枝廣淳子さんのメールから


                       Enviro-News from Junko Edahiro


                           No. 2641 (2018.07.31)

 ************************************************************************

16年前の2002年の夏、このメールニュースの754号 (2002.08.28)にこのように書
きました。


~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~

[No.68]で、2000年1月22日に、ワールドウォッチ研究所で開催された会合に参
加したときに考えたことを書きました。

~~~~~~~~~~~~~

いまの日本がカンペキからほど遠いのは事実ですし、あちこちで問題を抱えてい
るのも事実ですが、ここ数年の産官学民の取り組みや考え方がいま大きなうねり
となって、ある部分合流しつつ盛り上がってきているように私には思えて(楽観
的すぎるでしょうか?)、日本が世界をリードしていく任を負っているのではな
いかとすら思えるのです。

他の分野と同じく、環境でも日本は「欧米に学ぼう」という志向が強く、それは
それで正しいのですが、そろそろ日本からもっと発信していく、やっていること、
考えていることを伝えて、刺激にしてもらう、学んでもらう時期が来ているのか
もしれないな、と。

別に高い所から「教えてやる」必要はありませんが、あまりに日本についての情
報が欠けていることを、ふたたび痛感して帰ってきました。

NGOや市民のレベルで、気楽に「日本ではこんな感じなのよー」「いまエコファ
ンドが(ポケモン以外に ^^;) 流行っているのよー」なんて情報がもうちょっと
行き来すれば、欧米でも役立ててくれる人はきっとたくさんいるように思います。

これまで英語教育は「必要に迫られれば誰だってやるようになる、できるように
なるのだから」と思っていましたが、必要に迫られるのは「情報を取る」時だか
ら、「情報を出す」ことを考えると、日本の英語教育もやっぱりもうちょっとし
っかりしてもらう仕組みにしなくちゃいけないな、と考えを改めました。

嬉しいことに、日本でも最近は、政府でも企業でも各種団体でも、英語の情報を
用意することが増えています。それをもっと有効に活用してもらうためには、そ
ういう情報を(もしくは情報の存在を)教えてあげる仕組みを作ればいいんじゃ
ない、と思いました。

・・・ということで(もうおわかりの方もいらっしゃるかな ^^;)、
[Enviro-Info from Japan] を立ち上げようかな、と帰りの機中、思いました。

基本的に英語になっている日本発の情報を、関心のある英語の読める方々にお配
りする、という、「縦のものを横にする」だけのサービスを考えています。
自分で書き始めたら、今後こそ本当に通訳を廃業しなければならない(^^;)

~~~~~~~~~~~~

このときは、廃業の憂き目にはあうことはなく(?)、でも、「そういうの、必要
なんだよなぁ~」とずっと思い続けていました。

そして、1年後。2001年の1月。舞台はふたたび、ワールドウォッチ研究所の会
合。この年次会合で、「日本の取り組みについて発表したいので5分ちょうだい」
と時間をもらったのでした。話させてもらった内容は、[No. 379] にあります。

5分を過ぎてしまいましたが(^^;)、思ったような発表ができ、嬉しく思いました。
休憩時間に、何人もの参加者が「よかったよ」「日本でそんなにいろいろと進ん
でいるとは知らなかった」など声をかけてくれました。

「僕もMLを持っています。お互いに紹介し合いませんか?」といってくれた男
性の顔を見て、何だか見覚えがあるなぁ、と思ったら、『奪われし未来』を書か
れたピーター・マイヤース氏でした(通訳をさせてもらったことがあります)。


・・・という、2年半越しの思いがやっと実りました。ここしばらく、身も心も
注いできた(?)新しい活動がやっと立ち上がり、昨日、日本記者クラブで、設立
発表の記者会見を行いました。

日本の環境情報を英語で世界に発信するための非営利コミュニケーション・プラッ
トフォーム、Japan for Sustainability です。

少なくとも「日本が進んでいるとは知らなかった」なんて
もういわせないゾ!(^^;)

~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~

そうして、16年間、本当に多くのボランティアの方々、個人サポーター、そして、
法人会員のみなさんに支えられて、日本からの情報発信を続けてきました。

今日発行のJFSニュースレターに私の書いた記事をお届けします


~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


JFSを代表してお礼のひと言

16年前の2002年、みなさんはどこで何をされていたでしょうか?

2002年、どんどんと悪化する地球環境問題を何とかしたい、日本の取り組みや考
え方、技術を発信することで世界に役立ちたい、日本の取り組みをさらにプッシュ
したいという大きな志から、JFSが誕生しました。

せっかくよい取り組みや技術があるのに、言葉の壁のせいで、世界に伝わってい
ないのはもったいないと思ったのです。「がんばっている日本を世界はまだ知ら
ない!」が私たちのキャッチフレーズでした。

以来、80社もの企業・団体に法人会員として資金的な支援をいただき、延べ約
900人のボランティアの方々の力を借りて、この16年間に5,054本の記事(うち、
ニュースレター記事560本)を、191カ国の11,000人を超える読者の方々に発信し
てきました。

これがJFSからの最後のニュースレターとなります。

JFSの16年間の活動をさまざまな形で支えてくださったみなさまに心からの感謝
をお伝えしたいと思います。

7月末での活動休止のお知らせに、世界のあちこちからも「残念です」「これま
でありがとう!」という声が届いています。私たちの発信する情報をしっかりと
受けとめ、役立ててくれた方々が確実にいることの重みと感謝の気持ちを改め
かみしめています。

