる分、中国を重視する傾向になる。これは、菅でなく石破などが首相になっても同じだった。トランプは2期目に中国敵視を強めるが、日本はそれにあまり乗らない。乗る演技をするぐらいだ。

そういう時期に、英国が日本に近寄ってきて日英貿易協定を結び、TPPにも入ってくる。英国や独仏、豪州など従来の米同盟諸国は、トランプが2期目に入って覇権放棄や同盟破壊・多極化をやり続ける中で、米国抜きの「西側諸国」を形成していかねばならなくなる。早くそれをやらないと、東欧や韓国、東南アジアなど、西側だけど中露の近くにある諸国が、中露側にどんどん絡め取られ、西側の範囲がどんどん狭まる。西側が米国抜きで中露と敵対する選択肢はない。勝てないからだ。西側諸国が、米国と共倒れで分解・弱体化していきたくないのなら、中露と協調しつつ、西側を維持していくことが必要だ。その意味で、英国はすでに、米覇権主義の勢力である軍産と一線を画しているともいえる。日本も、安倍の辞任により、軍産や、米覇権への唯一絶対の従属姿勢から離脱していくことになった。 (UK Strikes Historic Free Trade Deal With Japan As Brussels Threatens To Abandon Talks

菅は、今後も軍産傀儡の残骸から出てきそうもないマスコミから批判されつつ「私は安倍さんのようなトランプとのパイプを持っていないので」と言いつつ、日本を米国から疎遠にしていく汚れ役をやるつもりなのだろう。菅でなく石破が首相になっていたら、トランプと大喧嘩して日米決別みたいな展開があり得たが、戦後の徹頭徹尾の対米従属があっただけに、日米の喧嘩別れに耐えられる日本人が少ない。そのためにも、まず菅が首相をやって、受動的に対米疎遠を進めるのが良い。いきなりの対米自立は無理だ。それは、08年の小沢鳩山が国民の広範な理解を得られず失敗したことが示している。日本人(やドイツなど対米従属諸国の人々)は、対米従属という「牢獄」に、自ら75年間安住してきた。急に自由に生きていいよと言われても、牢屋の方が居心地が良いですと答えるだけだ。トランプは牢屋を壊す。だから看守役の軍産マスコミはトランプを敵視する。

菅は、ロシアや北朝鮮との関係改善も視野に入れているようだが、それらは菅に向いている仕事でない。安倍は、かなりの強権を得ており、軍産傀儡の外務省を外したのに、ロシアや北朝鮮との関係改善をやれなかった。その理由は、自民党や保守派の中にロシアや北を毛嫌いする冷戦体質が根強く残っているからだ。米国の覇権が強く見えている限り、米国と一緒にロシアや北を敵視するのが良いと考える冷戦体質からの離脱が難しい。ロシアや北と和解するには、かつての小泉純一郎みたいに「自民党をぶっ壊す」と宣言せねばらない。菅は、そういうのに向いていない。しかも小泉自身、宣言したけど道半ばで終わっている(当時はまだ米国が強かった)。菅の役目は、日本は米国との同盟関係に安住できなくなったと、日本国民に納得させていくことだ。日本人が対米従属をあきらめた後、自民党(の冷戦体質)をぶち壊してロシアや北と関係改善していく次の指導者が出てくる。

 

 



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5G 反対同盟

楽天撤退>
東村山市基地局問題
住民が楽天を撤退させる―
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東京都東村山市廻田に楽天が予定していた5G基地局設置計画が、住民の反対で中止に追い込まれた。
住民らは、今月4日に公民館で電磁波問題についての学習会を開催。
その後、基地局設置予定地を中心とするエリアで署名活動を展開した。
約100筆の署名を集めて、楽天に提出したところ、楽天は計画を断念した。

5Gの時代へ向けて、電話各社はあちこちで基地局設置を進めている。
それに伴いトラブルも多発している。
電話会社の言い分は共通していて、自分たちは総務省の電波防護指針を守ってビジネスを展開するので
電磁波による人体影響は心配ないという無責任なものである。

しかし、総務省の電波防護指針は、1989年に決められたもので、それ以前の古い研究データに基づいた
ものである。その後の研究成果はまったく反映されていない。
そのために、遺伝子毒性などの「非熱作業」を考慮に入れない危険な値のレベルだ。

ちなみに欧州評議会の勧告値が、0.1μW/cmであるのに対して、
総務省の基準値はその1万倍も緩い1000μW/cmとなっている。

◆5G 反対同盟 公式HP
http://reside-ex.com/Lbe1634/37721

いきのびるけいえい

  Enviro-News from Junko Edahiro


                      No. 2768 (2020.09.13)

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最初にうれしいお知らせ。9月25日に開催する幸せ研のオンライン読書会は、『脱プラスチックへの挑戦』を取り上げます。著者のNHKの辣腕プロデューサー、堅達京子さんが前半のみですが、読書会に参加してくれることになりました! 番組やこの本の取材を通じて見えたこと、考えたこと、伝えたいことなどを直接聞くことができます。ぜひお見逃しなく!

