疋田智さんから

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       「ノーランズ」を知らない意味の889号

■私より年下はほぼ「ノーランズ知らん」

 ノーランズの話。前号の続きだがね。
 私しゃ驚いたんだが、70年代から80年年代にかけての大ヒット曲『恋のハッピーデート』『ダンシング・シスター』『セクシー・ミュージック』などで有名な、あの4人組(時期によって5人組)のイギリス娘たち・ノーランズ。本気で大人気、スーパースターだった。よね?
 ……。
 ところが、ヘンだ。
「人気スゴかった、自分のまわりにもノーランズマニアがいっぱいいた」「ポスター貼ってました」「キャンディポップ」というジャンルを1グループで確立したからね」などというポジティブ反応は確かにあったわけですよ(ありがとうございます)。
 ところが、どうでしょう。そういう方はみな私と同じく50歳超えのオヤジばかり。
 一方で、カミさんをはじめとして、私より年下の人など、ほぼ「知らん」一択なのだ。
 なぜか。
 その理由がおぼろげに分かってきた。

ノーランズはどこで売れていた?

 私の友人がこっそり(笑)教えてくれた。英語版のWikipedia
 そこに書いてあったのが“They were particularly successful in Japan.”(彼女たちは日本で特に成功した)という文言だ。

【英語版Wikipediaの「The Nolans」】
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Nolans

 読んでて分かってくるのは、ノーランズ、どうも「日本で特に成功」どころじゃなく「日本でだけ成功」という方が正確らしいのだ。だってビルボードにはランキングどころか登場すらしていないというんだから。
 なに、ノーランズって日本だけでしか売れてなかったの? うわ、ショック。今で言う「BIJ」つまり、Big In Japanだったんだよ、彼女たちは。
 そうか、だから彼女たちは日本によく来てみたり、はたまたロンドン中継とか、よくやってたんだね(;_;)。

【ビッグ・イン・ジャパン】
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%B0%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3

 そうか、もし彼女たちが世界的に売れてたんだったら、きっと今でもどこかでリバイバル、「懐かしの…」なんかでも繰り返し取りあげられて、若い人も知ることになってた、ということだったんだろうなぁ。

ノーランズだけじゃない

 ときどきいるよね、なぜか日本だけで特別に大ヒットする外国人タレントって。
 一番有名なところではザ・ベンチャーズだろうか。

While their popularity in the United States waned in the 1970s, the group remains especially revered in Japan, where they tour regularly to this day.(ベンチャーズの人気はアメリカでは1970年代に終息していきましたが、彼らは日本においては特に尊敬され続け、定期的なツアーを今も行っています)

【英語版Wikipediaの「The Ventures」】
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Ventures

 BIJ数あれど、ノーランズの時代は特にそうだったんじゃないだろうかなぁ。たとえば同時代のアラベスクなんてのも典型的なBIJだった。今と違ってネットみたいに一般人が直で世界にアクセスする方法がなかったから、時代の雰囲気は、いわばプロモーターの言うがまま。海外への憧れも今よりはるかに強かった。
「これ世界的に流行ってるんですぜ!!!」と言われたら、そのまま誰もが「ふーん」と頷いてたんだ。

【HELLO MR.MONKEY / Arabesque(聴いてみたら誰もがみんな覚えてる…はず)
https://www.youtube.com/watch?v=40tPjhGcLJQ

 なんか「猪木VSアリ」なんていうアンビリーバボーな企画を思い出すよ。
 あれだって、Big match only in Japanだったと思う。
 だって日本人以外、本気で誰も知らないもん。もし知っていたとしたら、それは「クレイジーな試み」として知ってるだけ(;_;)。

■でもクイーンがいる!

