白鳥一彦さんのメールから

森下敬一 『食べもの健康法』

●せり

万葉人もせり摘みを楽しみ、うたに詠んでいる。
そして、われわれの先輩たちが、正月七日に無病息災を
願って食べる習慣とした春の七草には、せりは筆頭に上
げられてる。

それはせり特有の香気と味が好まれたからに違いないが、
医学的な見地から見ても、日本人がせりを珍重した理由
は十分に納得できる。
すなわち、せりは、冬から春に向かっての健康推進に対
して、絶大な効果をあらわすからである。

寒い間は、われわれの血液は、どうしても酸毒傾向にな
りやすい。体の新陳代謝は緩慢になるし、運動量も大幅
に減る。その上、体を温めるために動物性食品を多食し
やすい。

そんなこんなで血液中には過剰な栄養物や老廃物が停滞
しがちとなり、血液の粘稠性も高くなる。
これでは春の活動にさしさわりがあるだけでなく、その
まま放置すれば健康失墜につながる。
その事実を経験的に知った昔の人は、野草食をして浄血
をはかったのである。そんな野草の代表がせりなのだ。

せりは、湿地、田んぼ、流れのふちなどの水がたっぷり
あるところに生える。
なぜなら、冬寒期としては、相対的に温かくなっている
水にの保護され、他の野草にさきがけて成長するからだ。

せりにはビタミンA、B1、B2、C、Dおよびカルシ
ウム、リン、鉄などの各種ビタミン、ミネラルが含まれ
ている。これが老廃物の排泄を促し、酸毒化した血液を
健康な弱アルカリ性に回復する。その中でも特に注目し
たいのは、胆汁の流れを円滑にする働きである。


よもぎ

よもぎは、モチグサといわれるように、モチに入れて草
モチをつくることは誰もが知っている。
いかにも春らしい色と香りを楽しむことのほか、来るべ
き飛躍の季節に備えて浄血をはかろうという、われわれ
の先輩たちの生活の知恵なのである。

寒い季節には、体の代謝活動は鈍るから、老廃物も停滞
しがちで、それだけ血液も汚れている。
よもぎはそういった悪い状況を解消してくれる。

実際、よもぎの浄血作用はめざましい。
まず、血液pHを健康な弱アルカリ性にする作用がある。
加えて葉緑素がたっぷり含まれている。
葉緑素は胃腸や肝臓の機能を高めることによって、造血
作用、解毒作用を大いに高める。

その上葉緑素は直接、血液中の毒素と結びついてそれの
中和解毒をはかる。だからよもぎは慢性病全般に有効で、
特に胃腸病、高血圧に卓効をあらわす。

3月3日の節句の菱モチに、もともとは、緑の色づけには
よもぎが用いられた。これで健胃・整腸をはかる。
そして黄色には解毒作用のあるクチナシが、赤には血の
巡りをよくする紅花が用いられて、女の子を健康に賢く
美しく育てるための配慮がなされていたのである。

それに比べると現代は、発ガン性すらある人工着色料を
用いているのだから、なんという変わりようであろう。

よもぎが主に草もちや草団子にされるのは、実に合理的
な利用法だ。よもぎには澱粉質の代謝をスムーズにする
ビタミンB1、B2がたくさん含まれているからだ。
ビタミンB群を十分に補給することは、肥満を防止する
秘訣である。

日本人に不足しがちなカルシウムも多い。
そのため気分のいらだちを鎮めるとともに、組織に炎症
を起こしにくくして、病気にかかりにくい体を作る。
またビタミンA、Cも豊富で、肌を美しく作用も著しい。

よもぎはまた、不思議に体を温める。
体の冷えやすい人、寒さに弱い人、神経質の人はよもぎ
入りの玄米もちや玄米だんごをたびたび食べるとよい。
それと併せてよもぎ風呂に入り、よもぎ茶を愛用すれば、
いっそう望ましい。

よもぎ風呂は、あらかじめ乾燥したよもぎ三つかみ程を
適量の水で30分ほど煎じておいて、その煎じ汁を風呂に
入れ、普通に入浴すればよい。
このよもぎ風呂は、腰痛や痔にも効果的である。

よもぎ茶は、乾燥したよもぎ1日分20gを、3カップの水で、
約30分煎じたものを、3回ぐらいに分けて飲む。
このよもぎ茶は便通をよくする作用もあるので、血行作用
も著しい。そのため、よもぎ茶は高血圧、肝臓病、腎臓病、
ぜんそくなどにも効く。
どくだみ、はぶそうを少し加えればいっそう効果的である。


    (了)