枝廣淳子さんのいま

[enviro-news 2622] 最後のエネルギー情勢懇と私自身の学び~「市民を経済政策に巻き込もう!」 RSAの「市民経済評議会」 (2018.04.10)

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2018年4月10日 10:09
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                       Enviro-News from Junko Edahiro


                           No. 2622 (2018.04.10)

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今日は、エネルギー情勢懇談会の最終回となります。これまでの8回の会合の総
括としての提言のとりまとめを行います。

第9回エネルギー情勢懇談会
4月10日(火) 14時30分~17時00分
審議の模様は、U-stream(http://www.ustream.tv/channel/7nA3QtVrn3d
でインターネット中継を行う予定。開催時間になりましたら上記のURLを御参照
ください。

これまでの資料や議事録等はこちらにあります。
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/#ene_situation

このあとは、今回打ち出す2050年に向けてのエネルギー政策の大きな方向性を、
もう1つのエネルギーの委員会である「総合資源エネルギー調査会 基本政策分
科会」でのエネルギー基本計画の議論に反映していく、という形になります。

去年の8月の第1回から、9回の会合に、自分なりに一生懸命準備して参加してき
ました。本当に勉強になり楽しかったので、終了が寂しいです。

情勢懇は終わっても、「エダヒロのエネルギー情勢懇レポ!」のサイトは活動を
続ける予定です。データや動向などをアップしていきたいと思っていますので、
ひきつづきご活用いただければうれしいです。
https://www.es-inc.jp/energysituation/

私が今回の情勢懇に参加しながらいちばん考えたのは、「どうやったらエネルギー
について、政府の担当者や業界団体、専門家だけではなく、一般の市民と話し合
いながら、政策を作っていくことができるのだろうか?」ということでした。

今の日本ではそうなっていないのはご存じのとおりです。今回の体験を通して、
「何がそれを阻んでいるのか」について、いくつかわかってきたことがあります。

今後、その「阻害要因」を減らす、または回避するためのやり方をいろいろと模
索していきたいと考えていますが、最大の阻害要因の1つは、私たちが一人残ら
す持っている「メンタルモデル」です。メンタルモデルとは、「それが真実であ
ると心から信じている思い込み」です。

私たちはこれまでの経験などから、さまざまなものに対して、「そういうものだ」
というイメージを持っています。それはイメージなのですが、本人は「それが真
実だ」と固く信じています。信じているという意識もないほど、本人にとっては
「真実」なのです。

そういうメンタルモデルから、何かを見聞したときに、「どうせエネ庁は」「ど
うせNGOは」「どうせ経団連は」といった結論・発言になります。自分のメンタ
ルモデルに合致しない情報は無意識のうちに排除されます。お互いがそうやって、
メンタルモデルからの結論と発言を繰り返している限り、本当の意味での対話も
議論もできませんよね。

自分のメンタルモデルに気づくこと。「これまではそう信じてきたけど本当にそ
うなのかな?」と自分で自分のメンタルモデルを点検してみること。必要があれ
ば、メンタルモデルをゆるめたり変えたりしていくこと。

これが個人の成長にも組織の成長にも必須です、ということを、システム思考や
学習する組織の研修で、繰り返し言ってきました。気づき方やゆるめ方について
レクチャーしてきました。

この8ヶ月の間、情勢懇に参加し、自分の意見を準備する過程の中で、自分自身
のさまざまな思い込みに気づかされました。事実を調べる大事さが身に沁みまし
た。ありがたい学習の機会をもらえたなあと思っています。

今回の学びや気づきを、ぜひ今後に活かしていきたいと思います。

さて、「どうやったらエネルギーについて、政府の担当者や業界団体、専門家だ
けではなく、一般の市民と話し合いながら、政策を作っていくことができるのだ
ろうか?」という問題意識から、先月英国出張時に、RSAという団体の取り組み
を取材してきました。

RSAの取り組みはエネルギー政策ではなく、経済政策ですが、経済政策もエネル
ギーと同じように、一般の市民からは遠くて、政府や専門家に任せているきらい
があります。その経済政策に、どのように市民を巻き込み、市民も経済政策に影
響を与えられるようにしようとしたのか、「市民経済協議会」について、幸せ経
済社会研究所のサイトに取材記事がアップされました。


