枝廣淳子さんから


                  Enviro-News from Junko Edahiro


                      No. 2735 (2020.02.19)

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2011年1月に設立した幸せ経済社会研究所の活動は10年目に入りました。
https://www.ishes.org/

毎年の振り返りから、2019年と2018年の分をお届けします。1年のサステナビリティ関連の振り返りでもあります。
https://www.ishes.org/aboutus/history.html


~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~


【幸せ経済社会研究所の歩みと、創出してきたもの】

●2019年●

2019年は記録的な高温や台風等の強大化、豪雨、大洪水、大規模な山火事、深刻化する干ばつなど自然災害や異常気象の増加、顕在化するプラスチックゴミ問題等に対し、グレタ・トゥンベリさんの発言や世界の若者による気候ストライキなどが注目され、民間・一般の人の意識の高まりが表面化した年になった。

しかし、日本の持続活動の取り組みについては、化石賞を受賞するなど、積極的というにはまだ遠い。中でも、世界ではすでに1000を超える自治体が気候非常事態宣言を出しているが、日本では、ようやくその動きが始まったところだ。

そこで、日本でも多くの自治体が気候非常事態宣言を出し、自治体としてできることを進めつつ、住民や他の自治体にも行動を呼びかける動きが拡がることを願って、「気候非常事態宣言」を出した自治体を紹介していくページをイーズに作った。石炭火力発電、原子力を含むエネルギー問題、SDGsの取り組み、プラスチック問題も引き続き注目していきたい。

明るい話題は地域づくりの取り組みだ。2018年3月に『地元経済を創りなおす――分析・診断・対策』という岩波新書を出してから、地元経済(地域経済)をテーマにした講演のご依頼をいただく機会が増えた。特にお手伝いさせていただいている3町(北海道下川町、島根県海士町熊本県南小国町)では今年、イーズの「見える化ユニットチーム」を中心に、役場調達プロジェクト、産業連関表の開発、買い物と暮らし調査等を行うことができた。

その3町の皆さんからこれまでの取り組みやその成果を、3月と12月に開催した「地域経済循環フォーラム」で発表いただいたところ、両フォーラムを通じて300名近い方に参加いただき、その学びを皆さんと共有することができた。引き続き、「大切だけれども、測定しにくいこと」を測るお手伝いを通じて、経済、社会、環境面におけるその地域独自の将来ビジョンを、地域の皆さんと一緒に考えていきたい。

<主な活動>
2月21~22日
NEFコンサルティング社(英国)と共同開発した新しいコース、「変化の理論(TOC)~なぜ、どのように変化が起こるのか」をチェンジ・エージェント社とともに開催

2月26日
熊本県南小国町で一年間かけてお手伝いしてきた共有ビジョンと産業連関表の発表会が開催される

3月
海外英国出張、NEF(New Economic Foundation)コンサルティングの「社会的インパクトを測る」トレーニングコースに参加。マンチェスター等視察。

3月15日
世界で初めて青少年による一斉気候ストライキが行われ、125ヶ国・2083ヶ所で、150万人以上が参加

3月16日
地元経済の創りなおしの取り組みをお手伝いさせていただいている、3町(北海道下川町、島根県海士町熊本県南小国町に集まっていただき「地域経済循環フォーラム」を開催

3月19日~8月15日
新津研究員が企業や自治体の環境・CSRサステナブル戦略に役立つ情報を提供するWEBサイト「おしえて!アミタさん」で、地域内での経済循環を高めるしくみについて連載コラムを執筆(全6回)

5月1日   元号が平成から令和に改元される

5月1日   英国議会が気候非常事態宣言を行う

6月6日   出版『プラスチック汚染とは何か』(岩波ブックレット

6月10日   定例読書会90回を迎える

6月28日
小野雄也研究員が静岡県で「地元経済を創りなおすー地域経済の見える化ー」について講演・ワークショップをおこなう

8月29日
リーダーシップ開発セミナー「東洋思想から、リーダーとしての自分を振り返る「論語」編」(チェンジ・エージェント社主催)で枝廣が講師を務める

9月20日
ニューヨークで開催される「国連気候アクションサミット(UN Climate Action Summit 2019)」を前に、世界各地で若者たちによる気候変動への緊急対策を求めてのデモ行進(Global Climate Strike)がおこなわれる

9月25日
長崎県壱岐市が日本の自治体として初めて気候非常事態宣言を出す

10月1日   株式会社下川シーズ設立

10月2~3日
アル・ゴア氏が創設した「クライメートリアリティ」東京トレーニングが日本で初開催され、800名が参加

10月12日
イーズのウェブサイトに日本の気候非常事態宣言自治体マップを公

11月6日
北海道・下川町によるトークイベントが東京で開催され、枝廣が登壇

11月22日
定例読書会第95回 『子どもの貧困』著者の渡辺由美子さんをゲストにお招きして開催

12月5~7日
環境の総合展示会「エコプロ2019」に、イーズがブースを出展。地方創生の取り組みを紹介する

12月6日
「地域経済循環フォーラム~実践編~」をエコプロ会場で開催。熊本県南小国町島根県海士町北海道下川町の方々に登壇いただき、共有ビジョンの策定や地域産業連関表作成、買い物調査を経てどのような動きが出てきているのか等を話していただいた。
12月6日エコプロ展特設ステージ「SDGs×地方創生」の第2部「地域を変える、企業の力」に、イーズのアセスメント・見える化ユニットの小野研究員と新津研究員が登壇。イーズの取り組みについて発表した。


