枝廣淳子さんのメールから

先月「大停電下の北海道・下川町で考えた「レジリエンスの大事さ」という記
事を書きました。
https://www.es-inc.jp/1dai/2018/1dai_id009689.html

北海道にお住まいの方から、メールをいただきました。停電時のレジリエンス
ついて参考になると思い、快諾をいただいたので、共有させていただきます。


~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~


あのときに書かれたメルマガの感想を少し書きたいと思います。

私の会社はLPガス・灯油の販売店ということでライフラインの一端を担ってい
ます。

災害が発生した時に、お客様からの要望に迅速に対応するため、蓄電池・太陽光
発電・LPガス発電機を装備しています。
まさに先生がお書きになったエネルギーのレジリエンスにかかわる装備です)

平時は深夜電力で蓄電池を満タンにします。開店後は太陽光で発電した電力を最
優先に使い、発電量が足りなければ蓄電池の電力を使います。通常は夕方ころに
蓄電池が空になり、電力会社から電力を購入しはじめます。

今回の場合はというと・・・。

蓄電池は満タンでした。
いつものように数時間程度で停電が復旧するだろうと考えていましたので、蓄電池の
電力を頼りに営業を開始しました。電話・コンピューター・照明・冷蔵庫・洗浄
便座などで、いつも通り電力を消費しました。

お昼前後に停電が長引きそうだという情報が入り、電話・コンピューター以外の消費
を止めました。夕方には蓄電池の電力が底をついたため、LPガス発電機の電力
で電話・コンピューターを維持しました。

この状態を2日目の20:20まで維持したところで停電が終わりました。

停電時間は40時間ほど、発電機の運転時間は30時間ほどでした。

停電の間、太陽光発電はあまり役に立ちませんでした。
停電時は停電時専用コンセントしか利用できないことと、それほど天気が良くな
かったことで、せいぜい携帯の充電にしか使えず、事業を維持するためには頼り
になりませんでした。

それでも社員やご近所の方は喜んでくれましたが・・・。

ころで肝心のガス・灯油のお客様からの緊急連絡はというと、ほとんど入らず肩
透かしでした。停電でお客様の電話が使えないからかもしれないと思い、停電復
旧後の緊急連絡殺到を警戒しましたがそれも無し。

ガス漏れ、灯油漏れなどがほとんど無くて本当に良かったです。
ガスメーターの対震装置がはたらいてガスが止まった方が数件ありました。

お客様のお話では、冷凍食品が停電により解凍してしまうため、より高価な食材から
料理して食べたそうです。我が家でもカツオのタタキを大量に食べました。

札幌は弊社のある北区が震度5強、隣の東区が震度6弱でした。
道路が一部で陥没したり、鉄筋の建物にひびが入るなどの被害が出ました。
札幌の反対側の清田区液状化した地域があったのはニュースでご存知だと思いま
す。

今回問題だと思ったのは携帯電話の基地局の非常用バッテリーが切れたことです。

バッテリーは数時間から24時間持つそうですが、今回は長時間停電のため軒並み電源
が落ち、街中あちこちで携帯が圏外表示となり通じませんでした。

広域で長時間の停電が発生することを想定していなかったようです。もし緊急対
応がたくさん発生したいたら、出動員と連絡がとれず立ち往生したことでしょう。

なお停電は札幌市内では6日夕方から復旧し始め、8日夜までにほぼすべてが復旧した
ようです。停電時間は12時間から65時間ほどと思われます。

それにしても今回は電気に頼りすぎていたことを痛感しました。

これが冬だったら札幌でもたくさんの方が凍死したと思います。

自宅や避難所の暖房機が停電で運転できないことは大きな問題です

先生は非常用にも使える「ソーラーパネル+蓄電池」の導入する必要を訴えてお
られますが、今回の経験から長時間電力を供給し続けることができる発電機が必
要だと思いました。

北海道の冬は暖房を継続することが命をつなぐために最優先。
発電機があれば燃料がある限り発電でき、暖房機等を運転し続けることができま
す。

弊社ではLPガスとガソリンの発電機を各1台保有していますが、今回はガソリ
ンの発電機は運転できませんでした。数年前に使用した時にガソリンを抜き忘れ
たため劣化したことが原因と思われます。

LPガスの発電機も同様の扱いでしたが、使用後に燃料を抜き取る必要がないため、
無事に運転することができました。

また災害発生時にガソリンの入手は非常に困難です。ガソリンスタンドは自家発
電があることろは営業していましたが、数時間も並ぶ上、数量制限をしていまし
た。

避難所に用意するなら維持管理が簡単なLPガス発電機が良いと思いました。

以上、思いつくままに書きました。
ご参考になれば幸いです。


~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~


この時代は、「ハイパーコネクティビティの時代」とも呼ばれています。つなが
りが非常に密になっているため、平時は便利な一方、どこかで何かがあると、つ
ながりを伝って、各所に影響が出てしまいます。そういう時代のレジリエンス
しっかり考えなくては、と思います。

ところで、ブループラネット賞の受賞講演に来日したブライアンと旧交を温め
した。バラトン合宿であったのちも、「レジリエンスとは何か」を書いている間
も、メールではやりとりしていましたが、会うのは久しぶり。食事をしながらレ
ジリエンス談義で盛り上がりました。

レジリエンスとは何か」は、研究者向けでなく、一般の方々向けにレジリエン
スの考え方を伝えたいと書いたんだよ、と話すと、「その本、オーストラリアで
も必要だ! 英語にしてくれないか?」(^^;

ブライアンも「レジリエンス」という言葉を使わずに、その重要性と考え方を伝
えるための本を執筆中とのこと。この時代のレジリエンスそしてその伝え方を
一緒に考えるために合宿しましょう!と盛り上がったのでした!






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「幸せ経済社会研究所」~幸せと経済と社会との関係を見つめ直す
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