詳細とお申し込みはこちらをご覧下さい。
https://www.ishes.org/news/2020/inws_id002819.html


さて、幸せ研こと幸せ経済社会研究所では、月英語のニュースレターを世界に向けて発信しています。バックナンバーはこちらからご覧いただけます。
https://www.ishes.org/en/happy_news/jpn.html


今月下旬に発信予定の記事を研究員の新津さんが書いてくれました。コロナ時代の今だからこそ、ますます大事になる考え方と実践だと思い、メールニュースで日本語原稿をご紹介します。


~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~

逆転の発想で持続可能なビジネスを:京都・佰食屋の取り組み

●「1日100食しか売らない」ビジネスモデル

新型コロナウィルス感染拡大の影響によって、多くの飲食店が経営の危機にあります。日本では強制的なロックダウンはいまのところ行われていませんが、都市部を中心に、国や都道府県から「休業要請」や「営業時間短縮要請」が、たびたび出されています。

お店としては、休業しても家賃や人件費などの必要経費がかかります。また、営業を再開してもお客さんが十分に来なければ、経営は厳しいままです。観光地にある飲食店の場合、観光客が減ることは、そのまま経営の悪化に直結します。新型コロナウィルスの影響が長期化することが懸念される中で、今までのビジネスモデルが通用しなくなってきていることは明らかです。

ではどうすればよいのでしょうか。この問題を考えるためのヒントが、京都市にある国産牛ステーキ丼専門店「佰食屋」が提案するビジネスモデルにあります。この店は店名の通り、「1日100食しか売らない」ことを目標にしている飲食店です。一食でも多く売ることを目指すのが普通ですから、この視点は画期的です。

もちろん、100食しか売らないので、大きな儲けはでません。でも「100食しか売らない」と決めているからこそ、食材のムダもでませんし、従業員は残業なしで家に帰ることができます。日本の飲食業界の現場では残業が当たり前であるため、「残業がない」というだけでも画期的です。

佰食屋がオープンしたのは2012年。開店当初はオーナーの中村朱美さんの家族でお店を回していましたが、現在では1店舗に5人のスタッフがお店に入るスタイルで経営しています。「100食しか売らない」というビジネスモデルは注目を集め、オーナーの中村さんが『売上を減らそう』というタイトルの書籍を2019年に出版するなど、メディアでも繰り返し取り上げられています。今月号のニュースレターでは、佰食屋の取り組みや考え方を、書籍の内容をもとに紹介します。

●佰食屋の工夫
○自信のメニューで勝負
佰食屋本店で提供しているメニューは、3つの料理だけです。「国産牛ステーキ丼」「国産牛おろしポン酢ステーキ定食」「国産牛100%ハンバーグ定食」です。看板メニューの国産牛ステーキ丼は、誰にでも自信をもって提供できる自慢の一品ですが、このメニューはオーナーの旦那さんが佰食屋のオープン前から作っていたものだそうです。佰食屋のメニューは、ステーキ丼を中心に3つしかないからこそ、できる工夫がたくさんあります。

一般的にブロック肉から食べるために取りだされる部分は75%程度ですが、佰食屋では、90%が食材として使われています。それはステーキに使わなかった部分をミンチにしてハンバーグにしたり、一般的には捨ててしまう部位を煮込んでソースに利用したりすることで、余すことなく利用しているからです。

また、毎日仕入れてすぐに調理するため、乾燥して捨てる部位はほとんどないそうです。「100食しか売らない」と決めていれば、お肉もご飯もそれ以上準備する必要はありません。余分に準備しなければ余ることもないのです。そのため、佰食屋の厨房には、なんと冷凍庫がないそうです。

