白鳥一彦さんのメールから

―― 忍び寄る5Gの危機!

NTTドコモAGCが開発したガラスアンテナ

5Gの電波は直進性が強く、ビルなど遮るものがあると、その場所には電波が届きにくい特性がある。
そのため4Gの基地局よりはるかに多くの基地局が必要になる。
基地局を増やすためともいえる技術の一つがAGC旭硝子株式会社より社名変更)が開発したガラス
アンテナである。

AGC旭硝子株式会社より社名変更)が開発したガラスアンテナ
⇒ http://command-ex.com/L3629/g4531/33421

これは既存のLTEネットワークのための基地局で2019年より導入されていくようだ。
AGCのホームページによると「景観を損なわない」とあるが、これは目立たないためどこにアンテナ
があるか分からないことも意味する。
これがそこら中に貼られていくと、今以上に電波だらけになり、逃れることができなくなる。
電磁波過敏症の人、いやそうでない人にとっても大変憂慮すべき事態である。

■5G実用化を急ぐ理由はどこに?

近年、スマートフォンタブレットといった携帯端末の普及には目を見張るものがある。
サービス提供エリアの拡大だけでなく、通信速度も向上している。
現在普及している4G LTEにおいては、最大100Mbpsの通信速度で高品質の動画が楽しめる。
タブレットスマホの画面サイズを考えれば、十分過ぎるレベルである。

だが、通信トラフィックは過去5年間で10倍、2020年には現在の1,000倍になることが予想されている。
また、1964年の東京オリンピックの際にテレビが普及したように、今回は高画質の4K/8K映像による
配信が期待されている。そのためには大容量データの超高速伝送も求められる。
そんな背景もあり、国内大手通信事業者は10Gbpsレベルの通信速度を実現する、第5世代移動通信シス
テム「5G」のサービス提供を2020年に開始できるよう目指している。

さて5Gにおいては、通信速度を高速化させるために、これまでとは異なり、より高い周波数帯のマイ
クロ波が利用される。
だが、電波の直進性が高まることから、基地局の影では電波が届きにくくなり、多数の小型基地局
(マイクロセル)を数十メートル単位で設置する必要があるといわれている(支柱にアンテナと電源
装置を設置する)。
そのため、設置コストがかさみ、携帯端末の消費電力も増えると考えられている。

だが、冷静に考えれば、5G普及が急がれる理由は不明確である。
そもそも5Gはスマートフォンタブレットといった移動体通信ターゲットにしている。
小さな端末画面においては、4K映像ならではの高画質はほとんど見極められないといわれている。
50インチクラスのテレビで見ればその違いを認識できようが、日本では全国に光ファイバー網が普及
しつつある。
当面、大画面では光ファイバー、小さな端末画面では4G LTEでもよいのではなかろうか。

一番 懸念されるのは、やはり電磁波に関してである。
すでに5Gが導入されているところでは影響が出始めている。

■オランダで野鳥300羽が死亡

オランダ・ハーグでは5Gの実験中に鳥が突然死亡する“事件”があった。死んだ鳥の総数297羽のうち、
150羽以上が突然死をしたという。
それも木からバタバタと落ちて死んでしまったのだ。
この際使用されたのは、7.40GHzとうい周波数の電磁波で、鳥が死んだ場所から約400m離れたところに
アンテナが設置されていたことがわかった。
死んだ鳥の調査は進められているが、何らかの中毒になった可能性も否定できないが鳥たちは病気にも
見えないし、衰弱もしていなかったという。調査を進めたところ、内出血もないし、毒物の痕跡もない
とのことだ。

ハーグのHuijgensパークの大きな謎。先週そこでは150羽近いムクドリが発見されました。
(動画:1分43秒)
⇒ http://command-ex.com/L3629/g4531/43421

アメリカ・カリフォルニア州のサクラメント市民に衝撃走る

ここでは、消防署の外に5Gのアンテナが設置されると、消防士たちが頭痛や不眠だけでなく、記憶障害
意識障害を訴えるようになったという。
5月29日、アメリカの3大テレビネットワークのひとつCBSサクラメント局は、5Gサービスの提供が健康
リスクを生じさせる懸念があると報道した。
サクラメント市は、(早ければこの夏の終わり頃にも)5Gサービスを提供する最初の都市となるべく、
試験運用を行ってきたが、アンテナから発せられる非電離放射線が人体に悪影響をもたらす可能性がある
という。

FCC連邦通信委員会)は、携帯端末に信号を伝送するアンテナ設置に際して、暴露限度を設けているも
のの、これまで携帯電波の影響力に対する評価は一致していなかった。
アメリカ国立がん研究所(NCI)によると、少数の研究においては、携帯電話の使用と脳腫瘍リスクとの
間には統計的な関連性を示唆する証拠がいくつか示されているが、他の多くの研究においては関連性が
示されていないとしている。
そして今回、FCCが「安全」と定めた数値の根拠が疑われる事態が発生した。

サクラメントの消防士たちは、消防署の外に5Gアンテナ設備が建てられると、頭痛や不眠だけでなく、
記憶障害と意識障害を訴えるようになったのだ。
これが5G設備の影響であるとの確信に至ったのは、近くに5G設備のない別の署に勤務地が替わった際
だった。消防士たちの症状はすっかり治まったのである。

