白鳥一彦さんのメールから

━━━━━━━━━━━━□ 8月 二考察 □━━━━━━━━━━━━

―― まもなく訪れる5Gの時代、その電波は本当に「人体に影響ない」のか?

    記述/スーザン・クロフォード

『The Uninhabitable Earth(居住できない地球)』という書籍の著者、デイヴィッド・ウォレスは、

「温暖化が激しく進行し、気候変動が農業に影響し、驚くべきペースで海面が上昇する。
 自然災害は信じられないほど恒常化し、息が詰まるような汚染が進行するのだ。」

と言う。
そして解決策として、

機械学習と未来の地球で人類が生き残るために、必要な能力とを組み合わせるだけでいい。」

要するに私たちは、宇宙船で暮らし、ラボに置かれた3Dプリンターで出力された肉を食べ、すべては、
イーロン・マスク ※a1 が解決してくれる、というわけである。

 ※a1 イーロン・マスク

  イーロン・マスクは、南アフリカ共和国アメリカの実業家、投資家、エンジニア。

  2017年に彼が創立したNeuralink(ニューラリンク)は、BCI(脳コントロールインターフェイス
  を開発した。
  BCI(脳コントロールインターフェイス)は、人間によるコンピュータのコントロールを改善し、
  AIがもたらす危険性を大きく減少させるのに役立つという。
  このテクノロジーが人類の存続を脅かす危機を避けることに関係するというのはこういうわけだ。
  マスク氏によれば、人類は今後も否応なくAIの発達にさらされ、次第にコンピュータの処理能力
  が人間を圧倒するようになる。
  高度なAIを搭載したロボットが、世界の支配者になるというドゥームズデー・シナリオ(最後の
  審判の日)を避けるためには、人間が脳を直接コンピュータに接続することでコントロール能力
  を格段に高めるようにする他ないというのがマスク氏の考えだ。

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■光インフラなき5Gの課題
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これと同じ考え方が、別の大きな話題にも当てはまる。
第5世代移動通信(5G)が「既存の通信モデルを時代遅れにする」という主張に、誰もが熱狂的になっ
ていることだ。
5Gは、わたしたちが抱えるあらゆる問題を解決すると謳われている。
だが、過去にも指摘したことがあるのだが、これは極めて非現実的であるように思える。

というのも、すべての人に5Gを提供するには、へき地も含むあらゆる場所に光ファイバーケーブルの
敷設が必要になるからだ。
しかも、政府の適切な介入がないと、5Gのインフラを地域ごとに独占する企業が出現するリスクを抱
えることになる。
それにわたし自身も、5Gに対して以前とは異なる視点をもつようになった。
それは、5Gに対応した通信機器が極めて高周波数の強力な電波を発することから、人間の健康に悪影
響を及ぼすのではないか、ということだ。
なぜなら、5Gによる通信は、ありとあらゆる場所で行われることになる。
しかも電波が届きにくいこともあり、基地局は従来よりもわたしたちの身近な場所に設置されること
になるからだ。

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■5Gの危険性を主張する科学者たちの存在
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これまでずっと、ワイヤレス通信による健康への影響を訴える人たちには我慢ならなかった。
というのも、ついついティンホイル・ハット(アルミ箔を重ねてつくるヘッドギアの一種で、電磁波
から脳を保護できると考えて身に着ける人がいる)を思い浮かべてしまったからである。

ところが、あることを知った。
1部の科学者たちは5Gが広く普及する前に人体への影響をきちんと研究すべきだと主張しているのだ。
例えば気候変動なら、それを否定するレトリックの背後には、現状維持を図ろうとする企業の存在が
つきものである。
同じようにワイヤレス通信業界は、やたらと5Gの安全性を強調しようとするし未解決の課題には既存
の高周波の安全基準で対処しようといった主張を続けている。現実はその程度なのだ。
いまのところ欧州委員会(EC)は、市場のプレイヤーに高度なワイヤレス通信サービスを展開させる
ことに主眼を置き、5Gによる人体への影響を立ち止まって考える機会を拒んでいる。
そして、