●2018年●

2018年は、1年前にはほとんど誰も予想していなかったほど、「海洋プラスチック問題」が大きく注目されるようになった年だった。また、自然災害の多い年でもあり、気候変動の影響を多くの人が身をもって感じた年だった。

そのような状況において、政府や地域や企業など、さまざまなかたちでお手伝いをさせていただいている側から見ると、2018年は、「日本が遅まきながら、ゆっくりながら、ようやく正しい方向に進み始めた年」でもあったと考えている。

その一つの例が、エネルギー基本計画骨子案に「未来は予測できないもの」という言葉がはいったことだ。パリ協定を踏まえ、2050年までの日本の長期的なエネルギー政策を考える議論を行ってきた経産大臣主催「エネルギー情勢懇談会」では、地政学地球温暖化、企業、技術・イノベーションの4点のテーマで専門家14名招聘し、インプットをいただき、それを元に委員・事務局と議論を進めた。

これまでの政策は「未来は予測できるもの、決め打ちの未来」としてやってきたが、今回の情勢懇で招いたほとんどの有識者からは、2050年のエネルギーの予測はできないとの発言があり、議論の結果、骨子案に「未来は不確実である、という前提」が提言に入った。また、地域のエネルギー、分散化を国としても応援していく仕組みが打ち出された。これは大きな一歩だと思う。

また、企業においては、SDGsESG投資へ社内理解が大きく進んだ。企業の横並びの体制から、J-CLP、RE100などをはじめとする企業連合で対策を前に進める動きがでてきている。また、SDGsをリスクではなくチャンスだという思いでうごく企業も増えてきた。

2月に出版した『地元経済を創りなおす――分析・診断・対策 』では、地域の経済をしっかりと地域で回せるようになる未来に役立ちそうな、枠組みやツール、事例などを紹介することができた。

お手伝いをさせてもらっている島根県海士町、北海道・下川町、熊本県南小国町をはじめ、各地の自治体や地域での「まちのビジョンづくり」や「地域経済を活性化するための取り組み」も、徐々にその成果があらわれ始めている。

地元経済の現状を「見える化」し、地域経済の漏れ穴をふさぐ取り組みを重ねていくことで、地元の経済を創りなおしていくことができる。引き続き、「未来は地域にしかない」と信じて、地域の皆さんと一緒に取り組みを進めていきたいと思う。

<主な活動>

1月29日   熊本県阿蘇郡南小国町で講演、意見交換会

2月21日
出版『地元経済を創りなおす――分析・診断・対策 』(岩波新書

3月
海外英国出張、NEF(New Economic Foundation)コンサルティングの「社会的インパクトを測る」トレーニングコースに参加。マンチェスター等視察。

4月10日
エネ庁が2050年視点での長期的なエネルギー政策の方向性を検討するために設けた「エネルギー情勢懇談会」が終了(全9回)。大臣への提言のとりまとめをおこなう。

4月21日
アースディ東京2018で谷崎テトラさんと「Local Shift is World Shift ~地球の明日を思う、地球の未来を考える」というテーマで対談

5月24日
熊本県南小国町で第2回共有ビジョン策定委員会開催

6月   イーズの「アセスメント・見える化業務支援」スタート

6月14日
海外香港理工大学で開催された国際学会(International Society for Quality-of-LifeStudies)に参加。海士町の取り組みについて発表。

6月   熊本県南小国町で第3回共有ビジョン策定委員会開催

7月26日
オープンセミナースウェーデン在住、国際NGOナチュラル・ステップ・ジャパンの代表を務めた高見幸子氏をゲストに招いて「スウェーデンから学ぶ!持続可能な国づくり・まちづくり・人づくり」開催

7月30日
新津研究員がきのえね会にて、『変化する社会と人々の「幸せ」:高度経済成長期から現在まで』と題し講演

8月   枝廣が大学院大学至善館の教授に就任

8月1日   定例読書会80回を迎える

8月3日
パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会」の第1回会合が開催される

8月8日
出版『アニマルウェルフェアとは何か―倫理的消費と食の安全』(岩波ブックレット

8月23日   幸せ研ニュースレター(英語版)配信スタート

9月2日   「東洋と西洋の知の融合研究所」のウェブサイトオープン

9月6日   北海道胆振東部地震、大規模停電が発生

10月22日
レジリエンスの研究における業績と貢献が高く評価され、オーストラリアのブライアン・ウォーカー教授がブループラネット賞旭硝子財団主催)を受賞

11月17日
出版『人生のピークを90代にもっていく! ―折り返し地点から「死ぬまでハッピーな人生」をつくる ―』(大和書房)

12月14日
見える化ユニットの小野雄也研究員が「『地元経済を創りなおす』ー地域内の循環経済を考える」と題し、姫路市のシンポジウムで講演

12月22日出版『ぶれない軸をつくる東洋思想の力』(光文社新書