~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~


「市民を経済政策に巻き込もう!」 RSAの「市民経済評議会」
https://www.ishes.org/cases/2018/cas_id002409.html


英国王立芸術・製造・商業振興協会(RSAの市民経済評議会は、市民を経済政
策に巻き込むためのプロジェクトです。このプロジェクトでは、市民は、専門家
との質の高い討論を行いながら経済について学び、最終的に経済に関する自分達
の意見を「憲章」にまとめ表明しました。2年間にわたるこのプロジェクトは先
日終了し、2018年3月に最終報告書「経済の公共文化を構築する(Building a
Public Culture of Economics)」が発表されています。

プロジェクトの中心は、市民が専門家の話を聞いた上で議論する「市民経済評議
会」です。その他にも、地方を巡回してもっとも「取り残された」コミュニティ
やネットワークに働きかけるイベントや、クラウド・ソーシング、ステークホル
ダー・エンゲージメントなどが行われました。ここでは、市民経済評議会につい
て、そのプログラムの内容をご紹介します。

●市民経済評議会

市民経済評議会は、マンチェスターとロンドンの2都市で開催されました。参加
者としては、マンチェスター近郊とロンドン近郊に暮らす、さまざまなバックグ
ラウンドを持つ人々が選ばれました。そして同じメンバーが、5ヶ月間、5日間
にわたり議論を重ねました。

プログラムの最初の2日間は、「社会・経済・市場」、「機関(銀行など)」と
いいったテーマに基づき、市民が専門家の話を聞いた上で、討論を行いました。
この2日間は「経済について学ぶ」ことに重点が置かれたプログラムです。

3日目の午前中は、食料・農業、健康、交通の3つの分野の専門家を招き、財政
支援や法令がどのような影響を与えるのかについての説明を聞きました。午後は、
「雇用や経済成長」と「気候変動への対処への必要性」との間の対立に、技術革
新がどのような変化をもたらすのかに焦点をしぼり、議論を行いました。3日目
のプログラムは、自らの考えを「議論」することが重視されています。

4日目と5日目は、自分たちの考えをまとめることが求められました。4日目に
は参加者は、「市民経済憲章」の草案を考えました。最終日の5日目は、マンチェ
スターとロンドンの合同開催で、それぞれが作成した「市民経済憲章」の草稿を
持ちより、ひとつの「市民経済憲章」にまとめました。

完成した憲章では、「公平性」「社会的に公正な社会」「社会貢献のための技術
革新」「持続可能性(経済、環境、社会)」「権力と意思決定の取り戻し」など
が謳われています。

評議会の参加者に行われたアンケート調査では、「同じ地域に暮らす人や専門家
と経済について議論することは、投票者としての自信に、非常に大きな影響を与
えた」と回答した人が、ロンドンでは38%、マンチェスターでは27%、同じ質問に
対して「ある程度影響を与えた」と回答した人が、ロンドンでは40%、マンチェ
スターでは60%でした。合せると、ロンドンでも、マンチェスターでも、80%近く
の人が、議論をすることによって投票者としての自信をつけたと回答しています。

このプロジェクトに中心的に関わったRSAのKayshani Gibbonさんにお話を伺った
ところ、影響を受けたのは市民だけではなく、プロジェクトに参加した専門家も、
市民からの影響を受けたとのことでした。

例えば、プロジェクトに専門家として参加していたある銀行のトップは、最後の
セレモニーで市民からの提案を受け容れたそうです! 市民と専門家が対話する
このプロジェクトは、市民だけではなく、専門家にも影響を与える大きな可能性
をもったプロジェクトです。

このプロジェクトについて詳しくはこちら(英語)
https://www.thersa.org/action-and-research/rsa-projects/economy-enterprise-manufacturing-folder/citizens-economic-council


~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~


内外の取り組みや知見を学びながら、私のライフテーマの1つでもある「どうやっ
たら、政府の担当者や業界団体、専門家だけではなく、一般の市民と話し合いな
がら、政策を作っていくことができるのだろうか?」を模索し続けたいと思って
います。

2050年に向けてのエネルギーに関する提言、今日の情勢懇でとりまとめが終わっ
たら、また内容をお伝えしますね! どうぞお楽しみに。






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「幸せ経済社会研究所」~幸せと経済と社会との関係を見つめ直す
http://www.ishes.org/