とことんシンプルにすることで、100食でも利益を出す工夫がここにあります。

○広告をしない。家賃にもお金をかけない
佰食屋は広告にお金を一切使っていないそうです。でも、美味しいものを食べればお客さんがSNSに投稿してくれます。この口コミがお店の広告になっています。料理に絶対的な自信があるからこその戦略です。

また、佰食屋の店舗は駅からは近いものの、表通りからは外れていたり、二階だったりと、少し不便な場所にあります。その理由は、そうした物件は家賃が安いからです。

一般には、表通りの1階にある店舗のほうが好まれますが、それはお店の前を通りかかったお腹をすかせたお客さんが、お店を見つけて入ってくれるためです。でも佰食屋のように、SNSで評判をみて、お客さんが来てくれる場合はどうでしょう? 表通りから1本入った路地にあるお店でも、ホームページで地図をチェックして来てくれます。そうだとすれば、家賃が安い物件のほうが、それだけコストを抑えられるため、有利になります。このように経費を最低限にすることも、100食で利益を出す工夫です。

オペレーションのコストを抑え、100食しか売らない代わりに、最高の食事を提供するというこの仕組は、従業員にとっても目標が明確になる上、残業をしなくてもよい仕組みでもあります。佰食屋の営業時間は11時から14時半(ラストオーダー)までです。この時間の営業であれば、どんなに遅くても17時45分には帰ることが出来ます。「早く帰れる」は、お金と同じくらい魅力的なインセンティブだと中村さんはいいます

●さらにミニマムなビジネスモデル「佰食屋1/2」
でも、「一日100食も売れない!」ということもあるでしょう。特に、コロナの状況下では100食を売ることは、多くの飲食店にとって大変です。佰食屋では、2019年から「佰食屋1/2」の経営を始めています。こちらも名前の通り、100食の1/2、つまり50食を売り上げればなりたつビジネスモデルです。

佰食屋本店では20食あたり1人の従業員という計算で、1店舗5人の従業員を店舗に配置していますが、「佰食屋1/2」では2人でお店を回すことを前提にしています。夫婦ふたりでも切り盛りができるという意味でも、ミニマムモデルです。1食1000円で50食売れば、一日の売上は5万円です。これは月にすると125万円の売上になります。家賃や食材費といった経費を差し引いて50万円残るようにすれば、夫婦二人で一家の年収は600万円になります。

オーナーの中村さんが「佰食屋1/2」を考えたきっかけは、2018年の災害でした。この年京都では、6月の大阪府北部地震にはじまり、7月の西日本豪雨9月の台風21号の上陸と、連続して災害に見舞われました。日本屈指の観光地である京都でも観光客が減り、佰食屋でも100食を売り切ることが難しい状況になりました。ただ、客足が落ちているときでも、50食は売り切ることが出来たことから、「50食売れば成り立つ」仕組みを考えたそうです。

●ウィズコロナの時代のヒント
これまでのビジネスは、ひたすら売上を上げることを目指してきました。経営がうまく行かない場合も、「どうすれば売上が伸びるのか」を考えます。飲食店なら1食でも多く売るために、ランチ営業だけではなく夜まで営業時間を伸ばす。100食売り切ったら、今度は150食売ることを目標にするといった具合です。

そうすれば売上は伸びるかもしれません。でも、「少しでも多く売るために」食材を多めに仕入れることで無駄が出ます。また、従業員は接客中には翌日の仕込みができないため、残業時間が長くなるでしょう。売上を上げることで生じるこうした副作用には、これまではあまり注目されてきませんでした。

でも、コロナの状況が長引き、コロナ以前のように観光客や買い物客でビジネスを回すことが難しいとしたら、どうでしょう? 少量を売ることで回していける仕組みのほうが持続可能性は高いのではないでしょうか。また、佰食屋のビジネスモデルは、フードロスを防ぐことができる、従業員が長時間労働をしなくてもすむなど、国連のSDGsの目標達成にもつながります。

コロナの状況下で、「今までの社会や生活の仕組みを見直す必要があるのではないか」という声が多く聞かれます。ただ、どのように変えればよいのかはよくわからないのが現状でしょう。その中で、佰食屋の「売上を伸ばさない工夫をする」ビジネスモデルは、ひとつのヒントを与えてくれるのではないでしょうか。


参考文献
中村朱美(2019)『売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放』ライツ社
甲斐かおり(2019)『ほどよい量をつくる』インプレス


~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~

参考文献にある甲斐さんの『ほどよい量をつくる』も、幸せ研の読書会で取り上げさせていただき、ご本人にお話しいただいたことがあります。非常に刺激的で楽しい時間でした!

