気候ネットワークから

「市民のチカラで、気候変動を止める。」
            気候ネットワークより月2回
        地球温暖化問題を巡る最新情報をお届けします。

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■ 政府・国会・NGOの動向
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●9月20日国連サミットを前に全世界でグローバル気候マーチ開催へ
 気候変動の危機に深刻な懸念を持つ世界中の子どもたち・若者・市民・NGO
の有志が、「グローバル気候マーチ(Global Climate Strike)」を一斉に
実施する。日本国内でもすでに少なくとも11都市での実施が決まっており、
現在も開催予定地は増加中。まだ開催予定のない地域でも、
子どもたちの未来を守るために世界中で行動する人々と連帯して、気候マーチ
を企画することが呼びかけられている。
 これは、今年9月23日に米ニューヨークで開催される国連気候行動サミッ
に向けて、国内各地の子ども・若者・市民・NGOの有志が、気候危機の解決を
訴えるために声をあげ、気候マーチや関連イベントを行うもの。ノーベル平和
賞にノミネートされたスウェーデンの高校生、グレタ・トゥーンベリさんによ
る、気候変動対策の強化を求める学校ストライキが世界中に広がり、各国政府
自治体の政策に影響を与えていることがその背景にある。

・プレスリリース「9月20日深刻化する気候変動の危機を訴え、
日本国内11都市で若者主導の気候マーチを開催」
<https://www.kikonet.org/info/press-release/2019-08-27/gcs-japan>

・グローバル気候マーチ ウェブサイト
<https://ja.globalclimatestrike.net/>

バイオマス持続可能性ワーキンググループ 報告書骨子案の提示
 22日、バイオマス持続可能性ワーキンググループが開催され、環境や社会・
労働面等の持続可能性を確認する具体的内容について、RSPO認証(2013:「持
続可能なパーム油生産のための原則と基準2013)をベースとし、2018年版、RS
B(持続可能なバイオ燃料生産に関する原則と指標)等と比較した。持続可能
性基準の施行時期については一定の猶予措置を設けることで一致した。また、
同ワーキンググループの報告書骨子(案)が提示され、今後パプリックコメン
トを経て、事業計画策定ガイドラインなどを改正し、2020年4月の制度施行を
目指すこととした。
<https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/bi
omass_sus_wg/004.html
>

●ポストFITの電力システム改革小委を立ち上げ
 8月26日、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(第30回)が開催され、
国の今後の資源エネルギー安全保障戦略を踏まえつつ、再エネの主力電源化と
持続可能な電力システムの構築を今後どのように進めていくべきかなど、様々
な提言がなされた。
 太陽光発電や一部の風力発電の競争力が高まりつつある中、競争力のある再
エネ電源の市場への統合は当然の成り行きとしつつも、持続可能な電力システ
ムを構築するためには、ポストFIT時代においても電力投資の予見性を確保す
る仕組みが重要とされた。
 今回の分科会を踏まえ、再エネ主力電源化と電力システムの再構築に向けた
制度改革全体をFIT制度の見直しを含めて議論するための小委が、基本政策分
科会の下に設置される予定。
<https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommi
ttee/030
>

●電力小売全面自由化状況など電力システムをめぐる現状整理
 8月29日、第20回
電力・ガス基本政策小委員会が開催され、電力・ガス小売全面自由化の進捗状
況や適正な市場メカニズムと需給確保の在り方、高度化法に基づく非化石エネ
ルギー源の利用目標達成計画について等が話し合われた。
 電力自由化では、新電力(但し大手電力の子会社を含む)のシェアは2019年
5月時点で14.2%であり、供給区域別では、北海道(20.4%)、東京(18.5%)
が他地域より高いことが報告された。高度化法については、2018年度の報告対
象事業者の非化石電源比率加重平均は23%と前年の18%から増加した。今後目
標達成に向けては多くの事業者から「非化石証書の購入」が挙げられ、FIT非
化石証書の取引環境の整備等に取り組んでいくことが必要としている。年内に
は2020年度の具体的な目標が決定される予定。
<https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/020.
html
>

火力電源にかかる入札運用指針と特定小売供給約款料金審査要領が見直しへ
 9月2日、火力電源入札専門会合(第6回)が開催され、火力電源にかかる入
札運用指針と特定小売供給約款料金審査要領の改正案が審議された。みなし小
売り電気事業者(旧一般電気事業者の小売部門)による自社入札を含む1社応
札の際の落札価格の適正性が懸念されていたものの、上限価格の考え方の審議
を募集終了後ではなく募集要項案の審議の際に行うプロセスに変更されたこと
から、特段の異論は出なかった。
 今回審議された改正案は、電力・ガス取引監視等委員会へ報告される。
<https://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc_tender/006_haifu.html>