 でも、クイーンがいる。
 彼らだって最初はBIJだったんだ!!! ……と言ってみる。いや、『ミュージック・ライフ』の元編集長・東郷かおる子さんによると、そういう時期があったみたい。

【なぜ『クイーン』は日本を愛したのか?~『ミュージック・ライフ』元編集長が語るストーリー】
https://news.1242.com/article/162872

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【ヒキタ解釈のオススメ本(たまに非オススメあり)】

のらくろ総攻撃』田河水泡著 大日本雄辯會講談社

 ゆえあって『のらくろ』シリーズを古本で買って読んでます。
 なるほど、当時の気分がよく分かると同時に、日本が近隣諸国をどのように考えていたかについて、いろいろ考えさせてくれる。
 特にこの巻は、のらくろ中尉(猛犬連隊所属)が自らの小隊を率いて、豚軍相手に「痛快なる大活躍をする」という巻なわけですが、豚軍の首領・豚勝(とんかつ)将軍はひたすらマヌケで怠惰で卑劣。
 豚軍兵士たちは「犬ころたち強いあるな。こうなったら逃げるが勝ちあるよ」みたいなしゃべり方をする。
 もちろん豚は中国人であり、犬は日本人なわけだ。
 昭和12年12月刊行で、すでに日中戦争は始まっている時分であります。
 のらくろの軍隊が豚軍の陣地を攻略していくと、その土地にいた豚たちは「悪政ばかりだった豚勝将軍を追い払ってくれて、猛犬連隊ありがとう」と感謝したりする。悪いのは豚勝将軍だけで、豚市民は善良という構図。現代でもどっかの国でおなじみの、例のアリガチなノー天気構図だ。
 豚市民が猛犬連隊の前で「猛犬勝った、猛犬勝った、豚負けたア」と欣喜雀躍する。。
 あー、なるほど、こうして戦前の猛犬たちは、ブタさんや、ヤギさんや、ヒツジさんの心証を害してきたんだなぁと思ってしまう。
 ついでにいうと、朝鮮人を模したとみられるヤギ、満州人を模したとみられるヒツジは、マンガの中ではひたすら従順。なるほど前者はすでに大日本帝国の臣民だったし、後者は傀儡国家だったからね。(特に前者においては)徹底的に事大主義的なわけだ。
 もちろん当時のことだから、猛犬連隊は「親切で正義の軍」なのですよ。でもどうだろう、この話はまた後で書くことになると思うけど、「一方的な正義」というものは、やはり破滅への道に通じてるね。我々はそのことをたぶん75年前の敗戦で学んだ。

 75年前のその話とは別に、ひとりよがりの正義が暴走すると、どれだけロクでもないことになるか、近い将来、我々は目の当たりにするような気がするな。
 いや、今回に関しては、我々の国のことではなく(笑)。

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「平成バブル物語 ~60年代生まれのための東京バブストーリー~」(田崎仁志著)
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津波から自転車で逃げられるか」疋田智著・NPO自転車活用推進研究会編集
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「自転車“道交法”BOOK」小林成基(NPO自活研)と共著 こやまけいこ:イラスト 木世(えい)出版社
「だって、自転車しかないじゃない」朝日文庫
「おやこで自転車 はじめてブック」疋田智監修 ぼちぼち自転車くらぶ著 子どもの未来社
「明るい自転車質問室」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「自転車 困った時の即効お助けマニュアル」成美堂出版
自転車ツーキニストの作法」SoftBank新書
「ものぐさ自転車の悦楽」マガジンハウス
「自転車会議!」(片山右京勝間和代今中大介谷垣禎一と共著)PHP研究所
「自転車の安全鉄則」朝日新書
「今すぐ使えるクロスバイク図解マニュアル」大泉書店
ロードバイクで歴史旅」木世(えい)出版社
「自転車をめぐる冒険」「同・誘惑」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「それでも自転車に乗り続ける7つの理由」朝日新聞出版
「自転車生活の愉しみ」朝日新聞出版
「天下を獲り損ねた男たち(続・日本史の旅は自転車に限る!)」木世(えい)出版社
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