これまでの100回の読書会でどのような本を読んできたかにご興味があれば、こちらをご覧ください~。
https://www.ishes.org/news/2020/inws_id002811.html

次の100冊も、自分たちが幸せ・経済・社会を考えつつ、望ましい持続可能で幸せな世界や地域をつくるために、読み、学び、考え、議論していきたいと思います。ご興味のあるテーマがあったら、ぜひご参加下さい!
https://www.ishes.org/reading/


えだひろのセミナー

   Enviro-News from Junko Edahiro


                      No. 2766 (2020.09.07)

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「エルネオス」というビジネス雑誌で、数年にわたって『枝廣淳子の賢者に備えあり』というコラムを書かせていただいてきました。
https://www.es-inc.jp/library/writing/sonae.html

「エルネオス」最終号となる9月号への寄稿を、編集部の快諾を得て、転載します。


~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~


しなやかに立ち直る 暗闇の先への指針

気候危機への対処も十分にできていないうちに、世界は新型コロナウイルス危機に巻き込まれました。出口の見えない真っ暗なトンネルの中にいるようです。果たして出口はどこにあるのでしょうか。それまでにどれだけの被害や損害が出てしまうのでしょう。感染防止は徹底的にすべきですが、一方で経済活動を再開しないと、事業者や地域経済・日本全体の土台が崩れてしまいかねない……。

いうまでもなく、私たちの願いは、人類と社会と暮らしがずっと続いていくこと、つまり持続可能性です。「有限の地球の上で無限の経済成長を続けようとすることは持続可能ではない」ことを、システム思考をベースとしたシミュレーションで明らかにし、世界に警鐘を鳴らした『成長の限界が最初に出版されてから約50年。私たちはいまだに持続可能性の難題に直面しています。

この『成長の限界』の著者、デニス・メドウズとドネラ・メドウズが立ち上げた、世界の研究者・実践家のネットワークがあります。私はこのグループに20年ほど前から参加し、『成長の限界の続々編である『成長の限界 人類の選択』を翻訳しました。

同書は、多くのデータやシミュレーションを展開して成長の限界について解き明かしていますが、最終章では「では、どうしたら持続可能性をつくり出せるのか」を「5つの大事なこと」として提示しています。コロナウイルス危機や気候危機に懸命に対処しようとしている皆さんに贈ります。

(1)ビジョンを描くこと

ビジョンを描くとは、想像すること。「何を本当に望んでいるのか」を、まずは大まかに、そして細かいところまで思い描いていきます。思い描くのは、あくまでも「自分が本当に望むこと」です。人からそう望むようにと教えられたことや、それで我慢することに慣れてきたことではありません。コロナ危機の向こうに、どのような事業や暮らしや地域を望んでいるのでしょうか。テレビや人々の論説ではなく、自分の心の声に耳を傾けましょう。

(2)ネットワークをつくること

ネットワークにはさまざまな形態があります。人生のある側面についての関心を共有する人々が、連絡を取り合い、データや手法、アイデアや励ましを送り、お互いを尊敬し、支え合っています。権力や義務、物質的なインセンティブなどではなく、共有されている価値観や、「ひとりではできないこともみんなでやればできる」という認識でつながっている人々です。ネットワークに参加していることで、「自分ひとりではない」と思うことができます。コロナ危機や気候危機対して、同じような思いや認識の人々がきっといます。ネットワークの力を活用できないでしょうか?

(3)真実を語ること

嘘は情報の流れを歪めます。情報の流れが嘘によって歪んだり途切れたりすると、システムはきちんと機能できなくなります。他の人に話をする時は常に、嘘に立ち向かい、真実を断言するよう、努力することが大事です。

(4)学ぶこと

持続可能な世界をつくり出すために「行う」べきことはたくさんあり、そのために学ぶべきこともたくさんあります。学ぶとは、ゆっくり進み、物事を試し、その行動がもたらす影響に関する情報を集めようとすることです。誰もが、間違いを犯し、その間違いについて真実を語り、そして先に進んでいくことによって学ぶのです。

(5)愛すること

自分自身もほかの人たちも、同じ社会の一部だと考えるようにならないかぎり、うまくいかないでしょう。そのためには、思いやりの気持ちが必要です。自分のまわりにいる人たちだけではなく、遠くに暮らす人々や将来世代への思いやりを持てるようになること

明けない夜はありません。大変なことがあっても、しばし落ち込むことがあっても、しなやかに立ち直る強さが私たちには備わっていると信じています。頑張りましょう!