●環境配慮契約法 据切り方式における排出係数しきい値案の提示
 8月28日、環境配慮契約法基本方針検討会
電力専門委員会が開催され、2030年度までの電力部門における排出係数目標(
0.37kg-CO2/kWh程度)の達成に向けて、排出係数の据切り基準等が検討された。
前回会合での「具体的なしきい値案に基づいて議論すべき」との委員の声を受
けて、事務局が提示した2020年度の案は、USC方式石炭火力相当排出係数0.810
kg-CO2
/kWhとなった。この数値は長期エネルギー需給見通し関連資料(平成27年7月
)を基にしたもので、今後段階的に強化していくとしているものの、本基準を
超える事業者は3社と少ない上、現在建設が進められている新規USCの大半は0.
760kg-CO2/kWh程度であり、環境配慮契約法の主旨からはほど遠い基準案とな
っている。また、オプション加点項目についての変更案として、削除項目とし
グリーン電力証書の譲渡予定数が、追加項目として調整後排出係数ゼロメニ
ューの提供が示された。
<https://www.env.go.jp/council/35hairyo-keiyaku/r1_3.html>

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■ 国際動向
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●国連気候行動サミット、9月23日にニューヨークで開催
 国連事務総長アントニオ・グテーレス氏の呼びかけで9月23日に国連気候行
動サミット(UN Climate Action Summit)が開催される。
同サミットには多数の各国政府の首脳級が参加し、気候変動対策の新たな
コミットメントを発表する見通し。現時点で日本の安倍総理はこのサミットへ
参加するかどうかの予定について明らかにしていない。また、当初、
国連のウェブサイト上で、同サミットにおける緩和(温室効果ガス
排出削減の引き上げ)のグループの共同議長は日本とチリと掲載されていたが、
その後、日本政府によって取り下げられ、現在はチリのみが掲載されている。
 先月、国連事務総長は、「我々は劇的な気候の非常事態(climate
emergency)に直面している」と危機感をあらわにし、「各国が2050年カーボ
ン・ニュートラルをめざすことを約束できるように、2020年までに見直される
国別約束(NDC)にある排出削減努力を大幅に引き上げられるように」「人々
ではなく炭素に課税する必要があるし、化石燃料への補助金を全廃する必要が
あるし、2020年以降新たに石炭火力発電所が建設されることのないようにしな
ければならない」とのコメントを述べている。
<https://www.un.org/en/climatechange/un-climate-summit-2019.shtml>

2日、CAN-Japanは、このサミットに向けて、共同声明「気候危機を乗り越える
ため、国連気候サミットで約束を 日本政府はパリ協定の1.5℃目標に沿って、
2030年目標を引き上げるべき」を発表している。
<https://www.can-japan.org/press-release-ja/2607>

●G7諸国の脱石炭政策を評価する「成績表」2019年版、発表
 英国のシンクタンクE3Gによる、先進7か国(G7)の石炭に関する政策を評価
する「石炭スコアカード2019年版ー石炭への融資は終焉に向かう」が、8月26
日に発表された。今回の発表は、2015年10月の初版から毎年改訂を重ねた第5
版にあたる。カナダ、イギリス、ドイツで石炭政策および市場動向の改善が見
られ、昨年と比較すると、政府政策および市場の評価の項目で順位変動が見ら
れた。日本は相変わらずの最下位(7位)を維持。民間企業の動きは鈍かった
ものの、わずかずつながらも前向きな進展が見られるようになっている。
<https://sekitan.jp/info/coalfinance_20190826_e3g/>

●『日本の二重基準-海外石炭火力発電事業が引き起こす深刻な健康被害
 8月20日、国際環境NGOグリーンピースジャパンとグリーンピース・東南ア
ジアが、報告書『日本の二重基準ーー海外石炭火力発電事業が引き起こす深刻
健康被害』を発表した。本報告書は、日本政府と政府系公的金融機関の国際
協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)、日本貿易保険(NEXI)による海外
の石炭火力発電所への支援をめぐる二重基準(Double
Standard)についてまとめたもの。日本の公的資金による海外の石炭火力発電
所では、日本国内の発電所よりもはるかに多くの有害な大気汚染物質が排出
れていることが明らかになっている。
<https://www.greenpeace.org/japan/nature/story/2019/08/20/9932/>