「5Gネットワークは前世代のものより小型の基地局を使用し、電磁波にさらされる量は少ないと期待
 されている」

「3Gや4Gの導入では環境における暴露量は増加しなかった」

と、主張しているのだ。
連邦通信委員会FCC)の対応もほぼ同じである。

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■現行基準は適切なのか?
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だが、米連邦通信委員会FCCが人々の健康への影響を計測するために用いているのが、何十年も前
に設定された古い基準で、間違ったものを計測しているとしたらどうだろうか?
広く一般に受け入れられた科学に基づく、より優れた中立的な基準が必要だろう。

電磁放射線の人体への影響を測定する際に用いられるFCCの基準とは、短時間に平均的な暴露量で人体
の組織が加熱されるかどうかを測っている。
職業労働者は、6分間、一般の人の暴露については30分間だ。
この基準は1996年に採用されたが、ドイツに本部を置く国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が30年
前に採用した基準に部分的に基づいている。
しかし、この団体が、通信業界とエネルギー業界の双方に忠実であると指摘する者もいる

2012年、米国の会計検査院(GAO)は、FCCの基準が「高周波エネルギー暴露についての最新研究を反映
していなかった」ことを発見し、FCCに対して暴露量の限界値を再評価して変更を検討するように勧告
した。FCCはこの基準を再検討するプロセスを翌年に立ち上げたものの、その再調査が進んでいる様子は
見られない。

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■分かれる科学的な見解
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同じころ、ワイヤレス通信による電磁波の影響を巡り、科学者の意見は分かれていた。
なかには、この基準を再検討する必要があると主張する科学者もいる。
一方で、人体の細胞は熱以外のメカニズムによって破壊される可能性がある、という科学団体もある。
また別の科学団体は、この基準が計測しているのは平均的な暴露であって、害を及ぼしかねないピーク
値ではないとの見解だ。
特に5Gのデータ伝送によって急速に広範囲に広がる暴露では、短時間に有害な激しい温度上昇が起こり、
皮膚や目に影響が出ることが懸念されている。さらに別の科学団体は、この基準がこうした問題にとり
わけ敏感な人たちの存在を考慮していないと主張した。

米国小児科学会(AAP)は、FCCのワイヤレス指針は妊婦や子どもを適切に保護していないと、13年にFCC
に伝えている。現代における機器の使われ方などを踏まえたうえで、消費者により情報開示した新たな
ルールを作成するよう、FCCに要請したのだ。

環境団体の天然資源保護協議会(NRDC)の環境法律家、シャロン・ブッチーノは次のように説明している。

FCCの基準は、電磁波による危害の一面(つまり、熱)しか取り上げていない。
 現在の基準は、ワイヤレス通信で増大する電磁放射線の暴露が、人の健康に危害を及ぼす別の方法につ
 いて考慮していないだけでなく、すべての生命が依存している自然環境についても考慮していない。

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■価値ある研究と不足する資金
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この問題は確かに解決にはほど遠いもので、依然として多くの議論を呼んでいる。
“部外者”の立場から感じるのは、これまでに提起された課題の研究資金は不足しているが、こうした
研究は継続していく価値があるということだ。

オレゴン州ポートランド市議会は、このほどFCCに規制をアップデートするよう要請することを投票
よって決めた。また連邦上院議員のリチャード・ブルーメンソール(民主党コネチカット州選出)が

米国における5Gと次世代テクノロジーイノヴェイションのレースで勝利を収める。」

と題した2019年2月の公聴会で、5Gの健康への影響について科学的証拠を求めた。
ブルーメンソールは次のように語っている。

「米国民には、健康への影響について知る権利があります。科学的研究の結果が示されたからといって、
早まった判断をしないためです。未解決の問題を研究するという確約も与えられるべきだと思います。」

また、5Gによる健康への影響について業界が出資した研究はないという話を聞かされたところ、こんな
ふうに返している。

「それでは、健康と安全については何の手がかりもない、当てずっぽうだということですね。」

健康に対して、当てずっぽうで進める「5G」。
わたしたちが賢い判断を下していれば、先に進む前に解決していたはずだろう。

 出典:米国プリントマガジン WIRED

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 http://command-ex.com/L3629/g4531/73481