~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~

この「5つの大事なこと」を示してくれたドネラ・メドウズさんは、システム思考の第一人者です。残念なことに、私は直接お会いする機会はなかったのですが、何冊か翻訳させていただく中で、その教えを伝える役割を務めています。

『世界はシステムで動く――いま起きていることの本質をつかむ考え方』
ドネラ・H・メドウズ(著)枝廣淳子(訳)小田理一郎(解説)英治出版
http://amzn.to/1GVVHdC

システム思考を日本に広げたい!とチェンジ・エージェント社を仲間と立ち上げ、自分自身でも大学院大学至善館で教えています。コロナ禍で集合研修が難しくなっていることから、この夏、システム思考の入門編の連続セミナーをオンラインで開催し、好評を得ました。

つづいて、中級編として、システム原型とレバレッジポイントについて学ぶオンラインセミーを開催します。システム思考の基礎を学ばれた方ならどなたでも参加できます。また、入門編の音声講座を自学自習していただいて参加することもできます。ぜひご活用下さい!

~~~~~~~~~~~~~~ここからご案内~~~~~~~~~~~~~~~

9月9日(水)スタート: オンラインシステム思考セミナー(中級編・5回連続)
https://www.es-inc.jp/seminar/2020/smn_id010657.html


システム思考の基礎を身につけたら、次は「よくあるパターン」(システム原型)を学びましょう。システム思考では、古今東西を問わず、よく見られるシステム構造のパターンを「原型」と呼び、これまで10数種類の原型が見いだされています。セミナーでは、このうち、本当によくあるパターンを数種類学び、そのパターンの罠に陥らない、または脱出するための「システムの鉄則」も学びます。

システム原型をいくつか知っているだけでも、「あ、この状況はあの原型かも」と、システム構造を見抜く手がかりになります。よくある罠に陥らずにすむ知恵を身につけることができます。

また、システム思考を学ぶのは「変化を創り出す力を身につけるため」ですよね。システム思考を用いて、構造がある程度わかってきたら、次は「どうやったら変えられるか?」です。構造がわかっただけでは変わりません。思いつきで対策やプロジェクトを行っても効果的な変化を生み出すことは難しいでしょう。

システムに効果的に介入する上で重要なポイントを「12のレバレッジポイント」としてまとめたものがあり、具体的にどうしたらよいか?というときに、非常に役に立つ枠組みとなります。「この対策はやりやすいけど効果は薄いよ」「ここの介入点を押してみよう」という議論ができるようになります。

セミナーでは5回にわたり、システム原型とレバレッジポイントについて取り上げ、状況を構造としてシステム思考的にとらえ、さらにその理解をもとに効果的な変化を創り出す方法について学びます。中級編ですが、わかりやすくお伝えしますので、基礎編・入門レベルのシステム思考を身につけられた方でしたら、心配なくご参加いただけます。

さらに楽しいシステム思考の世界にぜひ!


第1回 2020年9月9日(水) 19:30~21:00
    システム思考のおさらい、システム原型と鉄則その1

第2回 2020年9月16日(水) 19:30~21:00
    システム原型と鉄則その2~5

第3回 2020年9月23日(水) 19:30~21:00
    レバレッジポイントとは、「12のレバレッジポイント」を学ぶ

第4回 2020年9月30日(水) 19:30~21:00
   「12のレバレッジポイント」を学ぶ

第5回 2020年10月7日(水) 19:30~21:00
    システム原型とレバレッジポイントを用いて、構造を見抜き、変化を創り出す

※各回、講師の解説とグループでの対話を行います


■定員:特に制限を設けておりませんが、本シリーズの基礎編、またはそれと同程度のシステム思考の基礎を身につけられた方向けセミナーとなります。(基礎編は今からでも音声受講で学んでいただくことが可能です。

★この機会に基礎編(5回)を音声受講で学んでみませんか★
=「基礎編音声受講について」=

2020年7月から8月にかけて5回にわたりお届けした「オンラインシステム思考セミナー(基礎編)」を、この機会にあらためて学びたい方は、ぜひ音声受講をご活用ください。
ご購入いただいた方には、5回分の講師の音声(mp4)と資料(PDF)をダウンロードいただけるよう、ご案内をさせていただきます。