さらに注目すべきことは、問題の消防署において計測された非電離放射線レベルは、FCCが「安全」と
みなす上限のわずかに1000分の1から500分の1の値だったことである。
屈強な消防士がそのレベルで体調を崩すとすれば、FCCが安全と定めた数値の上限レベルにおいて、
人々は本当に安心した生活を送ることができるのだろうか。
カリフォルニアの法律では、消防署の近くにアンテナの設置を強制しているが、消防士らは自分たちの
職場(消防署)を例外とするよう申し立てている。

■事業者寄りの行政

すでに触れたように、5Gサービスの提供には、小型の基地局アンテナ設備)を数多く設置せねばならない。
もし5Gアンテナからヒトに有害なレベルの電磁波(非電離放射線)が発せられることがあれば、その影響は
多くの人々に及ぶ恐れがある。

だが、移動体通信や無線通信の国際的な業界団体であるCTIAのスポークスマンは次のように語っている。

「携帯電話利用者の安全はCTIAや無線産業にとって重要です。
 私たちは、アンテナと健康への影響に対しては、専門家によるガイダンスに従っています。
 過去数十年にわたって行われた科学的な研究に従って、FCCアメリカ食品医薬品局FDA)、世界保健機関
(WHO)、アメリカ国立がん研究所(NCI)や、他のたくさんの米国および国際的な機関や健康の専門家たちは、
 アンテナや携帯電話が発する無線エネルギーを原因としたヒトへの健康リスクで知られているものはないの
 が科学的事実だと語っています。
 その証拠には、1980年代半ばに携帯電話が導入されて以後、アメリカ国内の脳腫瘍発生率は減少していると
 いう連邦政府による公式の脳腫瘍統計の分析も含まれています。」

5Gサービスを提供する大手電気通信事業者ベライゾンと手を組んだサクラメント市もまったく気にしていな
いようで、次のような声明を発表した。

サクラメント市はリーダーそしてイノベーターであり続け、5Gを国内で最初に商業的に実施・活用すること
 になるでしょう。
 これは、これまではお金のかかる光ファイバーによってのみ可能であったギガビット速度を住民に体験でき
 るようにするイノベーションです。
 5Gのようなテクノロジーは人々の日々の生活に革命をもたらすことでしょう。
 市は、経済的な活力を駆り立て、情報格差を減らし、多様なコミュニティーに貢献し、市の使命を果たす
 技術を遂行するために重要な役割を担い、発展プロセスの合理化に積極的に取り組み、ベライゾンのよう
 なイノベーターたちに効果的・効率的に道を開きます。
 現在、市は6カ所の5Gサイトを稼働させています。市は無線機器を規制することはありません。」

■消費者負担さらに重く

ベライゾンに限らず、大手電話会社のAT&Tも5Gを導入する予定であり、その技術に満足していると語っている。
それもそのはず。事業者にとってはその先につなげることのほうが重要である。
カリフォルニア州で5G導入法案「SB 649」が可決されれば、通信事業者には相場以下で助成金が支給され、
利幅30~40%で5800億ドル以上を稼がせることになると見込まれている。

総合コンサルタント会社のアクセンチュアの試算では、5Gネットワークの構築に通信事業者は、最初の7年間で
2750億ドルの投資が必要だとしており、利用者の負担も過去最高となることが見込まれている。

つまり、事業者は簡単に資金を得られる一方、市は財政を圧迫させ、消費者も割高な出費を強いられる可能性が
ある。

アメリカでは、光ファイバーの普及が進む日本の状況とは異なり、インターネットの利用にケーブル回線
が利用される傾向にある。そのため、大容量データを超高速伝送可能な回線を整備する必要性は常に課題となっ
ていた。

広大な国土を有するアメリカにおいて、光ファイバー網の整備にも莫大な費用がかかる。
そんな事情に付け入って、近年、5Gネットワークの構築が急浮上してきたといえるのかもしれない

難しい選択を迫られるアメリカだが、カリフォルニア州内で、215の都市が法案SB 649に反対している。
サンタローザを含むいくつかの市では、健康への懸念が処理される間、5Gの導入計画を保留するとしている。
また、東部メリーランド州モンゴメリー郡でも多くの人々が議会で5Gの導入に反対を表明するに至っている。

このように、アメリカ、特にカリフォルニア州では5G導入をめぐって大きく揺れ動いており、遅ればせながら
光ファイバーの整備を望む声も高まっているのが現実である。

だが、いったい日本で5G導入を急ぐ人々は、そんな騒動を把握しているのだろうか。

ベライゾンサクラメント市においてミリメートル波を用いている
日本でも同様の周波数帯が利用される予定であるが、周波数はいくらか異なればヒトへの影響度も変化する
可能性がないわけではない。
周波数を慎重に選ぶことで懸念が払しょくされる可能性もあれば、わずかな周波数の違い程度ではまったく
改善されない可能性もあるだろう。
サクラメントの消防士の事例を生かし、その点は十分に検証・改善される必要がある。

また、カリフォルニア州同様に、日本でも5Gアンテナの設置に莫大な費用を要すると予想される。

 その費用はどの程度消費者の利用料に反映されるのか?
 そして、そもそもこの時期に投資する意義があるのか?

ニーズがあるのかどうか疑わしい日本においては、これらの点について明確に説明される必要があるだろう。

そして、筆者にはもうひとつ気掛かりなことがある。
それは、

日本の技術力が東京オリンピックに間に合わせて5G導入を実現させた。」

という成功ストーリーを事業者らがイメージしている可能性である
もしそんなことがあれば、問題は健康リスクに対する認識だけではなく、もっと根深いところにあるという
ことになるだろう。

 引用:biz-journal
 文=水守啓/サイエンスライター