枝廣淳子さんのメールから

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                       Enviro-News from Junko Edahiro


                           No. 2658 (2018.10.23)

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最近、テレビや新聞などでアニマルウェルフェアについての報道を目にするよう
になりましたが、日本企業の取り組みは進んでいるのでしょうか。

2016年度に東京都市大学枝廣研究室(当時)では、アニマルウェルフェアについ
ての調査を行いました。

9割の人が知らない「アニマルウェルフェア」 ~消費者の意識と行動が企業の
動物福祉の取り組みを変える~
https://www.ishes.org/news/2017/inws_id002105.html

今回は、2016年度の調査の際に対象とした48社について、googleのサイト内検索
(「Site:」というコマンドを利用することで、特定のサイト内の情報だけを検
索する方法です)を用いて、「アニマルウェルフェア」という単語が使われてい
るかどうかを調べてみました(「動物福祉」など関連する語での検索は今回は行
いませんでした)。

その結果、1社がアニマルウェルフェア対応の鶏肉を販売しているという情報
掲載していたほか、3社が、会社の取り組みとして「アニマルウェルフェア」と
いう言葉を使用していました。ただし、そのうちの2社は、CSRレポートの中で
一言使われているだけで、具体的な取り組み内容まではわかりませんでした
(URLは下に記載)。

1社だけ、アニマルウェルフェアについてウェブサイトで具体的な情報発信を行っ
ていた組織があります。パルシステム生活協同組合連合会です。

同連合会は2018年6月発行の『SDGsレポート』の中で、2018年の重点プロモーショ
ンとして、アニマルウェルフェアを取り上げ、「家畜のストレスを減らすことで
動物用医薬品の使用が減り、肉質の改善にもつながることが期待されます。パル
システムは家畜本来の姿や生き方を尊重し、持続できる食生産のしくみを構築し
ていきます」という姿勢を示しています。ウェブサイトによると、取引先には、
アニマルウェルフェア認証を取得している農家もあります。

また、パルステム生活協同組合連合会は、2008年の段階で、社会貢献活動レポー
トに、「アニマルウェルフェアとパルシステムの畜産事業の取り組み」という記
事を掲載しています。

このレポートの中では、「2006年度からは、パルシステム独自の『畜産生産指標』
で生産管理の評価の取り組みが始まっています。これは、生産者と組合員、どち
らにも安全を確保する目的で、生産者・組合員・獣医・畜産関係者が一緒に話し
合ってつくりました。アニマルウェルフェアに関する項目も、指標の一つとして
入っています」と、非常に早い段階から、アニマルウェルフェアに注目していた
ことがわかります。

言い換えれば、パルシステムのように、長年にわたり地道な取り組みを行ってい
る企業や団体以外は、まだ日本の企業の取り組みや情報公開は遅れているといえ
そうです。

海外では企業のアニマルウェルフェアの取り組みや情報公開は進んでいます。特
に最近は卵について、「ケージフリー(檻に入れずに飼養すること)」宣言をす
る企業が増えています。

例えば、オーストラリアのマクドナルドは「2017年までにケージフリーにする」
と宣言、米国とカナダのマクドナルドは「今後10年間でケージ卵を廃止する」と
発表しています。サブウェイも、米国、カナダ、メキシコで2025年までにケージ
フリーにすると発表しています。米国では、このほかに、スターバックスがケー
ジ飼育の卵の段階的削減を発表しているほか、ネスレが2020年までに、デニー
が2026年までに、世界最大の小売店であるウォルマートが2025年までに、ケージ
フリーにすると宣言しています。

それに対して、日本では92%の採卵鶏が「バタリーケージ」と呼ばれるB5用紙サ
イズほどの大きさのケージで飼養されています(2015年畜産技術協会調べ)。

企業の「ケージフリー宣言」も、マクドナルドのような、日本にもチェーン店が
たくさんある企業でも、これまでは日本については対象外とされることがほとん
どでした。ただ、最近は日本でも、西洋コンパスグループ、インターコンチネン
タルホテル、ネスレユニリーバがケージフリーを宣言するなど、多国籍企業
中心に取り組みが広がりつつあります。

東京五輪を控えて、選手村での食事に供される畜産物はアニマルウェルフェア対
応しているのか?という課題が出てきそうです。東京五輪が強力なプッシュとなっ
て、日本企業の取り組みが進むのではないかと思っていたのですが……まだその
動きは大きなものとはなっていないようです。ひきつづきウォッチし、報告して
いきたいと考えています。

私が見つけられていない情報や動きもあることと思います。何か情報がありまし
たら、自社の取り組みでの他社のものでも、ぜひお知らせください~!



パルシステム生活協同組合連合会SDGsレポート」
http://www.pal.or.jp/about/pdf/palsystem_sdgs_report.pdf

パルシステム生活協同組合連合会アニマルウェルフェアとパルシステムの畜産事業の取り組み」
http://www.pal.or.jp/csr/report/csr39.html

日本マクドナルド株式会社 CSRレポート
http://www.mcdonalds.co.jp/content/dam/web/mcdonalds/company/csr/images/CSR2016.pdf

明治グループ CSRレポート
https://www.meiji.com/management/sustainability/pdf/17_28.pdf






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「幸せ経済社会研究所」~幸せと経済と社会との関係を見つめ直す
http://www.ishes.org/