16年間を振り返ると、あっという間だったなあと思います。

この間、温暖化をはじめとする地球環境問題は悪化の一途をたどっており、海洋
プラスチック汚染などの新たな問題(問題自体はJFS設立当初からすでに存在し
ていましたので、「新たな注目」と言うべきですね)が出てきています。他方、
再生可能エネルギーは頼もしく急増しており、石炭火力発電やガソリン車からの
脱却も世界の大きな動向となってきました。

かつては、環境問題は、「環境分野の研究者や行政担当者、環境NGOが社会の少
数派としてがんばっている」分野でしたが、今では、あらゆる業種の企業、投資
家、学校、若者たちが取り組むものになってきました。

同時に、狭義の「環境」問題から、社会面や経済面も含めた持続可能性(サステ
ナビリティ)、CSR(企業の社会的責任)、SDGs国連持続可能な開発目標)へ
と、取り組み範囲も広がってきました。環境問題は「環境」だけに取り組んでい
ても解決できないことが明らかになってきたからです。

「がんばっている日本を世界に知ってもらうことで、世界をプッシュしよう!」
という私たちの志にも関わらず(もしくは、そのおかげで?)、今では途上国を
含め、世界の国々の持続可能性への取り組みはどんどん進んでおり、日本が置い
ていかれている残念な分野も少なくありません。

私たちは「がんばっている世界を日本はまだ知らない!」というスローガンで、
日本の取り組みをプッシュすることにも力を入れなくてはならないと思っていま
す。

同時に、まだまだ「世界の中での課題先進国」「東洋と西洋の間に位置する国」
としての日本の果たせる・果たすべき役割があると信じています。

急速な人口減少・高齢化の中で、どのように「持続可能で幸せな社会」をつくっ
ていくのか?

現状、不均衡な都市と地方の位置づけや役割分担・連携をどのように考え、進め
ていくのか? 

地球の扶養力を大きく超えているにも関わらず、いまだに成長を求めつづけてい
る経済のあり方をどのように考えていけばよいのか? 

本当の幸せとは何か、そのためには何があればよいのか? 

多くの人が近代西洋文明の行き詰まりを指摘する中、東洋の知恵をどのように世
界に伝え、ともに新しい価値観やパラダイムを形成していけばよいのか?

JFSが活動を休止しても、持続可能で幸せな社会をつくるための私たちの活動は
休むことなく続けていきます。私、枝廣が所長を務める幸せ経済社会研究所では、
このような面での日本の取り組みや東洋思想の知恵などを、少しずつですが、世
界に向けて発信していきます。8月より、月次のニュースレターを発行する予定
ですので、ご関心のある方は、こちらより登録してください。(英語のみ)
https://www.ishes.org/en/newsletter/index.html


最後に、先日、JFSの活動を支えてきてくれたボランティア、個人サポーターの
方々との「感謝の会」を開催しました。40人ほど集まってくれた中に、森林保
などの環境保護を志す大学2年生の学生さんがいました。

16年間のJFSの活動を振り返る中で、子ども向けの情報発信ウェブサイトの活動
も行っていた、と話したところ、その学生さんが「小学校の頃に、このサイトを
見ていました!それもあって環境への関心を深め、今の勉強分野につながったの
です」と言ってくれたのです。

また、JFSでのボランティア活動がきっかけとなって、地元でトランジション
ウン運動や農業を始めたのです、と言ってくれる方もいて、うれしく思いました。

ウェブでの情報発信は果たして届いているのかも見えず手応えが得にくいのです
が、私たちの活動が、こうして関心ある次世代や地域での取り組みを生み出すこ
とにも少しでも寄与できたのだとしたら、これ以上うれしいことはありません。

これからもあちこちでお世話になることと思います。ご一緒させていただける機
会があることを楽しみにしております。

これまでのすべてに、本当にありがとうございました。

そして、これからもどうぞよろしくお願いいたします。


枝廣淳子


~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~


JFSの情報発信活動は今日をもって休止となりますが、これまでの膨大な記事デー
タベースは、内外の研究者等の要望も多く、少なくとも3年間はこのままアクセ
スできる状態にしておきます。

https://www.japanfs.org/ (英語)
https://www.japanfs.org/ja/ (日本語)

新たな情報の追加はありませんが、お役に立つことがあればお使いください。


16年間を振り返ると本当に感無量です。

支えてきてくれた歴代の事務局メンバー、ボランティアさん、個人サポーター、
法人会員のみなさん、そして世界中でJFSの情報を読み、活用してきてくれた方々
に、心から感謝しています。ありがとうございました。


なお、この「Enviro-News」はこれからも続けますので、ひきつづき、どうぞよ
ろしくお願いします。





****************************************************************************
「幸せ経済社会研究所」~幸せと経済と社会との関係を見つめ直す
http://www.ishes.org/

私の森.jp」~森と暮らしと思いをつなぐ http://watashinomori.jp/

商用での印刷物・ウェブ上での無断複製・転載はご遠慮ください(ご相談下さい)。
お知り合いやMLへのメールでの転送は歓迎です。