しあわせ けいざい

  Enviro-News from Junko Edahiro


                      No. 2780 (2021.02.23)

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10年前の2011年1月に幸せ経済社会研究所(幸せ研)を立ち上げました。[enviro-news 1904] 「幸せ経済社会研究所」を設立しました~設立記念シンポジウムのご案内 (2011.01.28) では、以下のようにその思いをお伝えしています。


~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~


今年最初のメールニュースで「あらゆる環境問題の根源・原動力である「本丸」にいよいよ切り込みます」と宣言していました活動を、いよいよ本格的に始めることにしました。

そのための基盤として「幸せ経済社会研究所」を設立し、活動を始めました。

設立の思いを以下にご紹介します。3月4日に「幸せ経済社会研究所設立記念シンポジウム」を開催します。よろしければぜひおいでいただき、この時代の大きな本質的な課題について一緒に考えてみませんか。


これまで、世界の大部分では、経済成長はなくてはならないものだと(無意識・意識的に)考えられてきました。しかし、人口や経済の成長がもたらした温暖化をはじめとする環境問題の影響が明らかになるにつれ、“経済成長”についてもう一度しっかり考えようという動きが盛んになってきました。

・経済成長とは何なのか?
・その果たしてきた役割とは?
・経済成長が生み出してきたものは何か、引き起こしてきた弊害は何か?
・経済は無限に成長できるのか? どこまで成長できるのか?
GDPは実際には何を測っているのか?
・社会の進歩や人々の幸せはどうやって測ることができるのか?

地球温暖化生物多様性の減少も、問題の「症状」のひとつです。こうした多くの問題を引き起こしているのは、有限の地球のうえで、無限の経済成長を求める構造であるという認識が広がりつつあります。現在のかたちでの経済成長は真の幸せにはつながらないという認識や、経済成長を前提としない幸せのあり方を模索する動きが盛んになっています。

一方で、現在の社会や経済の構造が“成長”を基盤としているかぎり、経済成長をやめることは考えられないという考え方もあり、現状ではほぼすべての政府が「経済成長」「GDPの成長」を国の政策の基盤に置いています。

「現在の経済・社会システムの中では経済成長を続けないと雇用や生活が不安定になってしまう」一方、「地球の資源やエネルギー、CO2吸収源などの限界を考えれば、永遠に経済成長を続けることは不可能である」という状況は、「経済成長のジレンマ」と呼ばれています。

近年サルコジ仏大統領の諮問によりGDPが経済指標として適切であるかを問い直す委員会の報告が出され、英国政府の持続可能な社会委員会からも「成長なき繁栄」レポートなどが出されるなど、政治的にも大きく取り上げられるようになってきました。研究者の間でも、「GDP以外の指標づくり」や「脱経済成長」(de-growthの研究が盛んに行われるようになっています。

日本でもこのテーマについて研究し、国内外に発信する機関が必要との思いから、このたび有限会社イーズは環境NGOジャパン・フォー・サステナビリティとともに、「幸せ経済社会研究所」を設立することになりました。

「社会や経済を不安定にすることなく、どう地球の限界と折り合いをつけ、真に幸せな社会を築いていくか」「社会の真の進歩や幸せを何によって測るのか」は、今後の政府、自治体、企業をはじめとするあらゆる組織、そして私たち一人ひとりにとって避けることのできない課題です。

「幸せ経済社会研究所」はこのチャレンジに正面から向き合い、調査研究/情報発信/世論形成/対話/世界の動きとのネットワークづくりといった活動を展開していく所存です。


~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~


10年たった今も同じことを言っているなあ(^^; 

幸せ研をベースに、「社会や経済を不安定にすることなく、どう地球の限界と折り合いをつけ、真に幸せな社会を築いていくか」「社会の真の進歩や幸せを何によって測るのか」に取り組む活動を10年続けてきました。

1つめの問いへの答えは地域にしかない!と考えるようになり、いろいろな地域や自治体の地方創生や地域経済の再活性化などのお手伝いをするようになりました。「地域創生部」の活動です。
https://www.es-inc.jp/regional_revitalization/index.html

2つめの問いへの答えを模索する中で、「アセスメント・見える化ユニット」を立ち上げ、「幸福度の見える化」、「地域経済の見える化」、「ソーシャル・インパクトの見える化などの手法開発と実践を進めています。
https://www.es-inc.jp/visualize/

こうした活動のおかげで、と言いたいところですが、実際には、悪化の一途をたどる地球環境と社会問題の顕在化によって、とくに、気候変動の脅威によって、世界中の政府も企業も、多くの人々も、「これまでどおりは通用しない」という認識を共有するようになり、新たなあり方を模索するようになりました。

ようやく動き出した! あとは時間との戦いに負けずに進んでいけるかどうか……と思っています。

私の師であるデニス・メドウズらが「成長の限界」で、「20年前に取り組みを始めていれば、ずっとラクに、最悪の状況を回避できていたはずなのに」ということをシミュレーションを通じて示したように、また、ナオミ・クラインさんが「地球が燃えている」の中で述べているように、「私たちは「段階的変化」のチャンスを完全に浪費してしまった」、「今日では、20年にわたるはったりと嘘の果てに、残り少ない2度炭素予算が要求するのは、政治的および経済的な覇権に対し、革命的な変化を起こすこと」、「漸進的なアプローチでは、いま必要とされている規模の変革は絶対にできない」、「過激で急激で圧倒的な行動が必要」という状況に陥っているからです。


幸せ研の活動の1つは、毎月の読書会です。幸せ・経済・社会に関わる大事な書籍を読みながら考える会で、106回を数えています。

1月にはナオミ・クラインさんの『地球が燃えている』を取り上げました。(音声受講もできます)
https://www.ishes.org/news/2021/inws_id002874.html

また、今月は斉藤幸平さんの『人新世の「資本論」』を取り上げ、多くの参加者とディスカションしながら考えを深めました。(こちらも音声受講ができます)
https://www.ishes.org/news/2021/inws_id002881.html

この2冊は「気候変動にどう対処すべきか」という共通のテーマを取り上げており、2冊読んでみることで視野も考えも広がります。