枝廣淳子さんの、懇談会での質問と、世界のトップの回答

日本政府の開いている、エネルギー懇談会の、枝廣淳子さんの質問と、英米のトップ、エネルギー地政学の専門家の回答。枝廣淳子さんのメールから、フェイスブックへの引用、してもいいかどうか、よくわからないまま、してみます。しかし、むつかしい問題に取り組む人々、いるんですね。それにしても、どうなるのかなー。石油・石炭・原子力以外の生きのび方。
以下引用。最初の3行の「私」が、枝廣淳子さん。ラストに枝廣淳子さんの研究所の名前があります。
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お二方からのプレゼンテーションの後、委員からの質問に答える質疑応答となり
ました。私は、以下のように質問させてもらいました。
 
 
~~~~~~~~~~~ここから抜粋引用~~~~~~~~~~~~
 
 
▼枝廣委員
3つ質問をさせてください。
 
1つは、EV、電気自動車についてです。非常に広がっていますが、運輸を変える
だけではなく、蓄電池として役割が大きいだろうというお話がありました。その
EVが広がって、蓄電池としての役割を果たすことで、再生可能エネルギーをどれ
ぐらい加速できるとお考えでしょうか?
 
日本では、再エネは、特にソーラーや風力は間欠性という問題があって、なかな
か広がらないと考えられています。そこに蓄電池が入ることで、もっと再エネが
広がると思っているのですが、そのEVの普及による再エネの加速の可能性につい
て、これが1つ目の質問です。
 
もう一つは、2050年を考えている私たちとして、お二人が繰り返しおっしゃ っ
ているdiscontinuity(不連続)とか、disruption(途絶、混乱)とか、
uncertainty(不確実性)などを織り込んだらいいのかなと考えていました。
「2050年を予測するのはimpossible(不可能)だ」というお話もあったので、
2050年まで旅していく上で、どのようなコンパスやツールキットを私たちは持っ
ていればいいのか? アドバイスをいただければと思います。
 
3つ目は、私はエネルギーの専門家ではないのでナイーブな考え方かもしれませ
んが、外で何が起こるかわからない状況です。お話ししてくださったように、中
東やアメリカなどいろいろなところで、外で何が起こるかわからないとしたら、
何が起こってもできるだけ大丈夫なように日本のエネルギーをつくっておくのが
一番賢明ではないかと考えます。
 
そうしたときに、日本はご案内のように輸入に大きく頼っているので、できるだ
け輸入ではない形にしていく必要がある。おそらく産業用のエネルギーは、大量
で安価で安定した電力が必要なので、ある程度、大規模に発電もしくはエネルギー
供給する必要があると思うのですが、例えば家庭や地域であれば、できるだけ自
分たちのエネルギーを地元にある再生可能エネルギーでつくり、もしくは地域内
で融通して、エネルギーの自立もしくは自給率向上を図っていくことが大事だと
考えています。このような考え方についてどのようにお考えでしょうか。
 
 
▼ポール・スティーブンス特別上席フェロー
 
非常に興味深いご質問をいただきました。EVの蓄電池の話ですが、たくさん大き
なEVのグリッドがあると、それだけでたくさんの貯蔵ができます。蓄電ですね。
特にメーター技術がどんどん変化しています。
 
EVのイメージは、まず自宅のガレージに入れたらプラグインして、電力を貯蔵す
る。でも、ヨーロッ パ等を見ていても、平均走行距離は20~30kmです。という
ことは、まだまだ未使用の蓄電能力がいっぱいあるということですから、ガレー
ジに行ってプラグインして、今度はグリッドに使わない電力を入れる。すると売
電できるわけです。道路を走りながら再充電できる技術もあるので、余った電力
は売電できて、収入が入るというシステムになる。そうすると間欠性の問題はか
なり解決できるのではないかと思います。
 
不連続性の問題の話がありました。不足で予測できないという話もあります。1
つ私が心配しているのはーー長年の心配なのですがーー、例えばLNGで大きなア
クシデントが起こったらどうなるのか、ということです。大型の事故が起こった
らどうするのだ、ということです。いつも考えています。専門家は「そんなこと
あり得ないから」と必ず言うのですが。
 
1974年以前でしたら、「大きなガスの爆発なんてあり得ない」と言っていた。で
も1974年、米国のフレキシブールという小さな村で、ガス爆発で村がなくなって
しまったぐらいの大事故があったのです。ということで、解決策を考えなくては
ならない。システムのロバストネス(頑強性)を確保しなくてはいけない、そう
いう事故が起こらないように、です。
 
それから、最後におっしゃった点ですが、私もずっと持論として言い続けていた
ことです。エネルギーの自給自足の発想です。エネルギーの自給自足というのは、
輸入を減らせばできるという通説がありますが、これは単なる通説であって、根
拠がないんです。国産のエネルギーがいいといっても、脆弱性は輸入モノと同じ
ぐらい高い。
 
だから、多様性、分散化するということです。多角化するということです。エネ
ルギーの多様化です。もちろん、省エネも入ります。これが第5番目のエネルギー
で、ここに一番大きな可能性があると思います。
 
 
▼アダム・シミンスキーエネルギー地政学議長
 
ご質問ありがとうございます。おっしゃるとおりです。ダイバーシティが重要で
す、多様性を確保するということです。そして省エネ。消費についても考え、効
率アップですね。そうすると、トータルでリスクにさらされる割合が減るでしょ
う。
 
エネルギー貯蔵について興味深いのは、最大のエネルギー貯蔵システムは揚水発
電だということです。 夜間に、丘の上まで水を引っ張り上げて、昼間にその水
を落として発電し、電力を日中使うという仕組みですね。 これも、ある程度、
貯蔵・蓄電池として捉えることができると思います。
 
蓄電池がより広範に普及するためには、現在のリチウムイオン電池以外も考えな
くてはならないと思います。例えば、固体リチウム電池。こちらのほうが安全性
も高いですし、安価になるのではないかと思います。 地政学的な要因も入って
きます。コバルトはどこから来るのでしょうか? リチウムはどこから購入する
のでしょうか? 誰がバッテリーをつくるのでしょうか? ここにも地政学的な
含みがあります。
 
さらに、モノは陳腐化していきます。ずっと未来永劫、今の状態が続くと思いが
ちだけれども、現実はそうではないのですよね。10年前、15年前に、携帯にカメ
ラがつくなんて誰が考えたでしょうか。でも、みんな携帯カメラで撮っています
よね。動画だってすぐにネットでアップしたり、友達に送ることもできます。私
も、娘と孫がシカゴに住んでいます、インターネッ トでつながっていますから、
いつでも連絡がとれる。これは新しいことですよね。
 
イノベーションは大好きです。私は全然心配していません。政策をつくる側とし
て何ができるのかというと、環境づくりだと思うのです。イノベーションがちゃ
んと進むように、そして伸びるように、環境を設定することではないでしょうか。
 
忘れてならないのは、多様性の重要性です。 需給両面で多様性を確保しなくて
はいけないということです。それから最後の点、このレジリエンスがますます重
要になってくると感じています。強靱性ということで。ハリケーンのことを考え
てください。アメリカでヒューストンやフロリダ、カリブ海も襲ったハリケーン
によって、電力系統が大きな被害を受けた。ヒューストンの製油所自体は全くダ
メージを受けなかったのですが、従業員が仕事場に行けなかった。洪水や冠水の
せいです。
 
ですからエネルギー系統のレジリンスを、洪水や風害、突風が吹いたときにも耐
え得るようにしておかなくてはいけない。分散電源という話では、先ほども話に
出ましたが、特にインドにチャンスがある。即、分散電源に移行できるのではな
いかと思います。小型で、村単位で発電するのです。大きな送電網をつくる代わ
りに。これによって、重要な前向きの変化が出ると思います。
 
 
~~~~~~~~~~~~ここまで~~~~~~~~~~~~~
 
 
質問の時にも触れたのですが、2050年まで33年あります。33年前はどんな状況だっ
たのでしょう?少し調べてみました。
 
33年前あたりの新商品やヒット商品は「世界で初めてのCDプレイヤー」「電子手
帳」「ワードプロセッサー」。これらが33年前の新しい技術だったのです。そう
思うと、33年後、2050年の世の中や技術は、とてもではないですが今、想定でき
ないでしょう。
 
その想定できないものを考えに入れながら、2050年に向けてどう考えていくこと
ができるのか。それが2つめの質問だったのですが、世界の第一人者からも、
レジリエンスを大事にせよ」という指針以外には、その旅路に有用なコンパス
やツールキットは出てきませんでした。この意味するところをしっかりと認識し
たいと思います。
 
 
 
 
 
 
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「幸せ経済社会研究所」~幸せと経済と社会との関係を見つめ直す